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聖女の日々21
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兄様は私の為に、騎士団に所属して日夜頑張ってくれている。
だから、本当ならばこんなことは思ってはいけないことなんだろう。
でも、父様と母様がいて。大好きで懐かしい味がするパン粥があって。
それなのにーーどうして、兄様だけがここにいないんだろう。そう思ってしまうのだ。
「……ディアナ。ティムシーは」
「……大丈夫だよ。母様。分かってる。分かってるから。……それに兄様、今夜私の話を聞きに部屋まで来てくれるって言ってたから。だから……うん、大丈夫なんだ」
母様に言うというよりも、自分に言い聞かせるようにそう言って、パン粥を啜った。
甘くて美味しい母様のパン粥が、何だか少し塩辛くなった気がした。
「ーー悪い。ディアナ。すっかり遅くなった」
兄様が部屋を尋ねて来たのは、すっかり夜も更け、日付を跨ごうとしている時間帯だった。
「いいよ。兄様。気にしないで。……騎士団のお仕事が忙しかったんでしょう?」
「そうなんだ。あの後ディアナから、【厄】の石を預かって戻るなり、隊長から至急の業務を任されて……」
途中でハッと何かに気がついたように、兄様は口を噤んだ。
「……ディアナ。やっぱり、まだ、元気がないな。昼間のこと、気にしているのか」
思わず口元に苦笑いが浮かんだ。
「兄様と別れた後……大聖堂に行ったんだ」
私の言葉に、兄様は眉をひそめた。
「……何だって、予言者なんかの所に……」
「初代聖女の話を聞きたかったの。聖女の役割を改めて考える為に」
予言者の言っていたことを……本当に兄様に聞いてしまって大丈夫なんだろうか。
一瞬そんな迷いが脳裏に過ぎり、言葉に詰まった。
兄様が、知っていて、敢えて口にしなかった真実。
それを追及することは、私にとって本当に良いことなのだろうか。
「……どうした? ディアナ」
「…………」
「言いたいことがあるなら、何でも言ってくれ。……頼むから一人で貯め込むな」
だから、本当ならばこんなことは思ってはいけないことなんだろう。
でも、父様と母様がいて。大好きで懐かしい味がするパン粥があって。
それなのにーーどうして、兄様だけがここにいないんだろう。そう思ってしまうのだ。
「……ディアナ。ティムシーは」
「……大丈夫だよ。母様。分かってる。分かってるから。……それに兄様、今夜私の話を聞きに部屋まで来てくれるって言ってたから。だから……うん、大丈夫なんだ」
母様に言うというよりも、自分に言い聞かせるようにそう言って、パン粥を啜った。
甘くて美味しい母様のパン粥が、何だか少し塩辛くなった気がした。
「ーー悪い。ディアナ。すっかり遅くなった」
兄様が部屋を尋ねて来たのは、すっかり夜も更け、日付を跨ごうとしている時間帯だった。
「いいよ。兄様。気にしないで。……騎士団のお仕事が忙しかったんでしょう?」
「そうなんだ。あの後ディアナから、【厄】の石を預かって戻るなり、隊長から至急の業務を任されて……」
途中でハッと何かに気がついたように、兄様は口を噤んだ。
「……ディアナ。やっぱり、まだ、元気がないな。昼間のこと、気にしているのか」
思わず口元に苦笑いが浮かんだ。
「兄様と別れた後……大聖堂に行ったんだ」
私の言葉に、兄様は眉をひそめた。
「……何だって、予言者なんかの所に……」
「初代聖女の話を聞きたかったの。聖女の役割を改めて考える為に」
予言者の言っていたことを……本当に兄様に聞いてしまって大丈夫なんだろうか。
一瞬そんな迷いが脳裏に過ぎり、言葉に詰まった。
兄様が、知っていて、敢えて口にしなかった真実。
それを追及することは、私にとって本当に良いことなのだろうか。
「……どうした? ディアナ」
「…………」
「言いたいことがあるなら、何でも言ってくれ。……頼むから一人で貯め込むな」
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