転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

打ち砕かれた野望（二度目）

　姉さんの美人顔が見られなくなり、美味しい料理が食べられなくなるのは辛いけど、まあ母さんも美人で料理上手だし。
　母さんが病気になった時は、私が頑張ってフォローするので、姉さんには遠慮することなく嫁に行ってもらいたい。……そして、今度こそ私は、養鶏場ならぬ、この養コカトリス場の後を継ぐのだ。

　今度こそは、大丈夫。
　元ヤンでも、一応長男。力はあるから、ちゃんと真面目に働ければ私より戦力になった前世兄ちゃんならともかく、病弱な姉さんに、こんな大の男でもきつい養コカトリス場を継がせようとは流石の両親も思うまい。
　今世の両親には間違っても家の為に我慢している良い子ちゃん等と思われないように、前世以上に、図太く逞しいところをオープンにしてきた。
　コカトリスの世話に対する適正も、ばっちりだと、二人もちゃんと分かっているだろう。

　今度こそ、ここの農場の跡取りは私だ!
　私が跡取りになったあかつきには、最終的には収穫から商品の加工・販売も一挙に行う六次産業を目指し、農場の収益を何倍にもしてみせる!
　人生をかけた一大プロジェクトだ!
　
　見ててね、父さん。母さん。ーーあなたたちの老後は、私が必ず左団扇にしてみせるから!

「……そのことだけど、ね。リッカ」

　一人鼻息荒く意気込む私の隣で、姉さんが白い頬をポッとピンク色に染めた。

「父さんも母さんも交えて……貴女に紹介した人がいるの」　　

　……あれ。なんか嫌な予感。



「ーーそうか、そうか!　城で騎士を。道理で立派な体格をされている!」

「しばらくは騎士の仕事をしながら、朝だけ手伝うことになりそうですが、引き継ぎが完了次第、養コカトリス場の仕事に専念したいと思ってます。農場で働くのが、昔からのずっと夢で」

「あらまあ、あらまあ!　うちには男手が、お父さんしかいなかったから、助かるわ。……でも、良いの?　うちみたいな農場に婿に入ったりして。騎士になるくらいだから、立派な家柄なのでしょう?」

「気にしないで下さい。うちは貧乏貴族で、しかも私は三男ですから好きにさせてもらっているんですよ。既に、家族の許可は取っております。……娘さんを幸せにすること。それが、私の一番の望みですから」

　姉さんが連れて来た、父さんより大柄な爽やかマッチョを前に、私は固まっていた。
　……ちょっと待って。現実に、脳が着いて行かない。

「……ねえ。父さん。母さん。この人が手伝ってくれるなら、もうリッカに無理にコカトリスの世話をさせる必要はないわよね?」

　……やめて。姉さん。この展開はデジャヴが過ぎる。

「セレーヌ。勿論だ!　俺だって、本当はリッカにこんな危険な仕事を手伝わせるのは、気が引けてたんだ」

「ごめんね。リッカ。リッカは、私達に気を使わせないよう、いつも明るく振る舞っていてくれたけど、本当は辛かったわよね……。年頃の女の子なのに……」

　何で、そう取るの、父さん。母さん。
　見たままが、真実だよ。
　私は、農場を継ぎたいの。コカトリスの世話も好きなの。

　何故、それが伝わっていないの。