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ダーザ・オーサムというショタキャラ
ダーザ・オーサムというショタキャラ27
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……やけに具体的な例えだしてくるね。トリエット。
それじゃあ、まるで、特定の誰かを指しているみたいじゃないか。
……おい、マシェルよ。何でそこで私を見つめて来るのだ。
「ルクレア」
「……何かしら」
「先程から右腹部に置いている右手をどかしてみろ」
「………」
――だが、断る!
……しょうがないじゃない。全てはしつこ過ぎるハンバーグソースが悪いのだ。ディーネの水魔法でいくら洗浄しても、しっかり染みになって落ちない、ワイン入りデミグラスハンバーグソースが。
それに落としたのだって、不可抗力だ。
食事中に生徒の一人がうっかり食器を落として、大きな音が食堂中に響き渡ったのだ。
驚いて思わず体を跳ねさせてしまっても、仕方ないじゃないか。別に、私が間抜けだったからじゃない。
だから、マシェル、お前、そんな生ぬるい視線やめろ……っ! トリエットが指しているのは、多分きっと、おそらく私じゃない……っ!
「なぜ、黙っているんだ?」
「……私がどこに手を置こうと私の自由ですわ。貴方の指示に従う必要性を感じません」
「……手の端から、茶色い染みがはみ出しているぞ」
「っ!?」
「嘘だ」
「っ!」
してやったり。
そんな文字をありありと顔に浮かべて、含み笑いを浮かべるマシェルに口の端が引きつる。
こんの糞メガネがぁああ……っ!
私で遊ぶんじゃねぇっ!!!!
そんな私とマシェルのやり取りをよそに、トリエットはうっとりと夢見るような顔つきで言葉を続ける。
「華やかな美貌。高い演技力。洗練された物腰。深い教養と知識。大貴族の名に相応しい矜持。……誰よりも突出した才を持っていながらも、客観的に観察すれば誰しも気が付いてしまうような、どうしようもなく残念で間が抜けている一面をも持ち合わせている。……そんな人に、私は惹きつけられて仕方ないの。一見相反する要素を同時に持ち合わせて、不自然なく自分の中で融合されている姿こそ、まさに至高。まさに奇跡。何よりも私を魅了する、最高の意外性だわ。そんな意外性を、私は求めているのよ」
「じゃ、じゃあ、僕はそんな意外性を持つ男になります……っ!」
「貴方が?」
ダーザは熱っぽい訴えは、すぐさま鼻で笑い飛ばされる。
「あの人は全て、それを天然でやっているの。計算なく、意図せずにやってのけているの。……そんな意外性、持とうと思って、持てるものじゃないわ。よしんば、持てたとしても、そんな人工的な意外性に、私はときめかないわ。天然と人工……どっちがいいかなんて考えるまでもないもの。――私があの人以上に貴方に惹かれることなんか、きっと永遠にないわ」
……あ、泣く。
トリエットのきつい言葉に、じわりと目元が潤みはじめたダーザに、密かに身構えた。
ダーザはショタキャラだ。そして、ショタキャラというポジションはしばしば、泣き虫にされることがある。
ダーザは13歳。だが、ゲームキャラクターとしてのダーザの中身は、13歳よりも一層幼く描かれていたように思う。
大人しくて、気弱で繊細な少年。些細なことですぐ傷つき、かと言って声を荒げることも、誰かに悲しみを打ち明けることもなく、一人でひっそり涙を流す。ダーザは、そんなキャラだ。
ヒロインであるエンジェとの交流で、徐々に成長して大人に近づいて行くのだが、エンジェとの交流が少ない現状で、ダーザがそこまで大人になっているはずがない。
きっと泣く。絶対泣く。間違いなく泣く。
「――それでも僕は、諦めません」
そう思っていたのに、ダーザが目に溜まった涙を、零すことは無かった。
気を抜けば涙が溢れるであろう目元に力を込め、真っ直ぐにトリエットを見据えながら、ダーザは高らかに言い放つ。
「必ず……必ず貴方に認められるような、そんな男になって見せます……! 貴方が好ましいと思うような、そんな男に……!」
そう言って胸を張るダーザの姿は、私がゲームで知る、大人しくて、気弱で繊細なショタキャラには見えなかった。
それじゃあ、まるで、特定の誰かを指しているみたいじゃないか。
……おい、マシェルよ。何でそこで私を見つめて来るのだ。
「ルクレア」
「……何かしら」
「先程から右腹部に置いている右手をどかしてみろ」
「………」
――だが、断る!
