乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、ヒロインが鬼畜女装野郎だったので助けてください

空飛ぶひよこ

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ルカ・ポアネスという不良

ルカ・ポアネスという不良6

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「運がいいな。今日はたまたま残っていたが、数量限定の為、普段はこの時間には売り切れている品らしいぞ。出来てすぐ食べるのが一番美味らしいから、早く食べてみろ」

 ……聞いてやしねぇ。

 思わず口端が引きつった。ホント、話聞かないよな、こいつ……。

 溜息と共に、視線をマシェルから、目の前のイチゴパフェに移す。

 ……てか、正直そんなに嬉しくもないんだよな。そんな特別なイチゴパフェ奢られても。お金なんか、それこそ売るほど持っているしさ。

 甘いものが嫌いってわけではないけど、私は辛党だから(この世界では飲酒の解禁は16歳からなので、今の私がお酒を嗜んでも合法ですのよ? おほほほほ)そこまで甘いものにときめいたりはしない。

 ……20㎝くらいあるイチゴパフェとか、とんでもなく糖分とカロリーと脂肪分高そう……。

 ダイエットいらず、スキンケアいらずの、ハイスペックルクレアボディでも、流石にこれは受け付けないんではなかろうか。
 嫌だぞ。おでぶちん&オイリーニキビ面のルクレア・ボレアなんて。ボレア家のプライドを掛けて認められん……っ!
 勿体無いけど、ある程度食べたら、残りは何とかしてマシェルか、その辺の一般生徒にでも押し付けるか……。

 取りあえず、付属のスプーンで上側の生クリームとイチゴだけ掬って、口に運んでみる。

 ……あれ、思ったより、さっぱりしてるな。

 この世界で植物系生クリームが存在しているの事態分からないし、しっかり牛乳の味はするから動物性生クリームで間違いないんだけど、べたべたと口に残る脂肪のくどさが全くない。ボウルいっぱい生クリームだけ渡されたとしても、食べきれそうなくらいすっきりした口当たりだ。

 そしてイチゴは、金持ちご用達の学園のカフェだけあって、流石にいいもの使っている。青臭くもなく、熟しすぎもせず、ちょうどいい酸味と甘みのバランスが整ったイチゴだ。表面の粒々も口壁や歯に絡んで残ったりせず、噛み砕いた果肉はすんなりと口内を移動して喉へと落ちていく。

 うん、悪くないな。なかなか美味しい。

 今度は、下の、イチゴソースが絡んだダイス型のスポンジを、生クリームとイチゴと一緒に口に運んでみる。
 食べた瞬間、頭を金槌で殴られたような、雷撃に直撃されたような、激しい衝撃が、全身を走った。

 カッと目を見開き、無意識に唇から言葉が漏れた。

「――……美味しい……」


 ――何これ、超美味ぇえええ!!!


 イチゴも美味しい。
 生クリームも美味しい。

 だが、私に衝撃を与えたのは、下に敷き詰められた、スポンジの存在だった。
 パフェの主役は、上層部。下に敷き詰められた素材は、単なる添え物。
 そんな、私の中の常識が、このパフェを口にした瞬間完全に覆された。

 土台となるダイス型のスポンジは、角切りにされた後で恐らく表面をバーナーか何かで炙られたのか、コーンフレークのようなカリッとした歯ごたえを持っていて香ばしい。
 だが中の生地はふんわり柔らかく、外はカリッと、中はしっとりの、歯ごたえの対比を愉しめる。

 そして噛み砕いた瞬間、口いっぱいに広がる、卵の風味。甘さ控えめのプリンもしくは、カスタードを食べているかのようだ。
 それだけでは少々味がぼやけるところを、掛けられた酸味が強めのイチゴソースがきりりと味を引き締めている。

 あぁ、確かにこの触感は出来たてじゃなければ味わえないだろう。
 時間が経てば、イチゴソースや生クリームが染みこみ、この歯ごたえは無くなってしまう。

 そこに、さっぱりとした生クリームと、瑞々しい自然のままのイチゴの果肉が加わった味ときたら、もう……!

 もう、なんて言い表せばいいか分からない程、どうしようもなく、美味しい……っ!



 ――それからは、夢中だった。

 下品にならない程度に黙々とパフェを口に運び、時間が経つほどに変化していくスポンジの触感を愉しみ、最後の一口まで、丁寧に、丁寧にスプーンで掬い取って



 気が付いた時には、あれほど巨大だったパフェを、すっかり完食していた。


「……ふぅ」

 至福の溜め息を漏らしながら、食後に運ばれたコーヒーを口に運ぶ。
 丁寧に最高級の豆を使ったブラックコーヒーは、口内に残ったパフェの後味と相まって、また新たな美味を口内に生み出す。

『口福』

 それは、まさに今の状況を指すのだろう。
 口元には自然に笑みが漏れ出る。

 なんと、幸せなのだろう……。神様に感謝したい……!



「――随分いい顔になったじゃないか」

 そんな私を眺めながら、愉しげな笑みを浮かべて頬杖をつくマシェルの姿に、ハッとする。


 気が付けばあれほど私を苛んでいた胸のもやもやは、綺麗さっぱり消え去っていた。
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