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連載2
忘れられた神々1
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兄様の視線は地下通路がつながっている、何もない空間に向けられている。
母様が護符で結界を施しているから、たとえ地下通路の使い方を知っている人間であっても、普通に考えたら入れるはずがない。
けれど私を守る兄様から伝わる緊張から、そこに招かれざる客人が近づいて来ていることは確信できた。
だって一流の狩人の兄様が、人の気配を間違えるはずがないから。
結界に邪魔されて、立ち去ってくれればいい。
だけど、もし結界を突破したらーーきっとその時は戦闘を避けられない。
少しでも兄様の足手まといにならないよう、父様に用意してもらったナイフを手に取って握り締める。
その瞬間、地下通路へとつながる空間が揺らいだ。
「っ……!」
「ーー勝手にこんなところから部屋に侵入して申し訳ありません、聖女様! ですが、一刻も早くこのことを報告しなければ、と思いまして! 【災厄の魔女】の力の秘密が分かったかもしれません!」
「…………シャルル王子?」
息せき切って地下通路から部屋に飛び込んできたシャルル王子は、剣を構えた兄様の姿を見るなり顔を引きつらせた。
「あーーお、お兄様。あ、あははは……こちらにいらしてたんですね」
無言で剣を鞘に収めた兄様は、つかつかとシャルル王子に近づくと、胸ぐらを掴んでその体を持ち上げた。
「ぐ、ぐえ」
「……おい。お前。今、どこから入ってきた」
「ち、地下通路からです」
「地下通路の入り口には、母さんが仕掛けた結界が張ってあったはず。何故破れた」
「そ、それはその……聖女様のお母様の結界は大変素晴らしいものですが、城内の地下通路に関してはどんな強力な結界よりも、王族の血筋の方が優先されるんです。……敵に勝手に結界を張られて、道をふさがれたら困りますし。同じ王族同士なら、施した結界は結界を張った本人にしか破れないのですが、お母様の場合そもそもルシトリア国民ですらないですし……」
「はあ!? そんなの聞いてないぞ!」
「だってこれを話したら、お兄様たち警戒してこの城に滞在してくれなくなるでしょう!? 王族以外の侵入者を警戒した場合、間違いなくこの城の中こそがルシトリア一安全な場所なのに!」
「当たり前だ! お前の次兄あたりが、王位を簒奪するために聖女であるディアナを取り込もうと、誘拐でも企んだりしたら、どうしてくれる!」
「兄上はそんな人ではないですが、そういう事態も想定して父上は聖女様に害を成そうとするものが侵入できないよう、条件付きの結界を貼っているので安心してください!」
「お前が侵入できてる時点で安心できるはずがないだろ!」
「私は聖女様に良からぬことを企んだりしてませんから!!!」
母様が護符で結界を施しているから、たとえ地下通路の使い方を知っている人間であっても、普通に考えたら入れるはずがない。
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だけど、もし結界を突破したらーーきっとその時は戦闘を避けられない。
少しでも兄様の足手まといにならないよう、父様に用意してもらったナイフを手に取って握り締める。
その瞬間、地下通路へとつながる空間が揺らいだ。
「っ……!」
「ーー勝手にこんなところから部屋に侵入して申し訳ありません、聖女様! ですが、一刻も早くこのことを報告しなければ、と思いまして! 【災厄の魔女】の力の秘密が分かったかもしれません!」
「…………シャルル王子?」
息せき切って地下通路から部屋に飛び込んできたシャルル王子は、剣を構えた兄様の姿を見るなり顔を引きつらせた。
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「ぐ、ぐえ」
「……おい。お前。今、どこから入ってきた」
「ち、地下通路からです」
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「そ、それはその……聖女様のお母様の結界は大変素晴らしいものですが、城内の地下通路に関してはどんな強力な結界よりも、王族の血筋の方が優先されるんです。……敵に勝手に結界を張られて、道をふさがれたら困りますし。同じ王族同士なら、施した結界は結界を張った本人にしか破れないのですが、お母様の場合そもそもルシトリア国民ですらないですし……」
「はあ!? そんなの聞いてないぞ!」
「だってこれを話したら、お兄様たち警戒してこの城に滞在してくれなくなるでしょう!? 王族以外の侵入者を警戒した場合、間違いなくこの城の中こそがルシトリア一安全な場所なのに!」
「当たり前だ! お前の次兄あたりが、王位を簒奪するために聖女であるディアナを取り込もうと、誘拐でも企んだりしたら、どうしてくれる!」
「兄上はそんな人ではないですが、そういう事態も想定して父上は聖女様に害を成そうとするものが侵入できないよう、条件付きの結界を貼っているので安心してください!」
「お前が侵入できてる時点で安心できるはずがないだろ!」
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