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連載2
神との戦い5
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兄様は驚いたように目を見開いた後、ため息と共に諦め混じりの笑みを浮かべて、私を強く抱き締め返してくれた。
「……わかった。ディアナを信じるよ」
「任せるじゃなく、信じる?」
「同じことだ。……だって俺はお前になら、信じて裏切られたとしても構わないんだから」
『例えどんな状況だろうと無条件で信じられるし、もしそれで裏切られたとしても、兄様ならいいの。私、兄様ならたとえ殺されたとしても恨んだりしない』
以前兄様に告げた言葉が脳裏に蘇り、口元が引きつった。
「それはいつかの意趣返しのつもり?」
「さあ、どうだろうな」
「兄様の意地悪」
「お前の言うことをすぐに受け入れているんだから、意地悪じゃないだろう」
強く抱き締めあったまま、恋人同士のじゃれ合いのような軽口を交わして、くすくす笑いあう。
変なの。こんな状況なのに……何だか胸が温かい。
「信じてもらってこんなことを言うのはあれだけど……正直ぴったりくっついてても確実に結界を張れる保証はないんだ。もし結界がうまく張れなくて、一緒に死んじゃったりしたらごめんね」
「軽く言うことじゃないだろ。……仕方ない。その時はその時だ。シャルル王子には悪いけど、俺たちは精一杯頑張ったってことで許してもらおう」
「兄様がエイドリーを、私はユーリアを倒したから、ルシトリアの為には十分貢献したよね。道連れにしちゃうシャルル王子には申し訳ないけど、そもそも私が聖女の力を使わなければ初めて会った時に亡くなってたわけだし。きっと許してくれるよね」
「……なあ、ディアナ。俺はずっとディアナが死ぬくらいなら、俺が代わりに死にたいと思っていた」
「私も、兄様が死ぬくらいなら、私が死んだ方がましだって思ってたよ」
こつんと互いの額をぶつけて、見つめ合う。
大好きな兄様の若草色の瞳を、目に焼き付けるように。
「……でもね。今初めて知ったんだけど。私、兄様と一緒なら死ぬことだって幸福だって思えるみたい」
兄様が私の為に死ぬくらいなら、私が兄様の為に死んで、兄様には生きて幸せになって欲しい。
その気持ちも嘘ではないのだけど、いざこうして一緒に死んでしまうかもしれない状況に陥ると、これはこれで悪くないなって思ってしまう私がいる。
兄様と抱き締め合ったまま一緒に死ねるなら、これほど幸福な死に方はないんじゃないかなって。
私の言葉に兄様は苦笑いを浮かべた。
「俺も同じではあるけど……できることならば、生きてお前と一緒にいたいとは思うな」
「もちろん、それが一番だよ。だから、私はぎりぎりまで足掻くつもり。だけどもし、それでも駄目だったら」
だけどもし。
ぎりぎりまで足掻いてなお、駄目だったその時は。
「その時は兄様。ーー私の騎士として、死後の世界まで一緒にお供してください」
「……わかった。ディアナを信じるよ」
「任せるじゃなく、信じる?」
「同じことだ。……だって俺はお前になら、信じて裏切られたとしても構わないんだから」
『例えどんな状況だろうと無条件で信じられるし、もしそれで裏切られたとしても、兄様ならいいの。私、兄様ならたとえ殺されたとしても恨んだりしない』
以前兄様に告げた言葉が脳裏に蘇り、口元が引きつった。
「それはいつかの意趣返しのつもり?」
「さあ、どうだろうな」
「兄様の意地悪」
「お前の言うことをすぐに受け入れているんだから、意地悪じゃないだろう」
強く抱き締めあったまま、恋人同士のじゃれ合いのような軽口を交わして、くすくす笑いあう。
変なの。こんな状況なのに……何だか胸が温かい。
「信じてもらってこんなことを言うのはあれだけど……正直ぴったりくっついてても確実に結界を張れる保証はないんだ。もし結界がうまく張れなくて、一緒に死んじゃったりしたらごめんね」
「軽く言うことじゃないだろ。……仕方ない。その時はその時だ。シャルル王子には悪いけど、俺たちは精一杯頑張ったってことで許してもらおう」
「兄様がエイドリーを、私はユーリアを倒したから、ルシトリアの為には十分貢献したよね。道連れにしちゃうシャルル王子には申し訳ないけど、そもそも私が聖女の力を使わなければ初めて会った時に亡くなってたわけだし。きっと許してくれるよね」
「……なあ、ディアナ。俺はずっとディアナが死ぬくらいなら、俺が代わりに死にたいと思っていた」
「私も、兄様が死ぬくらいなら、私が死んだ方がましだって思ってたよ」
こつんと互いの額をぶつけて、見つめ合う。
大好きな兄様の若草色の瞳を、目に焼き付けるように。
「……でもね。今初めて知ったんだけど。私、兄様と一緒なら死ぬことだって幸福だって思えるみたい」
兄様が私の為に死ぬくらいなら、私が兄様の為に死んで、兄様には生きて幸せになって欲しい。
その気持ちも嘘ではないのだけど、いざこうして一緒に死んでしまうかもしれない状況に陥ると、これはこれで悪くないなって思ってしまう私がいる。
兄様と抱き締め合ったまま一緒に死ねるなら、これほど幸福な死に方はないんじゃないかなって。
私の言葉に兄様は苦笑いを浮かべた。
「俺も同じではあるけど……できることならば、生きてお前と一緒にいたいとは思うな」
「もちろん、それが一番だよ。だから、私はぎりぎりまで足掻くつもり。だけどもし、それでも駄目だったら」
だけどもし。
ぎりぎりまで足掻いてなお、駄目だったその時は。
「その時は兄様。ーー私の騎士として、死後の世界まで一緒にお供してください」
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