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ルクレア・ボレアという女
逆ハーエンドを目指します5
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まぁ、かなりの数のマルチエンディング形式でソフトの容量を使っていると考えると、他に容量割く必要ない分、同人ゲームとしては一番無難なタイプなんじゃないかなと思う。
ゲーム制作の過程がどんなもんなのか、前世バリバリ文系な私にはさっぱりだが、フリーのノベルゲーム制作ソフトとかをネットで見た覚えあるし、一番作りやすいんじゃないだろうか。……多分。うん、きっとそう。正直ゲーム作成なんて考えたこともなかったから、その辺はよく分からないけれど。
「ノベル型」と言ってもその選択肢の形態によってさらに細かく分類分けは可能だが、「君の背中に翼が見える」に関しては、物語を追っていくうちに選択肢が出現し、何を選択したかで攻略キャラの好感度が変わり、その好感度に応じてイベントが出現するという、最もイメージしやすく分かりやすい形態のゲームだ。
私はこのゲームが「通い型」でも「シミュレーション型」でもなかったことに、心からの感謝を禁じ得ない。
だって、考えても欲しい。
私たちはゲームと違って、現実の社会で実際に生きている。そんな状態で、他のタイプにおける必要条件をこなすのは非常に難しい。例えば「通い型」における必要な、訪問回数なんて、具体的に何回必要なのかわかるか?
どんな形でも、その回数分訪ねていればいいのか?
一日複数回訪ねたら、それどうやってカウントされんだ? そもそも用事もないのに訪ねまくること自体(しかも最初はあまり親しくない状態で)怪しすぎるだろ!
「シミュレーション型」は、もっとひどい。
たとえば育成シミュレーション。ゲームなら「学習」や「運動」といったコマンドを選び、難易度が高い場合でもミニゲームをクリアすればスキルが身につく。
しかし、現実社会でそんな簡単に学問や運動神経が身につくと思うか? 身につくわけねーだろ。んな簡単だったら、塾も家庭教師も、トレーナーもいらんわっ!
経営シュミレーションはもっと悪夢だ。私は前世で曲りなりに社会人を経験した身だ。商売の難しさは、身に染みて知っている。
経営ノウハウを持っている優秀な事業家すら、油断すれば火傷をするような時勢。経営のドシロートが、簡単に成功できる程世の中甘くない。失敗するのが普通だ。当たり前だ。下手こけば、借金を背負う可能性だってある。
もし元の乙女ゲームがそんな別のタイプのゲームだったら、悪魔様を「逆ハーエンド」に導くことなど、かなり不可能に近い事態だったわけで。
そんな恐ろしい状況を回避できただけでも、神様に感謝だ。
悪魔様には、私が把握している攻略キャライベントが発生した際に、ただその場で望ましいとされている行動を取ってもらえばいいだけだ。実に簡単分かりやすい。
だから正直、悪魔様から「逆ハーイベントを成功させろ」という命令を受けた時、私は非常に楽観的に考えていた。
第一イベントを、私がフラグ乗っ取りを行なってしまったマシェル・メネガにおいては、多少の修正は必要だ。だが、他のキャラにおいては、自分の指示通りに悪魔様に行動してもらえば、簡単にエンディングを迎えられると、そう思っていた。
ゲームにおいて、第一イベントはあくまで出会いを目的のイベントであり、その際にどの選択肢を選んだとしても、攻略キャラの好感度に大きく影響を与えることはない。だから、万が一悪魔様が第一イベントにおいて、最も好感度が低くなるようなイベントを発生させたとしても、次の行動次第で何ともなると思っていた。
思っていたのに。
……なのに、第2イベントが発生しないっちゅーのは、一体どうゆうことだぁっっ!?
「どうゆうことか説明してみろよ、あぁ?」
「……待って、あk……ご主人様っ。私も全く意味が分からないから、ちょっと頭ん中整理してみるっ!」
不良ばりに凄む悪魔様に、脅える余裕もない。
このゲームの世界に何が起こっているんだ!? さっぱり分からん!
これも、悪魔様が実は男だったこと……もしくは私やヒロインちゃんが転生者だったことで、ゲーム自体が色々バグってしまっているのか?
それとも、リアルエンジェちゃん以外の転生者が、攻略キャラを取られたくなくて、邪魔してる?
待て、落ち着け私。一人で悶々考えても、猶更混乱するだけだ。
まずは、今の状況を、正確に把握しようじゃないかっ!
私は自分の鞄に一目散に飛びついて、必死で中を漁りだす。
……あれ、どこやった? ……確か、この辺に……。
「……急に何してんだ」
「探し物っ!」
呆れたように声を掛ける悪魔様に即答しながらも、探す手を動かすことはやめない。
……そうだ、確かここのポケットに……あ、あった! あった!
「どうるん、どぅどぅん! ……けいたい、でんわぁ~」
前世で聞いた、どこぞの未来型ネコ耳ロボットの声真似をしながら、発見した携帯電話を掲げる。
…ん? こんな中世風の世界に携帯電話?等と、首を傾げてはいけない。
言ったはずだ。このゲームの舞台は同人サークルがノリで作った、でたらめ異世界。現代機器とて、普通に流通している、とんでも設定だ。
私は、目的の人物の電話帳を開いて、すぐさま電話を掛ける。電話を握って待ち構えていたのか、すぐさま電話は繋がった。
「……キエラ? 依頼よ。通常の2倍の報奨金を払うから、今すぐ4階多目的教室まで、足を運んで頂戴!!」
――さぁ、サポートキャラちゃんの出番ですよっ!
