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連載2

忘れられた神々12

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 言外に、予言者への不信感を滲ませるシャルル王子の言葉に、兄様もうなずく。

「記憶を操作しなかったのは、あくまで俺の存在があったからだ。たとえお前達の記憶を消したとしても、俺が覚えていたら意味がない。予言者の力が及ばない聖堂の外では、記憶を消したところできっかけがあれば蘇ってしまうことはシャルル王子で検証されているしな」

 そう考えると、兄様が聖堂に入らない選択をしたのは正しかったのだろう。
 予言者は聖堂の中では、誰よりも強い力を振るえる。けれどその力は、聖堂の外の対象には、たとえ近くに潜伏していたとしても、行使することはできないのだ。

「予言者は、私達に何かを隠している」

 それが良いことか悪いことかはわからないけれど、それだけは間違いない。
 予言者が100パーセント味方だと言いきれない以上、剣の存在は隠した方がいい。

「今回のことは……父上にも報告しない方がいいですよね」

「ああ。予言者を信じるにしろ、疑うにしろ、トリアスの力に対する見解はディアナと共通している。封印を維持するためにも、トリアスの存在を知るものは一人でも少ない方がいい」

「わかりました。このことは、私の胸に秘めることにします」

 王族として、この事実を陛下に報告しないでいることは正しいことなのだろうか。
 そんな私の迷いが顔に出ていたのか、シャルル王子は安心させるように笑った。

「父上に報告せず、一人秘密を抱えることに躊躇はありません。元々聖女様たちの存在ですら、父上には秘密にするつもりだったのですよ? それに比べれば、今回の秘密なんて直接国に影響がない分些細なことです」

「……ですが」 

「そんな顔をなさらないでください。私は貴女がミーシャを救ってくださった時に、胸に誓ったのです。もし父上が貴女と対立する状況になった時も、必ず貴女の味方になると。ーーそうすることが、貴女が私に与えてくださった恩恵に対する、私の示せる精一杯の誠意なのだと思ってください」

 迷いなくそう言いきるシャルル王子に、何だか複雑な気持ちになった。

「……言いそびれていましたが、マナエ医師の件、本当にありがとうございました。おかげで、だいぶ心理的負担が軽減されました」

「聖女様のお役に立てたというなら、これ以上うれしいことはありません」

「マナエさんも、ミーシャ王女も言ってました。ーー貴方の好意を利用すべきだと」

 シャルル王子は一瞬キョトンとしたような表情を浮かべてから、すぐに花が開いたように笑んだ。

「ええ。利用してください。少しでも貴女のお役に立てるなら、私はそれだけで幸福なのですから」
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