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聖女の日々46
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他人を信じられない人間。
マナエさんのその言葉は、真っ直ぐに私の胸に突き刺さった。
「わたし、は……」
「ーー私を信じて下さい。聖女様。私の気持ちは、以前お伝えした通りです。貴女が『災厄の魔女の呪いしか癒せない』という姿勢を貫く限り、私はけして貴女を裏切りません。だから、貴女は私に、気兼ねなく甘えても構わないのですよ」
真っ直ぐに向けられるマナエさんの眼差しも、告げられる言葉も、どこまでも真摯なもので。
そこにこめられた想いは、とても偽りだとは思えなかった。
……けれども。
それが、解っていてなお、私は彼女の言葉にただ頷くことはできなかった。
「……マナエさん……わたし、は……」
「……はい」
「私は……貴女をとても好ましく思っていますし……本当はきっと、信じて甘えたいのだと思います」
ユーリアと……そしてセーヌヴェットと敵対するならば、味方は一人でも多いに越したことはない。
そして、王宮医であるマナエさんは、その地位からしても才覚からしても、味方になってくれれば非常に頼もしい存在だ。
マナエさんを頼りたいし、彼女の好意に寄り掛かりたい自分がいることも否定できない。
……だけど……それでも私は……。
「……それでも私は、どうやっても貴女を信じて、甘えて寄り掛かることができないんです」
「…………」
「……だって、貴女は他人だから」
目をつぶれば、いつだって私は、瞼の裏に炎が見える。
ディアナとして年を重ねることで、「それ」を極力視界に入れない術を習得したけれども、それでもそこに炎が存在し続けていることは否定できない。
かつて「アシュリナ」の命を奪った、憎悪の炎。火が燃え上がる音のかわりに、聞こえてくる怨嗟の声。
「他人を信じるのは、怖いです。……信じてまた、裏切られるのが、とても怖い」
マナエさんのその言葉は、真っ直ぐに私の胸に突き刺さった。
「わたし、は……」
「ーー私を信じて下さい。聖女様。私の気持ちは、以前お伝えした通りです。貴女が『災厄の魔女の呪いしか癒せない』という姿勢を貫く限り、私はけして貴女を裏切りません。だから、貴女は私に、気兼ねなく甘えても構わないのですよ」
真っ直ぐに向けられるマナエさんの眼差しも、告げられる言葉も、どこまでも真摯なもので。
そこにこめられた想いは、とても偽りだとは思えなかった。
……けれども。
それが、解っていてなお、私は彼女の言葉にただ頷くことはできなかった。
「……マナエさん……わたし、は……」
「……はい」
「私は……貴女をとても好ましく思っていますし……本当はきっと、信じて甘えたいのだと思います」
ユーリアと……そしてセーヌヴェットと敵対するならば、味方は一人でも多いに越したことはない。
そして、王宮医であるマナエさんは、その地位からしても才覚からしても、味方になってくれれば非常に頼もしい存在だ。
マナエさんを頼りたいし、彼女の好意に寄り掛かりたい自分がいることも否定できない。
……だけど……それでも私は……。
「……それでも私は、どうやっても貴女を信じて、甘えて寄り掛かることができないんです」
「…………」
「……だって、貴女は他人だから」
目をつぶれば、いつだって私は、瞼の裏に炎が見える。
ディアナとして年を重ねることで、「それ」を極力視界に入れない術を習得したけれども、それでもそこに炎が存在し続けていることは否定できない。
かつて「アシュリナ」の命を奪った、憎悪の炎。火が燃え上がる音のかわりに、聞こえてくる怨嗟の声。
「他人を信じるのは、怖いです。……信じてまた、裏切られるのが、とても怖い」
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