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セルドアイベント?6
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それは、はじめて聞く姉さんの本音だった。
姉さんが、私がコカトリスの世話をすることをずっと心配していたのは知っていた。女の子なのに、ともずっと言っていたし、自分の病弱っぷりを気に病んでいたこともわかっていた。
だけど、そんな風に。そんなにも強く、そのことを気にし続けていたなんて、思ってもいなかった。
「姉さん……」
怒り泣き叫ぶ姉さんに、かける言葉が見つからなかった。何を口にしても、姉さんを一層傷つけてしまう気がして。
……やっぱり私は、自分の牧場を持ってコカトリスを育てたいなんて、そんなこと思うべきじゃなかったのかな。
こんな風に、姉さんを泣かせてしまうなら……自分の望みくらい我慢するべきだったんじゃないだろうか。
『……ねえ。父さん。母さん。この人が手伝ってくれるなら、もうリッカに無理にコカトリスの世話をさせる必要はないわよね?』
ハミルさんとの結婚が決まった時の、姉さんの顔が脳裏によぎる。
『セレーヌ。勿論だ! 俺だって、本当はリッカにこんな危険な仕事を手伝わせるのは、気が引けてたんだ』
『ごめんね。リッカ。リッカは、私達に気を使わせないよう、いつも明るく振る舞っていてくれたけど、本当は辛かったわよね……。年頃の女の子なのに……』
喜び、泣く、父さんと母さんの姿も。
--ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
牧場で働きたい想いを隠すんじゃなく、殺すべきだったのかもしれない。そうすれば、みんなに、こんな顔をさせなくて済んだのに。
「姉さん、ごめ……」
口に出しかけた謝罪の言葉は、後ろから伸びて来た手に、優しく封じられた。
「--何か、勘違いされているようですが。同じ環境で育った姉妹だからといって、価値観も同一だという思い込みは今すぐ捨てるべきかと」
近づく気配はなかった。
でも当たり前と言えば当たり前かもしれない。
「貴女は、リッカではない。そして言うまでもなく、リッカは貴女の所有物ではないのですよ。勝手に貴女の想いを、リッカに押しつけないでいただきたいですね。お姉さん」
この天才的な魔術師長は、転移魔法を使えば音もなくどこにだって行けるのだから。
姉さんが、私がコカトリスの世話をすることをずっと心配していたのは知っていた。女の子なのに、ともずっと言っていたし、自分の病弱っぷりを気に病んでいたこともわかっていた。
だけど、そんな風に。そんなにも強く、そのことを気にし続けていたなんて、思ってもいなかった。
「姉さん……」
怒り泣き叫ぶ姉さんに、かける言葉が見つからなかった。何を口にしても、姉さんを一層傷つけてしまう気がして。
……やっぱり私は、自分の牧場を持ってコカトリスを育てたいなんて、そんなこと思うべきじゃなかったのかな。
こんな風に、姉さんを泣かせてしまうなら……自分の望みくらい我慢するべきだったんじゃないだろうか。
『……ねえ。父さん。母さん。この人が手伝ってくれるなら、もうリッカに無理にコカトリスの世話をさせる必要はないわよね?』
ハミルさんとの結婚が決まった時の、姉さんの顔が脳裏によぎる。
『セレーヌ。勿論だ! 俺だって、本当はリッカにこんな危険な仕事を手伝わせるのは、気が引けてたんだ』
『ごめんね。リッカ。リッカは、私達に気を使わせないよう、いつも明るく振る舞っていてくれたけど、本当は辛かったわよね……。年頃の女の子なのに……』
喜び、泣く、父さんと母さんの姿も。
--ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
牧場で働きたい想いを隠すんじゃなく、殺すべきだったのかもしれない。そうすれば、みんなに、こんな顔をさせなくて済んだのに。
「姉さん、ごめ……」
口に出しかけた謝罪の言葉は、後ろから伸びて来た手に、優しく封じられた。
「--何か、勘違いされているようですが。同じ環境で育った姉妹だからといって、価値観も同一だという思い込みは今すぐ捨てるべきかと」
近づく気配はなかった。
でも当たり前と言えば当たり前かもしれない。
「貴女は、リッカではない。そして言うまでもなく、リッカは貴女の所有物ではないのですよ。勝手に貴女の想いを、リッカに押しつけないでいただきたいですね。お姉さん」
この天才的な魔術師長は、転移魔法を使えば音もなくどこにだって行けるのだから。
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