乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、ヒロインが鬼畜女装野郎だったので助けてください

空飛ぶひよこ

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ダーザ・オーサムというショタキャラ

ダーザ・オーサムというショタキャラ28

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 ダーザの言葉にトリエットは一瞬驚いたように目を見開くものの、すぐに不機嫌そうに顔を歪めてダーザを睨み付ける。

「……ああ、そう。でも、私はいらないわ」

 感情が篭らない無機質な声で、トリエットは言い放つ。

「貴方の想いなんて、いらない。貴方の想いなんて、知らない。貴方の想いなんて、どうでもいい。だから私に構わないで……っ」

 その言葉に滲んでいるのは、明確な拒絶。
 トリエットはまるで威嚇する猫の様に、フーフーと荒い息を口端から漏らして、全身の毛を逆立てていた。
 発せられた言葉は、ダーザを傷つける意図が明らかに滲んだ、悪意に満ちたものだった。

「――いやです」
 
 けれども、それでも、ダーザは泣かなかった。
 トリエットの言葉にダーザは傷ついた用意一層目元を潤ませながらも、無理矢理笑みを作って首を横に振った。

「貴女が何と言おうと、僕は貴女に話かけ続けます。貴女が例え迷惑だと思ってもやめられません」

「っどうして……!」

「貴女が、好きだから」

 淀むこともなく、あっさりと好意を口にしたダーザは、掴んでいたトリエットの手を、まるで宝物のように握り締める。

「貴女が、好きなんです。どうしようもないくらい、気が付いたら、好きで好きで仕方なくなっていたんです。理由も分からないまま、ただただ貴女のことで、いつだって胸がいっぱいんです。貴女に出会って僕は、生れて初めて、変わりたいと思いました。貴女に好かれる、そんな男になりたいと、そう思ったんです」

 真摯な言葉と共に、向けられる真っ直ぐな視線に、トリエットは目に見えて狼狽える。

「想いに応えなくても、いいです。僕を好きになってとは言いません。……今の僕には言えません。だけどトリエットさん。どうかどうか、貴女に話しかけることを、貴女を想い続けることは許してください」

「……っ」

「貴女の声が聴ける。貴女の姿が見れる。貴女に好きだと、告げることが出来る。……それだけで今の僕は、どうしようもなく満たされるのですから」

 どこまでも真っ直ぐなダーザの告白に、トリエットは言葉に詰まったよう黙り込んだ。

 沈黙が、フロアを支配する。

 そして暫く後、トリエットは向けられる視線からあからさまに視線を逸らすと、わざとらしい溜息を吐いた。

「……馬鹿馬鹿しい」

 やれやれとでも言うように首を横に振って、ダーザに侮蔑の視線を向ける。

「――人の想いを強制することなんて、神様だって出来やしないわ。紡ぐ言葉を、口を塞いで無理矢理抑え込むことも、非力な私には簡単にはできないわ。……許すも許さないもないでしょう」

 トリエットの言葉にダーザは一瞬考えた後、表情を輝かせた。

「それって、それってどういう意味ですか……!?」

「……言わなければ、分からない? やっぱり貴方は阿呆ね」

 そんなダーザを呆れたように横目で見るトリエット。


 ――だが、私は、気付いてしまった。


「好きにすれば? ……私が貴方の想いに応える日なんて永遠に来ないでしょうけど」

 顔色も変えずに、平然と言い放つ、トリエットの、耳。

 その耳だけは、トリエットの内心を伝えるように、真っ赤に染まっていたことに。

「トリエットさん……っ!」

「――お姉様」

 そんなトリエットの言葉に感極まるダーザを丸無視して、トリエットは完全に蚊帳の外だった私に視線を向け、申し訳なさそうに眉尻を下げた。

「お姉様を雑菌保持者と置いて行くのは大変心苦しいのですが、やっぱり私は先に1人でお暇させて頂きます」

「……うん……いや、えと……ええ。分かったわ」

「それじゃあ、後で教室で会いましょう」

「……あ、トリエットさん! 待って下さいよ!」

 若干パニクる私に、早口に別れのあいさつを告げて足早にその場を立ち去って行くトリエットと、慌ててその背を追いかけるダーザ。
 しかし、ダーザは追いかける前に、私にがんつけるのを忘れなかった。

「――負 け ま せ ん か ら」

 ……おかしいな。
 一瞬、草食系ショタキャラのはずのダーザが、何故だか肉食系猛獣に見えたよ。
 殺気を感じました。結構ガチの。

 …何でここで私、ライバルポジション? こんな三角関係、嫌すぎる……っ!


 二人が去って、呆然としたままフロアに置いてかれる私と、マシェル。

「……何というか……すごかったな」

「……すごかったですわね」

 同じ衝撃を受けた同士として、思わずキャラも忘れて、マシェルと二人でこくこくと頷き合う。


 ――デイビッド、あんたは正しい。

 あれ、落とすの、まず無理だわ。




 そして放課後。

 私はざわつく下級生達の間を縫って、一年のフロアに足を運んでいた。
 目指す場所は、成績が貼り出された掲示板。
 既にほとんどの生徒が昼休みのうちに確認し終わったのか、人はまばらにしか集まっていない。
 奨学生に相応しい順位なら、恐らくこの辺だろう。
 そうやって当たりをつけた位置から、名前を確認していき、徐々に徐々に顔をあげていく。
 そしてすっかり首が痛くなった頃、やっとお目当ての名前を見つけた。

 「――あはっ…」

 思わず小さく笑みが漏れた。
 
 有言実行とか、ちょっと格好良すぎんだろう。

 
 主席であるダーザと、同列一位の位置。
 名前の音の都合で、ダーザよりも一つ上に書かれた名前。

 『エンジェ・ルーチェ』

 その名前は、一学年全ての生徒の名前の上、学年の誰よりも一番上の天辺に、どこか誇らしげに堂々と佇んでいた。
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