……しょうがないじゃない。全てはしつこ過ぎるハンバーグソースが悪いのだ。ディーネの水魔法でいくら洗浄しても、しっかり染みになって落ちない、ワイン入りデミグラスハンバーグソースが。
それに落としたのだって、不可抗力だ。
食事中に生徒の一人がうっかり食器を落として、大きな音が食堂中に響き渡ったのだ。
驚いて思わず体を跳ねさせてしまっても、仕方ないじゃないか。別に、私が間抜けだったからじゃない。
だから、マシェル、お前、そんな生ぬるい視線やめろ……っ! トリエットが指しているのは、多分きっと、おそらく私じゃない……っ!
「なぜ、黙っているんだ?」
「……私がどこに手を置こうと私の自由ですわ。貴方の指示に従う必要性を感じません」
「……手の端から、茶色い染みがはみ出しているぞ」
「っ!?」
「嘘だ」
「っ!」
してやったり。
そんな文字をありありと顔に浮かべて、含み笑いを浮かべるマシェルに口の端が引きつる。
こんの糞メガネがぁああ……っ!
私で遊ぶんじゃねぇっ!!!!
そんな私とマシェルのやり取りをよそに、トリエットはうっとりと夢見るような顔つきで言葉を続ける。
「華やかな美貌。高い演技力。洗練された物腰。深い教養と知識。大貴族の名に相応しい矜持。……誰よりも突出した才を持っていながらも、客観的に観察すれば誰しも気が付いてしまうような、どうしようもなく残念で間が抜けている一面をも持ち合わせている。……そんな人に、私は惹きつけられて仕方ないの。一見相反する要素を同時に持ち合わせて、不自然なく自分の中で融合されている姿こそ、まさに至高。まさに奇跡。何よりも私を魅了する、最高の意外性だわ。そんな意外性を、私は求めているのよ」
「じゃ、じゃあ、僕はそんな意外性を持つ男になります……っ!」
「貴方が?」
ダーザは熱っぽい訴えは、すぐさま鼻で笑い飛ばされる。
「あの人は全て、それを天然でやっているの。計算なく、意図せずにやってのけているの。……そんな意外性、持とうと思って、持てるものじゃないわ。よしんば、持てたとしても、そんな人工的な意外性に、私はときめかないわ。天然と人工……どっちがいいかなんて考えるまでもないもの。――私があの人以上に貴方に惹かれることなんか、きっと永遠にないわ」
……あ、泣く。
トリエットのきつい言葉に、じわりと目元が潤みはじめたダーザに、密かに身構えた。
ダーザはショタキャラだ。そして、ショタキャラというポジションはしばしば、泣き虫にされることがある。
ダーザは13歳。だが、ゲームキャラクターとしてのダーザの中身は、13歳よりも一層幼く描かれていたように思う。
大人しくて、気弱で繊細な少年。些細なことですぐ傷つき、かと言って声を荒げることも、誰かに悲しみを打ち明けることもなく、一人でひっそり涙を流す。ダーザは、そんなキャラだ。
ヒロインであるエンジェとの交流で、徐々に成長して大人に近づいて行くのだが、エンジェとの交流が少ない現状で、ダーザがそこまで大人になっているはずがない。
きっと泣く。絶対泣く。間違いなく泣く。
「――それでも僕は、諦めません」
そう思っていたのに、ダーザが目に溜まった涙を、零すことは無かった。
気を抜けば涙が溢れるであろう目元に力を込め、真っ直ぐにトリエットを見据えながら、ダーザは高らかに言い放つ。
「必ず……必ず貴方に認められるような、そんな男になって見せます……! 貴方が好ましいと思うような、そんな男に……!」
そう言って胸を張るダーザの姿は、私がゲームで知る、大人しくて、気弱で繊細なショタキャラには見えなかった。
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