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ルカ・ポアネスという不良
ルカ・ポアネスという不良5
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「―レア……ルクレア!」
別棟での用事を終えて(精霊学の教師から、人型の高位精霊を四体も従えてるなんて滅多にないことだからと、定期的に研究室まで呼び出されて話に付き合わされるのだ。なお、精霊学の教師は後退した生え際から続くおでこが眩しい54歳既婚男性であり、ゲームではチラッとも出現しなかったと注釈しておこう。……あんなオッサンが出てくる乙女ゲーはいやだ)、帰宅の路につこうとただ足を進めることに没頭していた私は、不意に掛けられた声に我に返った。
顔をあげれば、そこにいるのは予想通りの人物。
「……マシェル……はぁ……」
「……私の顔を見るなり溜め息を吐くとは、ずいぶんな対応だな」
だって最早典型パターンだもの。
攻略キャラとの接触のタイミングでマシェルが関わってくるのは。
……まあ、今回は先にルカの方が関わってきたけどさ。
絶対、今日中にマシェルが絡んでくると思ってたよ。このまま普通に帰宅できるわきゃないって。
……絶対なんかの陰謀だよね。これ。
しいていうなら、乙女ゲームを現実世界にしやがった、どっかの神様あたりの。
「……一体何の用でございますの? 私は忙しいの。貴方の訳が分からないお遊びに付き合っている暇なんかないですわ」
高飛車に言い放って、つんと顔を背ける。
実際、今の私にはマシェルのことに気持ちを割ける余裕なんかない。
気を抜けば沸き上がってくる、自分でも理由が分からない、焦燥感やら不安感やらを押さえ込むのにいっぱいいっぱいだ。この上さらにマシェルから揺さぶりを掛けられたりなんかしたら、完全に脳みそがパンクしてしまう。
どうか、私に構ってくれるな、マシェル。せめて、今、今日だけは。
明日になったら、完全に、いつもの私に戻っているから。
どうか、私の心を掻き乱さないでくれ。
しかし、そんは私の切実な願いは、残念ながらマシェルには通じなかったらしい。
「――ずいぶん、ひどい顔をしているな」
くいっ
効果音をつけるなら、まさにそれが相応しい。
アゴを掴まれ、振り払う暇もなく正面を向かされた途端に視界に入るのは、マシェルのサファイア色の瞳。
……わぁい。美形のアップだあ~。眼福。眼福。
マシェルは性格はあれだけど、顔は良いから、眼の保養だわ~。
――じゃねぇぇえっっ!
え、顎掴んで、至近距離で顔覗きこむとか、何しちゃってんの、こいつ!?
てか、今、私の顔がひどいとか、失礼過ぎること言わんかった!?
「い、いきなり何をなさるの!?」
「ふん……ちょっとはマシな顔になったな」
相変わらず話を聞かないマシェルは、一人で思案気に頷くと、顎から離した手で私の腕を握る。
「――行くぞ、ルクレア」
「きゃあ! ……ちょ、どこに連れて行く気ですの!?」
私の言葉を完全に無視して、マシェルはそのまま私をずるずると引き摺って行く。
……この引き摺られていく感じ、なんだかとってもデジャブなんですがぁあああ!
