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ルカ・ポアネスという不良
ルカ・ポアネスという不良7
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甘いものは、脳を落ち着かせる。
改めてその効力を実感する。
「……まぁまぁですわね」
私は脂下がった顔を慌てて引き締めて、優雅にコーヒーを啜りなおす。
……マシェルその何もかも見通してますみたいな顔、とってもムカつくんで殴っても良いでしょうか?
ああ、確かに美味しかったさ。
夢中で食べてたさ。
素直に言えないけど、内心こんな美味しいパフェを食べさせてくれたマシェルには、心から感謝してるさ!
口が裂けても認めないけど!
しかし、何故マシェルに私が不安定なことバレたし。
貼りつけたルクレア・ボレアの仮面は一応完璧だったはずなんだが……。まあルクレア・ボレア(不機嫌モード)だったことは否めないとして。
「――どうして私が、お前が元気がないことに気が付いたのかと、そう思っているだろ」
マシェルの言葉にドキリと心臓が跳ねる。
お前はサトリか。
勝手に人の心、読まないでくれ。
「……そもそも私は落ち込んでなんか……」
「落ち込んでいただろ? お前は完璧に取り繕っていたつもりかもしれないが、見るものが見れば分かるぞ」
そう言ってマシェルは自身もコーヒーを口に運びながら、口元を綻ばせた。
「……ここ最近はずっとお前を見てたからな。些細な変化だってすぐ分かる」
「ごふっ……」
コ、コーヒーが、コーヒーが器官に……! 入ってはいけない場所に……!
ちょ、待って! 鼻からコーヒーだけは。鼻からコーヒーだけは避けねば……っ!
「大丈夫か?」
「……だ……大丈夫ですわ……」
誰のせいだと思っているんだ。
慌ててナプキンで口元周辺を抑えて、何とか最悪の事態は避ける。
……さらっと口説き文句、もしくはストーカー発言してくるな。こいつは。
………いや、違う。違うよ、私。
これはフェイクなのだ。本命であるトリエットを攻略するために、将を射んとすればまず馬を射よの精神で、私にアプローチをかけているだけなんだ。
今や、ダーザという強力なライバルも生まれてしまった。それ故、形振り構っていられず、こんな言動に及んでいるのだ。そうに違いない。
動揺を抑え込むべく、呪文のように胸中で繰り返す。
マシェルはトリエットが好き。マシェルはトリエットが好き。マシェルはトリエットが好き。
……ふう。だいぶ気持ちが落ち着いてきた。
「――そう言えばマシェル、貴方は武術大会への出場は考えているのかしら?」
変なムードを誤魔化す為、私は全く別の話題をマシェルに振る。
せっかくの機会だ。武術大会について情報を集めておくとするか。……もしかしたら、それが、デイビッドの役に立つかもしれないし。
私の言葉にマシェルは怪訝そうに片眉をあげた。
「出るはずがないだろう。あれは戦闘特化コースのみの出場が暗黙の了解になっている。文官コースの私が出ても、場違いなだけだ」
「……まぁ、そうですわよね」
聞いておいてあれだが、解答は想定通りだった。
この学園には、講義内容が一部異なるコースが4つ存在する。
一つ目は、一般貴族コース。私やトリエットは所属するのは、このクラスだ。領主の事業に関することや、貴族として必要な礼儀作法、一般常識を身につけるカリキュラムが大半を占める。魔法の講義や、選択によっては武術を学ぶことも出来るが、あくまでそれは一般教養の一つでしかない。前世における体育の授業の様なものだ。
二つ目は、商業特化コース。一般貴族コースに較べて、経済学や商法などの重点が置かれた講義が成される。貴族の次男、三男など、家を継ぐことよりも寧ろ自力で商売を始めることが推奨される生徒がこのコースを選択する。キエラは確か、このコースだ。庶民の市場に調査に行ったり、裕福な商人を招いて講義を頼んだりと、学園の中では比較的市井に近いコースである。
