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第十六話 昇格依頼
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「昇格依頼?」
「うん、莉彩さんからもう実力は十分通用するだろうって」
「そうか。もうちょい先かと思っていたが、もうそんな話が来てるんだな」
さらに色々な依頼を受けていた諒達に、ある時突然にその話は持ち込まれた。
Dランクへの昇格依頼。現在諒のパーティーのランクはれんの実力に合わせて決定されている。
そのため諒はEランクのソロになってすぐ激震竜と戦っているが、それはあくまでソロとしての実績となり、依頼後にれんと組んだこともあってランクが変わることはなかった。
確かにれんの成長速度には目を見張るものがあるが、それでももう少し先になるだろうと思っていた。
「どうしますか、諒さん?」
「ランクは高くて損はない。ランクの高さはそのままギルドからの信用度になるし、依頼の幅も広がる。話が来たなら蹴る理由はないんじゃないか?」
れんは少し悩んでいるようだった。
昇格依頼はDランクのモンスターと戦うことになる。
初心者ランクを抜け出すことで、いよいよ戦いも本番になってくるのがこのランク帯だ。
敵の強さ、大きさ、どれをとってもEランクとは比べ物にならない。この前戦ったウルフの群れもDランクの中に入ればまだかわいいものだ。
「俺も付いてるし、れんの実力なら十分やっていけるさ」
「・・・諒さん、本当に言ってるの?」
ギルドから大丈夫と言われたのなら実力は確かのはずだ。自信が足りないなら背中を押してやろうと声をかけるが、諒の言葉に反応したのはれんではなく由衣の方だった。
薬膳茸の依頼を終えてから、諒は由衣にかなり嫌われていた。
原因は依頼の終盤、不注意でれんがウルフに襲われてしまったからだ。目立った傷は無かったが、武器をはじかれた際左腕に怪我をしていたらしい。
諒は気が付かなかったが由衣はそれに気付いたようだ。それで「なんでお姉ちゃんを守ってくれなかったんですか!!」とものすごい剣幕で彼女の怒りは諒に注がれた。それ以来由衣は諒の実力にかなり疑問を持っているようだった。
確かに激震竜の討伐は由衣と行動を共にする前の話だし、一緒に依頼にいかないと実力を測るのも難しい。
彼女にとっては「れんに怪我をさせた」という負の実績だけが諒の評価基準だった。
「・・・受けましょう。諒さん。この依頼」
「本当にいいのか?」
「はい、私のせいで諒さんがいつまでもEランクのままなんて嫌です。それに、怖がっていてもばかりいても・・・何も得られませんから」
れんは由衣の頭を撫でて落ち着かせ、諒に参加の意思を示した。
その表情は少し無理をしているようにも感じたが、諒はその決意を尊重することにした。
至らないならその分諒が何とかすればいい。もうれんをあんな危険な目には合わせない。
改めて諒も決意を固める。
「お姉ちゃんがそういうなら。でも、絶対無事に帰ってきてね」
「うん、約束する」
「・・・諒さん、絶対にお姉ちゃんを守ってね。次また怪我なんてさせたら、絶対許さないから」
「ああ、もちろんだ」