優美で繊細な細工が施された、透明度が高いガラスの器の中に、艶やかな赤いソースと共に敷き詰められた、サイコロ状のスポンジ。
その上に、緩やかな螺旋状を描いてこんもりと載せられた、生クリーム。
その生クリームの上にびっしり敷き詰められた、まるでルビーのように輝くイチゴたち。
「……一体なんですの」
「イチゴパフェだな」
そう返すマシェルの手には二段重ねで器に盛られたアイスクリーム。
……ちょっと氷属性でアイスとか似合いすぎんだろ。
しかもアイスが、チョコミントなところがまた…。人によってはチープに見えるアイスだけど、ただ甘くないところがマシェルにぴったりだな。
水色の髪との相性も含めて。
「……そういうことではありませんわ」
私は目の前の20㎝はあろう、大きなパフェから目を逸らし、マシェルを睨み付ける。
「何故私と貴女がこんなところで、一緒にお茶をする展開になっているのかしらと、そう聞いているのですわ!」
学園の食堂に隣接した、カフェテリア。
何故かそのカフェにおける窓際のVIP席で、私とマシェルはそれぞれデザートを脇に、向かい合って座っていた。
別棟での用事を終えて(精霊学の教師から、人型の高位精霊を四体も従えてるなんて滅多にないことだからと、定期的に研究室まで呼び出されて話に付き合わされるのだ。なお、精霊学の教師は後退した生え際から続くおでこが眩しい54歳既婚男性であり、ゲームではチラッとも出現しなかったと注釈しておこう。……あんなオッサンが出てくる乙女ゲーはいやだ)、帰宅の路につこうとただ足を進めることに没頭していた私は、不意に掛けられた声に我に返った。
顔をあげれば、そこにいるのは予想通りの人物。
「……マシェル……はぁ……」
「……私の顔を見るなり溜め息を吐くとは、ずいぶんな対応だな」
だって最早典型パターンだもの。
攻略キャラとの接触のタイミングでマシェルが関わってくるのは。
……まあ、今回は先にルカの方が関わってきたけどさ。
絶対、今日中にマシェルが絡んでくると思ってたよ。このまま普通に帰宅できるわきゃないって。
……絶対なんかの陰謀だよね。これ。
しいていうなら、乙女ゲームを現実世界にしやがった、どっかの神様あたりの。
「……一体何の用でございますの? 私は忙しいの。貴方の訳が分からないお遊びに付き合っている暇なんかないですわ」
高飛車に言い放って、つんと顔を背ける。
実際、今の私にはマシェルのことに気持ちを割ける余裕なんかない。
気を抜けば沸き上がってくる、自分でも理由が分からない、焦燥感やら不安感やらを押さえ込むのにいっぱいいっぱいだ。この上さらにマシェルから揺さぶりを掛けられたりなんかしたら、完全に脳みそがパンクしてしまう。
どうか、私に構ってくれるな、マシェル。せめて、今、今日だけは。
明日になったら、完全に、いつもの私に戻っているから。
どうか、私の心を掻き乱さないでくれ。
しかし、そんは私の切実な願いは、残念ながらマシェルには通じなかったらしい。
「――ずいぶん、ひどい顔をしているな」
くいっ
効果音をつけるなら、まさにそれが相応しい。
アゴを掴まれ、振り払う暇もなく正面を向かされた途端に視界に入るのは、マシェルのサファイア色の瞳。
……わぁい。美形のアップだあ~。眼福。眼福。
マシェルは性格はあれだけど、顔は良いから、眼の保養だわ~。
――じゃねぇぇえっっ!
え、顎掴んで、至近距離で顔覗きこむとか、何しちゃってんの、こいつ!?
てか、今、私の顔がひどいとか、失礼過ぎること言わんかった!?
「い、いきなり何をなさるの!?」
「ふん……ちょっとはマシな顔になったな」
相変わらず話を聞かないマシェルは、一人で思案気に頷くと、顎から離した手で私の腕を握る。
「――行くぞ、ルクレア」
「きゃあ! ……ちょ、どこに連れて行く気ですの!?」
私の言葉を完全に無視して、マシェルはそのまま私をずるずると引き摺って行く。
……この引き摺られていく感じ、なんだかとってもデジャブなんですがぁあああ!
優美で繊細な細工が施された、透明度が高いガラスの器の中に、艶やかな赤いソースと共に敷き詰められた、サイコロ状のスポンジ。
その上に、緩やかな螺旋状を描いてこんもりと載せられた、生クリーム。
その生クリームの上にびっしり敷き詰められた、まるでルビーのように輝くイチゴたち。
「……一体なんですの」
「イチゴパフェだな」
そう返すマシェルの手には二段重ねで器に盛られたアイスクリーム。
……ちょっと氷属性でアイスとか似合いすぎんだろ。
しかもアイスが、チョコミントなところがまた…。人によってはチープに見えるアイスだけど、ただ甘くないところがマシェルにぴったりだな。
水色の髪との相性も含めて。
「……そういうことではありませんわ」
私は目の前の20㎝はあろう、大きなパフェから目を逸らし、マシェルを睨み付ける。
「何故私と貴女がこんなところで、一緒にお茶をする展開になっているのかしらと、そう聞いているのですわ!」
学園の食堂に隣接した、カフェテリア。
何故かそのカフェにおける窓際のVIP席で、私とマシェルはそれぞれデザートを脇に、向かい合って座っていた。
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