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ラドイベント9
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【ひろいね。……だけど、せかいは、もっとひろいんだよね】
ぽつりと。
零れるように伝わってきた、念話にラドの方を向く。
振り向いた先には、こちらをまっすぐ見つめる感情の分からないルビーのように真っ赤な瞳があった。
【せかいを、ちしきとしては、しってる。どらごんは、そういういきものだから。……でも、「ぼく」は、しらない。せかいを、なにもしらないんだ。あのぼくじょうと、おしろしか】
卵から孵化した時から、一度城を出た以外はずっと牧場の中で過ごしたラド。
そんなラドが、牧場の外の世界を求めるのは当然といえば当然なのかもしれない。
いつも平気そうにしていたから、そんな思いを胸に秘めていたなんて知らなかった。
【ねえ、りっか。……このまま、いっしょにたびにでない? せかいを、みようよ。いっしょに】
そういえば--私も、この国の外の世界を全く知らないのだと、改めて気づかされる。
この国の外の世界だけじゃない。私が知る世界は、実家の養コカトリス場がある町と、この牧場の周辺くらい。
いつもコカトリスの世話をする必要があったから、遠出なんかしたこともない。
思えば、前世の加藤梨花だった頃からそうだった。遠出の記憶は修学旅行くらいだし、それだって高校の頃は当日に父さんの具合が悪くなって、鶏の世話の為に休んだくらいだ。
私の世界は、いつも畜産場とその周辺で。そのことを今まで疑問に思ったことすらなかった。
それ以外の世界があるなんて、考えたこともなかった。
(……いや、そうでもないか)
(考えたことなら……考えざるを得なかったことなら、確かにあった)
(一度目は、前世で兄ちゃんが養鶏場を継ぐと言った時)
(二度目は、今世で姉さんがハミルさんを連れて来た時)
(--私は、『私の世界』を無くして、世界の外に放り出されたんだ)
ぽつりと。
零れるように伝わってきた、念話にラドの方を向く。
振り向いた先には、こちらをまっすぐ見つめる感情の分からないルビーのように真っ赤な瞳があった。
【せかいを、ちしきとしては、しってる。どらごんは、そういういきものだから。……でも、「ぼく」は、しらない。せかいを、なにもしらないんだ。あのぼくじょうと、おしろしか】
卵から孵化した時から、一度城を出た以外はずっと牧場の中で過ごしたラド。
そんなラドが、牧場の外の世界を求めるのは当然といえば当然なのかもしれない。
いつも平気そうにしていたから、そんな思いを胸に秘めていたなんて知らなかった。
【ねえ、りっか。……このまま、いっしょにたびにでない? せかいを、みようよ。いっしょに】
そういえば--私も、この国の外の世界を全く知らないのだと、改めて気づかされる。
この国の外の世界だけじゃない。私が知る世界は、実家の養コカトリス場がある町と、この牧場の周辺くらい。
いつもコカトリスの世話をする必要があったから、遠出なんかしたこともない。
思えば、前世の加藤梨花だった頃からそうだった。遠出の記憶は修学旅行くらいだし、それだって高校の頃は当日に父さんの具合が悪くなって、鶏の世話の為に休んだくらいだ。
私の世界は、いつも畜産場とその周辺で。そのことを今まで疑問に思ったことすらなかった。
それ以外の世界があるなんて、考えたこともなかった。
(……いや、そうでもないか)
(考えたことなら……考えざるを得なかったことなら、確かにあった)
(一度目は、前世で兄ちゃんが養鶏場を継ぐと言った時)
(二度目は、今世で姉さんがハミルさんを連れて来た時)
(--私は、『私の世界』を無くして、世界の外に放り出されたんだ)
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