由衣もこの依頼に行かせるのは反対だったようだが、最後は頷いてくれた。
無事に帰ることを約束し、二人は依頼に向けて準備を始めた。
「・・・そろそろか」
準備を終えた後、二人はマロウの森に向かっていた。以前は奥に入らなかったので激震竜以外のモンスターとは遭遇しなかったが、今回は危険域に入ることになる。
「今回の相手はオーガだ。少し前に戦ったゴブリンの上位種のような奴だと思えばいい。今回は単体での依頼だが、実力はゴブリンを大きくしのぐ。常に距離を保って立ち回ることを意識しろ。絶対無暗に近づいたりするなよ」
「わかりました」
オーガは人型のモンスターだ。深緑の体躯と人間よりも巨大なこん棒が大きな特徴となる。
体もそれに比例してでかい。下位種のゴブリンは人間とそう変わらないが、こいつはその倍以上の巨躯を誇る。
こん棒と相まってあふれる威圧感は中々のもので、諒も最初遭遇した時は本当にこのランク帯のモンスターか疑ったくらいだ。
由衣からも釘を刺されたし、油断は禁物だ。
基本的にはれんは距離を離して立ち回ることになるが、それでも危険な時はすぐに諒が助けに入れるようお互いの立ち位置位置は常に気にしておかなければならない。
森に入ってしばらく歩くと、ふとした瞬間に森の雰囲気が一変したのを感じる。
安全域を抜けた証拠だ。先ほどまで感じていた心地良い植物の匂いは消え失せ、なんとも不気味な空気が二人の周囲を包んでいる。
れんもそれを感じ取ったようだ。さきほど以上に表情に緊張感が増しており、しきりに周りを確認していた。
「・・・近いな。れん、もう少しこっちにこい。急に襲ってきても守れるようにな」
「わかりました」
戦闘になれば距離を取ることになるが、それまでは二人は近い距離で周囲を警戒する。
おそらくそう遠くはない。かすかであるが足音も聞こえる。
「・・・諒さん、こっちの方向から何か感じます」
「そうか?・・・なら一発こっちから仕掛けてみるか」
方向を探っていると、後ろのれんが先に特定したようだ。茂みを指さし諒に判断を求める。
向こうがこちらに気づいているかは微妙なところではあるが、視野がきかないこと状況ならこちらの攻撃をすぐには察知できないだろう。
諒はれんに指示を送り、彼女は緊張の面持ちで弓を構えると先ほどの方向に矢を放つ。
グオオオ!!
視界には映らないが、茂みの奥に消えた矢は確かに何かに命中したようだ。
わずかな音と一緒にモンスターの雄たけびが森に響く。それを聞いた瞬間諒はれんを抱えて横に移動した。
ズガアアアン!!
二人がさっきまでいた場所に突如茂みから伸びてきたこん棒が振り下ろされる。
一撃で地をえぐる威力にれんは目を丸くしていた。
そしてこん棒がゆっくり引き上げられると同時にオーガも姿を現した。
「ようやくおでましだな。ちゃんと作戦は覚えてるな?」
「はい、大丈夫です」
オーガはすぐに諒達の存在に気付いたようだ。二人も武器を抜いて臨戦態勢を取る。
れんは派手に動かずじりじりと諒から離れて矢に手をかける。
「さてと、どう攻めたものか」
Dランクと言えども正面から突っ込むのは危険だ。力は向こうの方が圧倒的に上だし、一撃でも食らえば致命傷になりかねない。
下手に攻め込むのは避け、諒はカウンターを狙うことにした。
ガアアア!
