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アルク・ティムシーというドエム
アルク・ティムシーというドエム1
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生まれて18年間、俺は女性に対して特別な関心を持つことが無かった。
それは俺が同性愛者だとかそういうわけではけしてなく。
武を極めようとするものが、恋愛になぞに現を抜かすわけにはいかないという、そんな考え故にだった。
女を口説く暇があったら、その時間を鍛錬に費やして、少しでも強くなりたい。恋愛事なんて、修行中の身の俺には、時期尚早過ぎる。
大体女性というのは繊細で脆い生き物だ。俺の様な力加減も分からぬ朴念仁が、易々と扱える存在ではない。
戦闘を得意とする女性も、皆無というわけではないが、それでもやっぱり、女性は女性。男尊女卑をするわけではないが、やはり力では俺には敵わない以上、対等に見ることは出来ない。
女性とはやはり、弱くて守らないといけない生き物なのだ。俺が少し力加減を間違ったら、簡単に怪我をしてしまうやもしれない女性に、必要以上に近づいてはいけないと、ずっとそう思っていた。
だから、食堂で倒れそうになった女性を、咄嗟に抱え込んだ際、突然入れられた肘鉄に衝撃を受けた。
容赦ない一撃は、男のそれ以上に強烈な攻撃力を持っていた。そして、その肘鉄が入った位置も、驚くほど的確な急所を捉えていた。
こんな肘鉄が出来る女性が、世の中に存在したなんて。
どくんと、心臓が高鳴った。
「なんて、的確に容赦なく人体の急所を攻撃する人なんだ。……イイ」
思わず口にしてしまった一言に、女性はゴミでも見るような蔑んだ瞳を向けてきたが、その瞳に俺の心は一層高揚した。
もっと、そんな冷たい目で俺を見つめて欲しい。
罵って痛めつけて欲しい。この人相手なら、きっとそれもまた、鍛錬の一つにもなるに違いないし。
ああ、この人を主と仰ぎ、頭を垂らすことが出来たら、それはどんなに素晴らしいことだろうか!
そんじゃそこらの男では敵わないほどの戦闘能力を所有する、この人を!
「貴女こそ、俺が求めていた理想の女王様だ……っ! もっと、もっと俺を痛めつけてくださいっ!」
思わず公衆の面前で叫んでしまった俺の脳天に、落ちて来た踵落とし……これも非常に素晴らしかった。
意識が朦朧とする中、俺は胸の中に芽生えた初恋が、一層確固たるものへと変わって行くのを感じていた。
――あぁ、なんて強くて美しい女性なんだ。エンジェ・ルーチェ嬢。
俺の天使……否、女王様。
俺は貴女の、下僕になりたい。
元の世界には、ストックホルム症候群という言葉が存在した。
語源は確か、ストックホルムで起きた銀行強盗人質立てこもり事件。
人質であった人たちは、警察よりも犯人に傾倒するようになり、人質の一人は何と犯人と結婚までしてしまったという。
極限状態で人間は、自己防衛の為、自身に害を成すかもしれない存在に依存じみた妄執を抱くことがある。
しかしそれはあくまで、錯覚、洗脳の様に作られた感情であるのだ。
……なるほど、多分、そういう事なのだろう。
私は、主従契約などという契約を無理矢理結ばれた自分自身の心を守る為に、ストックホルム症候群がごとき感情をデイビッドに抱くようになったのだ。
契約によってではなく、恋をしているから彼に従うのだと、そう思った方が自身の心の安寧を測れると、脳がそうやって判断したに過ぎない。
全部錯覚。作られた感情。
そう、だから私は本当の意味で、デイビッドに恋しているじゃないんだ。
そう、だから……。
「エンジェ・ルーチェ嬢! どうか来週末の舞踏会で俺のパートナーになって下さい! ……あと、蹴って下さい!!」
……だから今、デイビッドにダンスのパートナーを申し込むアルクがムカついてムカついて仕方ないのも、全部ストックホルム症候群のせいなんだよぉおおお!!!
ああ、頬を染めてその場に膝をつきながら、突然何抜かしやがったいるんだ、この変態は……!
