乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、ヒロインが鬼畜女装野郎だったので助けてください

空飛ぶひよこ

文字の大きさ
26 / 191
ルクレア・ボレアという女

逆ハーエンドを目指します7

しおりを挟む
「……同室者だ」

 ディビットの言葉に、あぁ、そーいやそんな設定あったかもと思い出す。

 この学園は都市部に位置しているから、中央貴族以外の地方出身者の学生は自宅から通うことはまず不可能だ。しかし貴族の間ではこの学園を卒業することがステータスとなっている為、学費を支払えるだけの余裕がある家は、どんなに距離が離れていようが、自らの子息を学園に入学させたがる。

 結果、この学園は半寮制になっている。半寮制というべきか、4分の3寮制というべきか。
 通学費用も、交通網が発達した前世の世界と比べて色々不便なこの世界では、とんでもない金額になったりする。まして、この学園は「自然豊かな環境で、健全な精神を養うためうんちゃら」というよくわからん心情から、人里離れた陸の孤島的立地に立てられているのだ。

 学園から一歩出れば、見渡す限り木、木、木。

 いくら都市部に住んでいても、こんな場所まで苦労して毎日通わなければならないなら、寮に住んだ方がよほど楽である。だから結局ほとんどの生徒が寮暮らしを選択する。
 一説には、常に召使やメイドに面倒を見てもらったお坊ちゃま、お壌ちゃまが、自立の苦労を味わう為のシステムだと言われている。
 確かに、いくら食堂等は完備されているとはいえ、寮暮らしをすれば基本的に身の回りのことは自分でしなければならない。着替えですら自分ひとりでしたことが無いようなボンボンには、さぞ困難な生活であろう。実に同情する。

 ……え? 私?

 ボレア家の財力を舐めちゃいけない。高価な学園直通の転移魔法具を手配するのなんて、余裕に決まっているだろう。
 当然ながら、優雅な実家暮らしで、召使さんやメイドさんにあれこれ世話を焼いてもらっていますけど、何か?

 ……え、自立? 何それ、美味しいの?

 せっかく前世と違って恵まれた境遇にあるのなら、それを堪能してこそだろう。

【人生楽あれば、苦はいらない】

 いつかどこかで聞いたこの言葉が、今生の私のモットーである。人間苦労すればいいってもんじゃない。いらん苦労をわざわざ負うこたぁない。

 ……話が反れた。

 まぁ、そんな感じでほとんどの生徒が寮生活を送っている現状、王族から見いだされただけの庶民なヒロイン、エンジェ・ルーチェも、貧乏地方貴族なキエラ・ポーサも、当然ながら寮生活になるわけで。

 同室となり意気投合した結果、守銭奴なキエラが「あんためっちゃ気に入ったわー。よっしゃ、あんたならただで情報売ったる!」となるのが、サポートキャラとしての役割の始まりだった……のを、今ようやく思い出した。

 あかんね。結構記憶力いい方だと思ってたけど、流石に何十年も前の記憶なら色々忘れてしまうな。
 攻略対象キャラのイベント類とかなら結構覚えてんだが……どうも本筋の恋愛とか、胸熱展開だとか絡んでない部分、結構忘れてしまっているっぽい。
 何が私に影響及ぼすか分かんないから、いっぺん覚えている記憶なんかに書き留めるとかせんとあかんな。

「デイビッドと最初にあった時はホンマびっくりしたわ~。せっかくだから思って眼鏡外して基本プロフィール見とったら、性別欄に『男』って書いてあるんやもん。思わず、ウチの『眼』の機能がおかしくなってもうたのかと疑ってしもうたわ」

 こんな美少女が男とか詐欺やろ? と振ってくるキエラの言葉に全力で同意する。
 正体が分かってなお、私は未だにディビットが男だという現実を受け止められていない。実はドッキリだったんじゃないか、私が見たぺったんこな胸は幻だったんではないかと、未だに思ってしまうくらい、詐欺な男だ。つくづく。

「まぁでも面白そうやし、秘密にせんなら無理矢理唇奪って下僕化するって脅されたから、色々ただで協力してやっとるんやわ。……全く、情報の価値をなんだと思ってるんや。情報は時に金隗にも勝るっちゅー格言もあるっちゅーのに……」

 ゲーム中とは違って、キエラはただ働きが不本意らしい。唇を尖らせながら、じと目でディビットを睨み付けている。そんなキエラに、ディビットは凶悪な顔で舌打ちを鳴らす。

「……今度からちゃんと情報料払ってやるから、そうぐちぐち言うのやめろ。毎日毎日何度も恨み言言いやがって……うぜぇ」

「ほんま!?」

「あぁ、いい『財布』が手に入ったからな」

 ……あれ、もしかして財布って私のことですか。
 いや、ボレア家の財力の前では、情報料なんていくら払っても大したことないのも事実だけど、全部私に支払い、押し付ける気満々ですか。

 ……はい、もしかしなくてもそうですよね。

 分かってたよ……分かってたさっ!
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~

詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?  小説家になろう様でも投稿させていただいております 8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位 8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位 8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位 に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m

悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。 ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。 小説家になろう様でも投稿しています。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

処理中です...