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ラドイベント14

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 熱い。暑い。あつい。
 ぶわりと汗が噴き出て、口の中が猛烈に乾き、髪の毛の先が焦げる臭いがする。

 --けれども、炎は肉を焼くには至ってない。

 ……ありがとう! パックさん! ありがとう! 不死鳥の羽! おかげで私は、まだ生きてます!!!
 このまま炎が消えなかったら、どれくらい持ちこたえてくれるのか分からないけど!!!

 全身を包む炎越しに、周囲を観察する。
 山賊さんが悲鳴をあげて逃げてっている所を見るに、今の私は傍から見れば火だるまのグロ状態の模様。……いや、恩を返せとは言わんけど、救ってやったおっさんは、もうちょい私を助ける努力をしようよ。山賊にモラルを求めるだけ無駄か。

「……ラド、早く、火を消して」

【りっかああああああああああ】

「……聞こえてなさそうね」   

 ラドはもうすっかり狼狽えて泣き叫んでる。私が生きてることにも気づいてなさそう。
 ……さて、どうしよ。このままなら焼死はなくても、熱中症で死ぬことはありえんぞ。
 湖なりなんなりに、飛び込むなりして、火を消さないと。

「……あ」

 ぽつりと、頬に水が落ちてきた。……雨だ。ラッキー。
 先ほどまでは雲一つない快晴だったはずの空が、一瞬にして真っ暗にかわり、雨が勢いを増していく。

「偶然……にしては、タイミングが良すぎるよね」  

「--っリッカ!!!」

 ざあざあと降り注ぐ雨が、木に燃え移った炎も、私を包み込む炎を消していく。
 雨と炎の残滓で視界は悪いけど、それでも何とか見えたし、声の主もちゃんと分かった。

「……ルートさん、何だかんだで背中に乗せてもらえるくらいは、ドラゴンから受け入れられているのね」

 空から降り立つドラゴンの姿は象くらいで、一回りくらいしか違わないと思ったけど、改めて見るとやっぱりラドよりずっと大きく見える。……いや、なんていうか身から滲み出る成熟度というか安心感がそう見せているだけかもしれない。

【--うちの子が、すまない】

 ……いえいえ、いいんですよ。結果的に、無事に終わったんだから。
 ただ、なんか安心したら、急に意識が……ちょっとこのまま寝ても大丈夫ですかね。

「大丈夫か!? リッカ!?」

 ……あ、はい。大丈夫ですが、もう限界です。

 --おやすみなさい……。

 ルートさんの手が肩に当てられたのを感じるや否や、そのまま硬い胸元に頭を預けるようにして、私は意識を失った。


 
 
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