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第十七話 進歩
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「お姉ちゃん、お帰り!」
「わっ!・・・ただいま、由衣ちゃん」
由衣はギルドに戻ったれんに気が付くと作業を放り出して彼女に駆け寄った。
いきなり由衣がどこかに消え、さっきまで彼女が対応していた冒険者はぽかんとしていたが、素早く他の職員がフォローに入って対応を変わった。
最初はちゃんと対応を終えてから行くよう注意していたのだが、何度言っても直らないので最終的にはこうなった。
「お姉ちゃん、大丈夫だった?怪我してない?」
「大丈夫だよ。諒さんも守ってくれたから」
「・・・よかった。諒さん、ありがとう。ちょっとだけ、感謝してる」
「そりゃあ光栄なことで」
過保護な親かと思うほど由衣は依頼から戻ったれんの心配をしていたが、れんは笑顔で返して由衣の頭を撫でる。
由衣はエヘヘ~と上機嫌にきれいな銀髪を揺らす。
れんも彼女の扱いには慣れてきたようだ。依頼も無事終わり、由衣の諒に向ける懐疑的な目も少しだけ和らいだ気がした。こっちも少し進展があったらしい。
「じゃあ、莉彩さんに報告してくるから。少し待っててね、お姉ちゃん」
「うん、ありがとう」
相変わらず諒の事は若干無視した言い方で由衣はカウンターの方に消えていった。
二人は手近に開いているテーブルを見つけてそこで待つことにした。
昇格依頼は通常の報酬と一緒に新ランクの冒険者証を受け取ることになる。
それには少し時間がかかるので何か飲みながらそれを待つ。
「まさかこんなに早くDランクの依頼に行けるようになるとはな。本当によく頑張ってるぞ」
「本当ですか?」
「ああ、俺なんか最初Dランクに上がるのに半年はかかったからな。すさまじい成長速度だ」
素直な誉め言葉にれんは受け取り方に迷っているようだった。頬を赤らめてうつむくと、聞き取れないくらいの音量で「ありがとうございます」と発した。
「どうだ?昇格祝いに良いものでも食べるか?」
「あ・・・それなら、前に食べたケーキを由衣ちゃんにも食べさせてあげたいです」
「・・・そうか」
諒は答えに迷った。彼にとってはケーキよりもあそこにいた店員の方がはるかに濃く記憶に残っていた。
今回に関してはれんのお祝いだしとやかく言われる筋合いはないのだが、何となくまたあそこに行くのは躊躇われた。
「それなら今度連れていってやるといい。店内で食べられるスペースもあったし、店員もいい奴だったからな」
「・・・わかりました、頑張ります」
こういうのが苦手そうなれんは答えに渋るかと思ったが、意外にもあっさり頷いた。
よほど気に入っていたのだろうか。
三人で行くところは後で決めることにし、その後も少し雑談を続けていると、由衣が莉彩を連れて戻って来た。
「お二人ともお待たせしました。新しい冒険者証の準備が出来ましたよ」
「おめでとう、お姉ちゃん!」
莉彩は先に依頼の報酬をテーブルに置く。昨日まで受けていたEランクの報酬よりもはるかに大金が袋に詰まっていた。
れんもその量に驚いていたようだが、すぐに視線は別のところに向かう。
「これが、Dランクの証です。大事にしてくださいね」
「ええ、ありがとうございます」
二人は持っていたEランクの冒険者証を渡し、新しくDランクの冒険者証を受け取る。
Eランクは紙切れのようなものだったが、Dランクになるとしっかりとした紙質でカードらしくなっている。
「やったな、れん」
「はい!」
初めての昇格。れんは感慨深そうにDランクと刻まれた文字を眺めていた。
「これからのお二人はDランクの依頼も受けることが出来るようになります。その分危険も多いですが、頑張ってくださいね」
「ええ、精進します」
「無理はしないでね。お姉ちゃん」
由衣は複雑そうな表情でれんの手を握る。
彼女にとってはれんが怪我をしないことが何より大切なことだが、れんの成長は危険度と隣り合わせだ。
ランクが上がるほどその危険は高くなる。だから手放しに誉めることは出来ないのだろう。
それでもれんの成長を応援しているのは立派なものだ。自分勝手な性格ではあるが、ちゃんとれんの意思は尊重出来ている。
「じゃあ、昇格を祝して、乾杯でもやっとくか?」
「はい・・じゃあ、かん・・・・」
「見つけましたわ、諒様!!!」
最後に乾杯でもと思ってれんに持っていたグラスを見せる。
れんも頷いて口を開いた瞬間、彼女の声どころかギルド内の空気を割くような声が響いた。
一体何だ、そう思って振り返ろうとしたが、その前に諒の後頭部にすさまじい衝撃が走る。
まるでさっきのオーガにこん棒で殴られたような衝撃だ。
意識外の衝撃にどうすることもできず、諒の意識は一瞬で闇に沈んでいく。その刹那、視界の端で見たこともない表情で目を見開くれんと由衣の姿が見えたような気がした。