寄るな、見るな、声を掛けるな。
――デイビッドから離れろ、ドエム野郎っっっ!!!
それは俺が同性愛者だとかそういうわけではけしてなく。
武を極めようとするものが、恋愛になぞに現を抜かすわけにはいかないという、そんな考え故にだった。
女を口説く暇があったら、その時間を鍛錬に費やして、少しでも強くなりたい。恋愛事なんて、修行中の身の俺には、時期尚早過ぎる。
大体女性というのは繊細で脆い生き物だ。俺の様な力加減も分からぬ朴念仁が、易々と扱える存在ではない。
戦闘を得意とする女性も、皆無というわけではないが、それでもやっぱり、女性は女性。男尊女卑をするわけではないが、やはり力では俺には敵わない以上、対等に見ることは出来ない。
女性とはやはり、弱くて守らないといけない生き物なのだ。俺が少し力加減を間違ったら、簡単に怪我をしてしまうやもしれない女性に、必要以上に近づいてはいけないと、ずっとそう思っていた。
だから、食堂で倒れそうになった女性を、咄嗟に抱え込んだ際、突然入れられた肘鉄に衝撃を受けた。
容赦ない一撃は、男のそれ以上に強烈な攻撃力を持っていた。そして、その肘鉄が入った位置も、驚くほど的確な急所を捉えていた。
こんな肘鉄が出来る女性が、世の中に存在したなんて。
どくんと、心臓が高鳴った。
「なんて、的確に容赦なく人体の急所を攻撃する人なんだ。……イイ」
思わず口にしてしまった一言に、女性はゴミでも見るような蔑んだ瞳を向けてきたが、その瞳に俺の心は一層高揚した。
もっと、そんな冷たい目で俺を見つめて欲しい。
罵って痛めつけて欲しい。この人相手なら、きっとそれもまた、鍛錬の一つにもなるに違いないし。
ああ、この人を主と仰ぎ、頭を垂らすことが出来たら、それはどんなに素晴らしいことだろうか!
そんじゃそこらの男では敵わないほどの戦闘能力を所有する、この人を!
「貴女こそ、俺が求めていた理想の女王様だ……っ! もっと、もっと俺を痛めつけてくださいっ!」
思わず公衆の面前で叫んでしまった俺の脳天に、落ちて来た踵落とし……これも非常に素晴らしかった。
意識が朦朧とする中、俺は胸の中に芽生えた初恋が、一層確固たるものへと変わって行くのを感じていた。
――あぁ、なんて強くて美しい女性なんだ。エンジェ・ルーチェ嬢。
俺の天使……否、女王様。
俺は貴女の、下僕になりたい。
元の世界には、ストックホルム症候群という言葉が存在した。
語源は確か、ストックホルムで起きた銀行強盗人質立てこもり事件。
人質であった人たちは、警察よりも犯人に傾倒するようになり、人質の一人は何と犯人と結婚までしてしまったという。
極限状態で人間は、自己防衛の為、自身に害を成すかもしれない存在に依存じみた妄執を抱くことがある。
しかしそれはあくまで、錯覚、洗脳の様に作られた感情であるのだ。
……なるほど、多分、そういう事なのだろう。
私は、主従契約などという契約を無理矢理結ばれた自分自身の心を守る為に、ストックホルム症候群がごとき感情をデイビッドに抱くようになったのだ。
契約によってではなく、恋をしているから彼に従うのだと、そう思った方が自身の心の安寧を測れると、脳がそうやって判断したに過ぎない。
全部錯覚。作られた感情。
そう、だから私は本当の意味で、デイビッドに恋しているじゃないんだ。
そう、だから……。
「エンジェ・ルーチェ嬢! どうか来週末の舞踏会で俺のパートナーになって下さい! ……あと、蹴って下さい!!」
……だから今、デイビッドにダンスのパートナーを申し込むアルクがムカついてムカついて仕方ないのも、全部ストックホルム症候群のせいなんだよぉおおお!!!
ああ、頬を染めてその場に膝をつきながら、突然何抜かしやがったいるんだ、この変態は……!
寄るな、見るな、声を掛けるな。
――デイビッドから離れろ、ドエム野郎っっっ!!!
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