三つ目は、文官コース。王宮勤めを目指すものが所属するコースだ。マシェルとオージン、デイビッド、ダーザが所属する。文官として必要な、小難しいスキルを色々学習するらしいのだが……いかんせん、城勤め等最初からする気がない私には、興味がなくてどんな講義が行われているのか、さっぱりである。
……商業コースは、億が一ボレア家が没落した可能性考えたりして、ちょっと興味を持ってたから(ボレア家の直系長女らしくないと、さすがに両親に止められた)ある程度は知っているんだが……。まぁ、マシェルのような頭がちがち人間を作るコースだと思おう。
最後の一つが、戦闘特化コース。武官や魔術師を目指す人が所属するコースだ。他のキャラは、全部ここ。講義内容に関しては……まぁ、説明するまでもないか。魔術や武術の講義の特化している。
先日のようなテストは全コース共通の講義から作られて、全学年の順位を決めるが、コースごとに、各コースの講義のテストもまた別に存在する。学年テストでは落ちこぼれでも、コースのテストでは最優秀をとる生徒もいるので、一概にあの結果だけで力量は測れなかったりする。
そして武術大会は、どのコースの生徒でも出場権を持つものの、実質は戦闘特化コースのイベントとなってしまっている。
肉弾戦オンリーではなく、魔法も使用可なので、別に他のコースの生徒が出てもそれなりに成果を出せるとは思うのだが、やっぱり場違い感が半端無い。完全実力主義の戦闘特化コースと違って、身分に関する意識も強いし。大貴族を下級貴族の分際で!
…なんて実力もないのに吼える勘違い生徒はけして少なくないのだから。
……まぁ武術大会の前に、何が起こっても自己責任という魔術誓約書は書かされるから問題にはならんと思うけど。
デイビッドは文官コース(しかも女性……と思われている)だから本来は場違いなはずなんだけど……まぁ、デイビッドだしな。場違いなんか気にするたまじゃないか。ないな。
「――だけど、今回はその他のコースからの出場も増えるだろうな」
「え」
マシェルは肩を竦めながら、予想外の言葉を放った。
「去年は出場しなかったルカ・ポアネスが、今回は出場するらしいからな」
なぜ、ここでルカ・ポアネスの名前が?
改めてその効力を実感する。
「……まぁまぁですわね」
私は脂下がった顔を慌てて引き締めて、優雅にコーヒーを啜りなおす。
……マシェルその何もかも見通してますみたいな顔、とってもムカつくんで殴っても良いでしょうか?
ああ、確かに美味しかったさ。
夢中で食べてたさ。
素直に言えないけど、内心こんな美味しいパフェを食べさせてくれたマシェルには、心から感謝してるさ!
口が裂けても認めないけど!
しかし、何故マシェルに私が不安定なことバレたし。
貼りつけたルクレア・ボレアの仮面は一応完璧だったはずなんだが……。まあルクレア・ボレア(不機嫌モード)だったことは否めないとして。
「――どうして私が、お前が元気がないことに気が付いたのかと、そう思っているだろ」
マシェルの言葉にドキリと心臓が跳ねる。
お前はサトリか。
勝手に人の心、読まないでくれ。
「……そもそも私は落ち込んでなんか……」
「落ち込んでいただろ? お前は完璧に取り繕っていたつもりかもしれないが、見るものが見れば分かるぞ」
そう言ってマシェルは自身もコーヒーを口に運びながら、口元を綻ばせた。
「……ここ最近はずっとお前を見てたからな。些細な変化だってすぐ分かる」
「ごふっ……」
コ、コーヒーが、コーヒーが器官に……! 入ってはいけない場所に……!
ちょ、待って! 鼻からコーヒーだけは。鼻からコーヒーだけは避けねば……っ!