「……おい、てめぇ、なんで携帯電話持っていること、俺に言わなかったんだ。知ってりゃ、わざわざ訪ねる手間何ぞ掛けずに済んだのに」
「あ」
ゲーム制作の過程がどんなもんなのか、前世バリバリ文系な私にはさっぱりだが、フリーのノベルゲーム制作ソフトとかをネットで見た覚えあるし、一番作りやすいんじゃないだろうか。……多分。うん、きっとそう。正直ゲーム作成なんて考えたこともなかったから、その辺はよく分からないけれど。
「ノベル型」と言ってもその選択肢の形態によってさらに細かく分類分けは可能だが、「君の背中に翼が見える」に関しては、物語を追っていくうちに選択肢が出現し、何を選択したかで攻略キャラの好感度が変わり、その好感度に応じてイベントが出現するという、最もイメージしやすく分かりやすい形態のゲームだ。
私はこのゲームが「通い型」でも「シミュレーション型」でもなかったことに、心からの感謝を禁じ得ない。
だって、考えても欲しい。
私たちはゲームと違って、現実の社会で実際に生きている。そんな状態で、他のタイプにおける必要条件をこなすのは非常に難しい。例えば「通い型」における必要な、訪問回数なんて、具体的に何回必要なのかわかるか?
どんな形でも、その回数分訪ねていればいいのか?
一日複数回訪ねたら、それどうやってカウントされんだ? そもそも用事もないのに訪ねまくること自体(しかも最初はあまり親しくない状態で)怪しすぎるだろ!
「シミュレーション型」は、もっとひどい。
たとえば育成シミュレーション。ゲームなら「学習」や「運動」といったコマンドを選び、難易度が高い場合でもミニゲームをクリアすればスキルが身につく。
しかし、現実社会でそんな簡単に学問や運動神経が身につくと思うか? 身につくわけねーだろ。んな簡単だったら、塾も家庭教師も、トレーナーもいらんわっ!
経営シュミレーションはもっと悪夢だ。私は前世で曲りなりに社会人を経験した身だ。商売の難しさは、身に染みて知っている。
経営ノウハウを持っている優秀な事業家すら、油断すれば火傷をするような時勢。経営のドシロートが、簡単に成功できる程世の中甘くない。失敗するのが普通だ。当たり前だ。下手こけば、借金を背負う可能性だってある。
もし元の乙女ゲームがそんな別のタイプのゲームだったら、悪魔様を「逆ハーエンド」に導くことなど、かなり不可能に近い事態だったわけで。
そんな恐ろしい状況を回避できただけでも、神様に感謝だ。
悪魔様には、私が把握している攻略キャライベントが発生した際に、ただその場で望ましいとされている行動を取ってもらえばいいだけだ。実に簡単分かりやすい。
だから正直、悪魔様から「逆ハーイベントを成功させろ」という命令を受けた時、私は非常に楽観的に考えていた。
第一イベントを、私がフラグ乗っ取りを行なってしまったマシェル・メネガにおいては、多少の修正は必要だ。だが、他のキャラにおいては、自分の指示通りに悪魔様に行動してもらえば、簡単にエンディングを迎えられると、そう思っていた。
ゲームにおいて、第一イベントはあくまで出会いを目的のイベントであり、その際にどの選択肢を選んだとしても、攻略キャラの好感度に大きく影響を与えることはない。だから、万が一悪魔様が第一イベントにおいて、最も好感度が低くなるようなイベントを発生させたとしても、次の行動次第で何ともなると思っていた。
思っていたのに。
……なのに、第2イベントが発生しないっちゅーのは、一体どうゆうことだぁっっ!?
「どうゆうことか説明してみろよ、あぁ?」
「……待って、あk……ご主人様っ。私も全く意味が分からないから、ちょっと頭ん中整理してみるっ!」
不良ばりに凄む悪魔様に、脅える余裕もない。
このゲームの世界に何が起こっているんだ!? さっぱり分からん!
これも、悪魔様が実は男だったこと……もしくは私やヒロインちゃんが転生者だったことで、ゲーム自体が色々バグってしまっているのか?
それとも、リアルエンジェちゃん以外の転生者が、攻略キャラを取られたくなくて、邪魔してる?
待て、落ち着け私。一人で悶々考えても、猶更混乱するだけだ。
まずは、今の状況を、正確に把握しようじゃないかっ!
私は自分の鞄に一目散に飛びついて、必死で中を漁りだす。
……あれ、どこやった? ……確か、この辺に……。
「……急に何してんだ」
「探し物っ!」
呆れたように声を掛ける悪魔様に即答しながらも、探す手を動かすことはやめない。
……そうだ、確かここのポケットに……あ、あった! あった!
「どうるん、どぅどぅん! ……けいたい、でんわぁ~」
前世で聞いた、どこぞの未来型ネコ耳ロボットの声真似をしながら、発見した携帯電話を掲げる。
…ん? こんな中世風の世界に携帯電話?等と、首を傾げてはいけない。
言ったはずだ。このゲームの舞台は同人サークルがノリで作った、でたらめ異世界。現代機器とて、普通に流通している、とんでも設定だ。
私は、目的の人物の電話帳を開いて、すぐさま電話を掛ける。電話を握って待ち構えていたのか、すぐさま電話は繋がった。
「……キエラ? 依頼よ。通常の2倍の報奨金を払うから、今すぐ4階多目的教室まで、足を運んで頂戴!!」
――さぁ、サポートキャラちゃんの出番ですよっ!
「……おい、てめぇ、なんで携帯電話持っていること、俺に言わなかったんだ。知ってりゃ、わざわざ訪ねる手間何ぞ掛けずに済んだのに」
「あ」
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