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連載2

決戦の時2

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 私は考えを伺うように、隣に控えている兄様の顔を盗み見た。

「……そのことを踏まえると、ディアナの直接の同行者はなるべく少ない方がいい。【災厄の魔女の呪い】自体はディアナが癒すことができるとはいえ、聖女の力を行使することはディアナの負担になる。ディアナを守るつもりで足手まといになるくらいなら、城内の同行者は俺一人にしぼるべきだ。当然父さんを筆頭とした別働隊を、城の外で潜伏させる必要はあるけどな」

「……兄様は、私が招待を受けることを、反対しないの?」

「反対されたいのか」

「……そういうわけじゃないけど」

 私の言葉に、兄様は苦々しい表情を浮かべた。

「この招待は、間違いなく罠だ。できることなら、俺はお前をそんな危険な場所に出向かせたくはない。だが最近の【災厄の魔女の呪い】の罹患者は、ほとんどがセーヌヴェットからやって来たものだ。あの女が俺達の存在に警戒し、安全な国内にとどまったまま、呪いの受け付け先を手近な存在で済ませている証拠だ。これだけ警戒されている状況で招待を受けずにセーヌヴェットに潜伏したとしても、ディアナの安全を確保した状態で、あの女と接触を試みるのは難しいだろう。ならば危険を承知で虎穴に入るしかない」

 それに、と続けながら、兄様は後ろに控えて話を聞いていた父様を振り返った。

「セーヌヴェットの騎士の多くは、ルイス王に逆らって殺されたり、離反したりしているんだろう。父さん?」

「……ああ。マイクをはじめとした、かつての部下たちの証言が事実ならば、今のセーヌヴェットの国防はぼろぼろだ。自己保身の為に王家に従う風見鶏か、ごろつき崩れの傭兵しかいない。ルイス国王本人は剣を嗜む程度にしか扱ったことがないはずだから、【災厄の魔女の呪い】さえ気をつけておけば、ほとんどの兵がお前の敵ではないだろう」

 父様は、眉間に皺を寄せた険しい表情で兄様を見据えた。

「ーーただ一人、ルイス王の護衛騎士を除けば」

 獲物を狙う獰猛な猟犬のような、真っ黒の瞳が脳裏に蘇る。
 筋肉が盛り上がり、血管の浮いた太い腕が。
 厳めしいがよく見ると整った顔を覆い尽くすような、皮膚が引きつれた醜い傷跡が、まるでつい昨日見たかのように思い出される。

「……『エイドリー・ノットン』」

 【剣聖】と謳われた父様の、双璧と呼ばれた存在。
 ルイス王の懐刀。

「……知っているのか。ディアナ」

「知っているよ。……忘れるはずがない」

 晩年は人との交流が薄かったアシュリナ。それでもエイドリーのことは、忘れたくても忘れられるはずがない。

「エイドリーが暴徒から『私』を守ろうとしたアルバートを殺し、『私』の火刑を実行したのだから」
 
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