69 / 224
連載
聖女の日々48
しおりを挟む
そんなこと……許されるのだろうか。
信じてないのに、信じてるふりをすることは、相手に対してひどく不誠実な行為ではないだろうか。
戸惑う私に、マナエさんは例の不器用な笑みを浮かべて微笑んだ。
「聖女様。私が、渡りをつけて差し上げます。……ミーシャ王女にお会いなさい」
「え……」
「あの方なら、きっと貴女に『信じるふり』をすることの大切さを教えて下さるはずです」
「……ミーシャ王女、が?」
王との密約の日以来、顔を合わせていない白金の髪の少女を脳裏に浮かぶ。
彼女のことは、聖女として活動するようになってからも、ずっと気に掛かっていた。
だから、会えるというならば、「信じるふり」云々を置いても、また会いたいとは思う。
……だけど。
『そう言った訳ではない。……ミーシャはお前以上に、聖女に深入りさせるわけには行かぬのだ』
『あれは民が聖女の不在を憂う気持ちを軽減させる為に、前代聖女を模倣して育てた。清く、正しく、ただひたすら心優しく……人の悪意から遠ざけ、歪なまでに純粋で素直であるように、教育した。その結果、あれは【災厄の魔女】から目をつけられ、病に臥したのだ』
『生まれて初めての悪意に晒され、激しい苦痛と絶望の末に死にかけたミーシャの精神は、非情に危うい状態にある。全てを知れば、聖女を憎み、余を憎み、民を呪う可能性も無きにしもあらず。故に、あれは治癒に専念させるという名目で、聖女から引き離すべきなのだ』
「……きっと王が、私とミーシャ王女が接触することを許してくれませんよ」
ーー【災厄の魔女の呪い】が消滅した今、私の存在は、ミーシャ王女をただ傷つけるだけだから。
そう続けると、マナエさんはどこか呆れたような表情で深々とため息を吐いた。
「……王はご慧眼をお持ちだと思っていましたが、相手が自分の娘となると、その視界も曇るようですね」
「…………」
「私は、【災厄の魔女の呪い】に侵されたミーシャ王女を、ずっと看て来たから分かります。……あの方は、お強い方ですよ。ライオネル王が思っているよりも、ずっと」
信じてないのに、信じてるふりをすることは、相手に対してひどく不誠実な行為ではないだろうか。
戸惑う私に、マナエさんは例の不器用な笑みを浮かべて微笑んだ。
「聖女様。私が、渡りをつけて差し上げます。……ミーシャ王女にお会いなさい」
「え……」
「あの方なら、きっと貴女に『信じるふり』をすることの大切さを教えて下さるはずです」
「……ミーシャ王女、が?」
王との密約の日以来、顔を合わせていない白金の髪の少女を脳裏に浮かぶ。
彼女のことは、聖女として活動するようになってからも、ずっと気に掛かっていた。
だから、会えるというならば、「信じるふり」云々を置いても、また会いたいとは思う。
……だけど。
『そう言った訳ではない。……ミーシャはお前以上に、聖女に深入りさせるわけには行かぬのだ』
『あれは民が聖女の不在を憂う気持ちを軽減させる為に、前代聖女を模倣して育てた。清く、正しく、ただひたすら心優しく……人の悪意から遠ざけ、歪なまでに純粋で素直であるように、教育した。その結果、あれは【災厄の魔女】から目をつけられ、病に臥したのだ』
『生まれて初めての悪意に晒され、激しい苦痛と絶望の末に死にかけたミーシャの精神は、非情に危うい状態にある。全てを知れば、聖女を憎み、余を憎み、民を呪う可能性も無きにしもあらず。故に、あれは治癒に専念させるという名目で、聖女から引き離すべきなのだ』
「……きっと王が、私とミーシャ王女が接触することを許してくれませんよ」
ーー【災厄の魔女の呪い】が消滅した今、私の存在は、ミーシャ王女をただ傷つけるだけだから。
そう続けると、マナエさんはどこか呆れたような表情で深々とため息を吐いた。
「……王はご慧眼をお持ちだと思っていましたが、相手が自分の娘となると、その視界も曇るようですね」
「…………」
「私は、【災厄の魔女の呪い】に侵されたミーシャ王女を、ずっと看て来たから分かります。……あの方は、お強い方ですよ。ライオネル王が思っているよりも、ずっと」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,724
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。