処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ

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連載2

神との戦い3

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 兄様の言うように、もしかしたら結晶化を解いた【厄】なら、この状況でもルイス王に攻撃はできるかもしれない。
 私が結晶化してきた【厄】はユーリアが作ったものだから、ユーリアが結晶化した今の状況では無制御状態になる可能性が高い。
 トリアスはユーリア同様に【厄】を作り出すことはできると言ったけど、ユーリアが作り出した【厄】を制御することまではできないのではないだろうか。
 そもそも飽和しきった【厄】は、器を求めて暴走し、作り手ですら完全に御することはできなくなっているようにも見える。
 もし私の状態が万全だったら、兄様の作戦は試す価値があるように思う。

 でも……。

「そんなことをしたら、兄様はどうなるの? 【厄】は兄様にだって襲いかかってくるでしょう?」

 【厄】は破壊する為の器を求めている。
 これだけ多くの【厄】の結晶化を解いたら、器を が一人分だけで足りるはずがない。
 もし私が自分だけに結界を張ったら、【厄】は兄様も器にしようとするはずだ。

「……俺のことは気にしないでいい。シャルル王子だって耐えたんだ。俺だって耐えてみせるさ」

「でも数が違い過ぎるよ……! 侵す【厄】が多ければ多いほど、体の負担は大きくなるのに……!」

「それでも……そうしなければ、あいつは倒せないだろう?」

 兄様は真っ直ぐに私を見つめ、手を握った。

「……自分ではなく、俺だけに結界を張ろうだなんて馬鹿なことは考えるなよ。ディアナ。お前がここで死んでしまったら残された【厄】を片付けられる人間はいなくなる。俺達を信じて、進んで【厄】に侵されたシャルル王子の信頼を裏切るな。お前が生きてここを脱出さえできれば、今は無理でも、時間を置けばまた聖女の力を使えるようになるんだから」

「なら……せめて結晶化を解除する【厄】の数を制限して……」

「だめだ。この空間の特性を考えると、ルイス王にできる攻撃は不意打ちの一回限りだと思うべきだ。ならば一気に全てを解除して、こちらができる最大限の【厄】をぶつけるべきだ」

 ……ひどい。

 ひどいよ、兄様。

「頼む。ディアナ……お前にしかできないことなんだ」

 そんな風に諭すみたいに優しく笑って、私に世界で一番大切な人の命を諦めさせようとするなんて。   

「……嫌だよ」
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