夢のような日々

てくたいと

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スターチスの夢

カカオ

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 葵と待ってどれほどか、あまりに短く感じた物だから、少し驚いてしまった。
 見慣れた金髪の女に、コードの垂れたままヘッドホンを付ける女。それに挟まれた黒髪の男は、喜ぶでも面倒くさがるでもなく、ただ真っ直ぐと帰ってくる。
 ヘッドホンの女がリーダーだと言ったら、正道はどれほど驚くだろうか。
「ただいま、虎鉄。何か変わった事はあったかな?」
 ヘッドホンのをズラすでもなく聞いてくる立ち居振る舞いは、まさしく自己中心的。この女を表す言葉にそれ以上の言葉は要らない。
 正道も一緒に居るのなら既に分かっているはずだ。
「おかえりリーダー。新しい仲間ができたくらいかねぇ」
 正道を見てそう言ってやるが、反応らしい反応もない。もう聞いていたのなら、つまらない限りだ。
「まぁ、クロが使えると判断したなら、最悪使い捨てる程度には価値があるだろうさ」
 リーダーも正道に顔を向け、それを見たキンも真似をするように顔を向ける。流石に、無言で居られないだろう。
「何を言っても笑いは取れない空気だね、分かってるよ」
 正道は観念したのか、左右を見てからこちらを確認し、肩をすくめて見せた。
「新人いびりは良くないなぁ。仲良くしなきゃダメじゃないかなぁ?」
 正道の反応を見てすぐ、葵にしかかられた。クッションは控えめでも、後頭部は幸福感を否応なく発信している。
「そうだぞ虎鉄。使い捨てにするなんて酷い言い草だ」
「どうやら、まともな人は貴女だけみたいですね。いや、人なのかは微妙かな」
 リーダーの言葉を聞いてすぐ、葵は指名されて小首を傾げた。そして、少しの間を置いてから俺の背中から離れる。
「私は葵。こんな見てくれだけど、なるべく媚は売っといた方がいいよ? ヒラだけど、リーダーの次に偉い人だからね?」
 葵は腰の高さで両手を繋ぐと、前屈みに正道へと歩み寄って行く。三歩ほどで触れ合う距離で立ち止まると、悪戯っぽく笑顔を作りながら正道を見上げた。
 いわゆるマウンティングをしたいのだろう。しかし、それはあまりにも幼稚で、どちらかと言えば甘えるような仕草に見えた。
 そういう物を見ると、無意識に眉根を寄せてしまう。
「ふむ……すいません葵さん。まだ組織に加入して半日ほどで、右も左も分からないのです。ぜひ、手ほどきの程をお願いします」
 正道は考える素振りをわざとらしくすると、急に跪いて語り出した。その仕草や声音はまさに完璧と呼べる物で、演技らしさを微塵も感じられない。
「うぇ、え、あー、はい?」
 葵もどう返せばいいのか分からず、素っ頓狂な声をあげている。助け舟を出してやるべきかとも思ったが、恐らく喧嘩腰になるのでやめておいた。
「正道君の趣味には興味ないけど、葵と虎鉄は恋人だから。揉め事は起こさないでね?」
「はは、冗談キツイ」
 リーダーからの言葉に真顔で笑ってみせる。どういう意味で言ったのかは邪推するべきではないのだろう。
 リーダーは建物の中へと入っていき、他の三人もそれに続いて行く。
「キン、少しいいか?」
 最後尾でついて行く背中に声をかけると、返事はしないまま振り向いた。コイツはコイツでよく分からないが、素直なところはありがたい。
「アイツ、どうだったよ」
 こちらの質問に対して、キンは何の反応も示さない。こういう時は考えているだけで、分からない時には何かしらの言葉が返ってくる。
 返事に困る事は予想できていたから、ただ気長に返事を待った。
「……変なやつだな。私にはアイツが分からない」
 キンは、困ったように返事を選んだ。正道が放浪者に会ってどうしたか、それを見た上で分からない。オマケに変ときたら、キンには測れない相手だったのだろう。
 よほど常識外れな言動を見せたか、底の知れないやつだったか。何にせよやはり自分で見ないと分からないのだろう。
「そうか。引き止めて悪かったな」
 キンは返事を聞くと踵を返し、何も言わずに中へと入っていった。
「……なんだかねぇ」
 嫌な感触は拭えないまま、呼ばれる前にキンの後を追う事にした。これが杞憂である事を、漠然と願うばかりだ。
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