「大丈夫か?」
「……だ……大丈夫ですわ……」
誰のせいだと思っているんだ。
慌ててナプキンで口元周辺を抑えて、何とか最悪の事態は避ける。
……さらっと口説き文句、もしくはストーカー発言してくるな。こいつは。
………いや、違う。違うよ、私。
これはフェイクなのだ。本命であるトリエットを攻略するために、将を射んとすればまず馬を射よの精神で、私にアプローチをかけているだけなんだ。
今や、ダーザという強力なライバルも生まれてしまった。それ故、形振り構っていられず、こんな言動に及んでいるのだ。そうに違いない。
動揺を抑え込むべく、呪文のように胸中で繰り返す。
マシェルはトリエットが好き。マシェルはトリエットが好き。マシェルはトリエットが好き。
……ふう。だいぶ気持ちが落ち着いてきた。
「――そう言えばマシェル、貴方は武術大会への出場は考えているのかしら?」
変なムードを誤魔化す為、私は全く別の話題をマシェルに振る。
せっかくの機会だ。武術大会について情報を集めておくとするか。……もしかしたら、それが、デイビッドの役に立つかもしれないし。
私の言葉にマシェルは怪訝そうに片眉をあげた。
「出るはずがないだろう。あれは戦闘特化コースのみの出場が暗黙の了解になっている。文官コースの私が出ても、場違いなだけだ」
「……まぁ、そうですわよね」
聞いておいてあれだが、解答は想定通りだった。
この学園には、講義内容が一部異なるコースが4つ存在する。
一つ目は、一般貴族コース。私やトリエットは所属するのは、このクラスだ。領主の事業に関することや、貴族として必要な礼儀作法、一般常識を身につけるカリキュラムが大半を占める。魔法の講義や、選択によっては武術を学ぶことも出来るが、あくまでそれは一般教養の一つでしかない。前世における体育の授業の様なものだ。
二つ目は、商業特化コース。一般貴族コースに較べて、経済学や商法などの重点が置かれた講義が成される。貴族の次男、三男など、家を継ぐことよりも寧ろ自力で商売を始めることが推奨される生徒がこのコースを選択する。キエラは確か、このコースだ。庶民の市場に調査に行ったり、裕福な商人を招いて講義を頼んだりと、学園の中では比較的市井に近いコースである。
三つ目は、文官コース。王宮勤めを目指すものが所属するコースだ。マシェルとオージン、デイビッド、ダーザが所属する。文官として必要な、小難しいスキルを色々学習するらしいのだが……いかんせん、城勤め等最初からする気がない私には、興味がなくてどんな講義が行われているのか、さっぱりである。
……商業コースは、億が一ボレア家が没落した可能性考えたりして、ちょっと興味を持ってたから(ボレア家の直系長女らしくないと、さすがに両親に止められた)ある程度は知っているんだが……。まぁ、マシェルのような頭がちがち人間を作るコースだと思おう。
最後の一つが、戦闘特化コース。武官や魔術師を目指す人が所属するコースだ。他のキャラは、全部ここ。講義内容に関しては……まぁ、説明するまでもないか。魔術や武術の講義の特化している。
先日のようなテストは全コース共通の講義から作られて、全学年の順位を決めるが、コースごとに、各コースの講義のテストもまた別に存在する。学年テストでは落ちこぼれでも、コースのテストでは最優秀をとる生徒もいるので、一概にあの結果だけで力量は測れなかったりする。
そして武術大会は、どのコースの生徒でも出場権を持つものの、実質は戦闘特化コースのイベントとなってしまっている。
肉弾戦オンリーではなく、魔法も使用可なので、別に他のコースの生徒が出てもそれなりに成果を出せるとは思うのだが、やっぱり場違い感が半端無い。完全実力主義の戦闘特化コースと違って、身分に関する意識も強いし。大貴族を下級貴族の分際で!
…なんて実力もないのに吼える勘違い生徒はけして少なくないのだから。
……まぁ武術大会の前に、何が起こっても自己責任という魔術誓約書は書かされるから問題にはならんと思うけど。
デイビッドは文官コース(しかも女性……と思われている)だから本来は場違いなはずなんだけど……まぁ、デイビッドだしな。場違いなんか気にするたまじゃないか。ないな。
「――だけど、今回はその他のコースからの出場も増えるだろうな」
「え」
マシェルは肩を竦めながら、予想外の言葉を放った。
「去年は出場しなかったルカ・ポアネスが、今回は出場するらしいからな」
なぜ、ここでルカ・ポアネスの名前が?
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