「わっ!・・・ただいま、由衣ちゃん」
由衣はギルドに戻ったれんに気が付くと作業を放り出して彼女に駆け寄った。
いきなり由衣がどこかに消え、さっきまで彼女が対応していた冒険者はぽかんとしていたが、素早く他の職員がフォローに入って対応を変わった。
最初はちゃんと対応を終えてから行くよう注意していたのだが、何度言っても直らないので最終的にはこうなった。
「お姉ちゃん、大丈夫だった?怪我してない?」
「大丈夫だよ。諒さんも守ってくれたから」
「・・・よかった。諒さん、ありがとう。ちょっとだけ、感謝してる」
「そりゃあ光栄なことで」
過保護な親かと思うほど由衣は依頼から戻ったれんの心配をしていたが、れんは笑顔で返して由衣の頭を撫でる。
由衣はエヘヘ~と上機嫌にきれいな銀髪を揺らす。
れんも彼女の扱いには慣れてきたようだ。依頼も無事終わり、由衣の諒に向ける懐疑的な目も少しだけ和らいだ気がした。こっちも少し進展があったらしい。
「じゃあ、莉彩さんに報告してくるから。少し待っててね、お姉ちゃん」
「うん、ありがとう」
相変わらず諒の事は若干無視した言い方で由衣はカウンターの方に消えていった。
二人は手近に開いているテーブルを見つけてそこで待つことにした。
昇格依頼は通常の報酬と一緒に新ランクの冒険者証を受け取ることになる。
それには少し時間がかかるので何か飲みながらそれを待つ。
「まさかこんなに早くDランクの依頼に行けるようになるとはな。本当によく頑張ってるぞ」
「本当ですか?」
「ああ、俺なんか最初Dランクに上がるのに半年はかかったからな。すさまじい成長速度だ」
素直な誉め言葉にれんは受け取り方に迷っているようだった。頬を赤らめてうつむくと、聞き取れないくらいの音量で「ありがとうございます」と発した。
「どうだ?昇格祝いに良いものでも食べるか?」
「あ・・・それなら、前に食べたケーキを由衣ちゃんにも食べさせてあげたいです」
「・・・そうか」
諒は答えに迷った。彼にとってはケーキよりもあそこにいた店員の方がはるかに濃く記憶に残っていた。
今回に関してはれんのお祝いだしとやかく言われる筋合いはないのだが、何となくまたあそこに行くのは躊躇われた。
「それなら今度連れていってやるといい。店内で食べられるスペースもあったし、店員もいい奴だったからな」
「・・・わかりました、頑張ります」
こういうのが苦手そうなれんは答えに渋るかと思ったが、意外にもあっさり頷いた。
よほど気に入っていたのだろうか。
三人で行くところは後で決めることにし、その後も少し雑談を続けていると、由衣が莉彩を連れて戻って来た。
「お二人ともお待たせしました。新しい冒険者証の準備が出来ましたよ」
「おめでとう、お姉ちゃん!」
莉彩は先に依頼の報酬をテーブルに置く。昨日まで受けていたEランクの報酬よりもはるかに大金が袋に詰まっていた。
れんもその量に驚いていたようだが、すぐに視線は別のところに向かう。
「これが、Dランクの証です。大事にしてくださいね」
「ええ、ありがとうございます」
二人は持っていたEランクの冒険者証を渡し、新しくDランクの冒険者証を受け取る。
Eランクは紙切れのようなものだったが、Dランクになるとしっかりとした紙質でカードらしくなっている。
「やったな、れん」
「はい!」
初めての昇格。れんは感慨深そうにDランクと刻まれた文字を眺めていた。
「これからのお二人はDランクの依頼も受けることが出来るようになります。その分危険も多いですが、頑張ってくださいね」
「ええ、精進します」
「無理はしないでね。お姉ちゃん」
由衣は複雑そうな表情でれんの手を握る。
彼女にとってはれんが怪我をしないことが何より大切なことだが、れんの成長は危険度と隣り合わせだ。
ランクが上がるほどその危険は高くなる。だから手放しに誉めることは出来ないのだろう。
それでもれんの成長を応援しているのは立派なものだ。自分勝手な性格ではあるが、ちゃんとれんの意思は尊重出来ている。
「じゃあ、昇格を祝して、乾杯でもやっとくか?」
「はい・・じゃあ、かん・・・・」
「見つけましたわ、諒様!!!」
最後に乾杯でもと思ってれんに持っていたグラスを見せる。
れんも頷いて口を開いた瞬間、彼女の声どころかギルド内の空気を割くような声が響いた。
一体何だ、そう思って振り返ろうとしたが、その前に諒の後頭部にすさまじい衝撃が走る。
まるでさっきのオーガにこん棒で殴られたような衝撃だ。
意識外の衝撃にどうすることもできず、諒の意識は一瞬で闇に沈んでいく。その刹那、視界の端で見たこともない表情で目を見開くれんと由衣の姿が見えたような気がした。
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