先に動いたのはオーガの方だ。しかし意外にも前衛に立つ諒ではなく距離を取っていたれんに狙いを定めて突進する。
よく見ると左肩に先ほどれんが撃った矢が刺さっている。どうやらあれが怒りを買ったのだろう。
諒よりも弓を持つ彼女の方を先に排除すべきと判断したらしい。
「だが、それだと知恵が足らないな」
諒から注意が逸れたことでカウンターを狙う必要などなくなった。
スピードなら諒の方がオーガより上だ。すぐさま追いつくと刀を矢のように引き絞り、オーガの横腹に向けて一気に突き込む。
「竜剣技・穿腕『光刻』!」
竜の腕は鉄さえ穿つ。その強烈な一撃で諒の数倍の巨躯をほこるオーガを吹き飛ばした。
「まったく、か弱い女の子から狙うなんて。無粋な奴だな」
「か弱いは余計です」
オーガが立てなおす間に諒はれんに視線を向ける。
彼女は先ほどの言葉に不服があるのか少し頬を膨らませていたが、その視線は油断なくオーガの方に向いていた。
いい集中力だ。諒もそれ以上は口を開かずオーガに視線を戻す。
オーガは貫かれた脇腹を抑えながら怒りの形相を諒に向ける。
想像以上の剣撃にすぐその敵意は彼の方に向けられたらしい。こん棒を振り上げるとわき目も振らず諒に向かって振り下ろす。
「えい!」
先ほどは回避しようとしていてその暇はなかったが、今度はれんの方が動く。
オーガがこん棒を振り下ろす直前にそれを持つ右腕に矢を放つ。
それだけでは有効な一撃にはならないが、こん棒の勢いを緩めることには成功した。
その隙に諒は飛び上がって攻撃を回避し、カウンターの一撃を叩き込む。
「竜剣技・剛脚『雷槌』!」
こん棒は一撃こそ強力だが隙は大きい。
攻撃のすぐあとに放たれたカウンターにオーガはなすすべはなかった。
隙だらけのその体に諒の強烈な一撃が吸い込まれていく。
ギャアアアアァァ
オーガは最後にか細い悲鳴をあげると地面に倒れた。ズシンと小さな地響きを立てた後、その体は光となって消滅した。
「よし、依頼完了だ。よく頑張ったな、れん」
「ありがとうございます。諒さんもやっぱりすごかったです」
「期待に添えられたなら何よりだ」
無事依頼は完了した。最後のれんの一撃は狙いも技術もどれも彼女の成長を感じるものだった。
まだまだと思っていたが、こんなに早く成長していたとは。おちおちしていたら抜かれかねない。しかし今は素直にその成長を喜ぶことにした。
ねぎらいの印にれんの頭を撫でる。
「さて、いつまでもこんなところにいないで帰るとするか」
「はい、そうしましょう」
れんの頭から手を離すと彼女は笑顔を見せる。それは戦いの中で時折みせる頼もしさは微塵も感じない純粋で幼いものだった。
いつまでもここにいたら別の奴に襲われかねない。
目的を達成し、二人は足早に危険域を抜けて央都に戻った。
「うん、莉彩さんからもう実力は十分通用するだろうって」
「そうか。もうちょい先かと思っていたが、もうそんな話が来てるんだな」
さらに色々な依頼を受けていた諒達に、ある時突然にその話は持ち込まれた。
Dランクへの昇格依頼。現在諒のパーティーのランクはれんの実力に合わせて決定されている。
そのため諒はEランクのソロになってすぐ激震竜と戦っているが、それはあくまでソロとしての実績となり、依頼後にれんと組んだこともあってランクが変わることはなかった。
確かにれんの成長速度には目を見張るものがあるが、それでももう少し先になるだろうと思っていた。
「どうしますか、諒さん?」
「ランクは高くて損はない。ランクの高さはそのままギルドからの信用度になるし、依頼の幅も広がる。話が来たなら蹴る理由はないんじゃないか?」
れんは少し悩んでいるようだった。
昇格依頼はDランクのモンスターと戦うことになる。
初心者ランクを抜け出すことで、いよいよ戦いも本番になってくるのがこのランク帯だ。
敵の強さ、大きさ、どれをとってもEランクとは比べ物にならない。この前戦ったウルフの群れもDランクの中に入ればまだかわいいものだ。
「俺も付いてるし、れんの実力なら十分やっていけるさ」
「・・・諒さん、本当に言ってるの?」
ギルドから大丈夫と言われたのなら実力は確かのはずだ。自信が足りないなら背中を押してやろうと声をかけるが、諒の言葉に反応したのはれんではなく由衣の方だった。
薬膳茸の依頼を終えてから、諒は由衣にかなり嫌われていた。
原因は依頼の終盤、不注意でれんがウルフに襲われてしまったからだ。目立った傷は無かったが、武器をはじかれた際左腕に怪我をしていたらしい。
諒は気が付かなかったが由衣はそれに気付いたようだ。それで「なんでお姉ちゃんを守ってくれなかったんですか!!」とものすごい剣幕で彼女の怒りは諒に注がれた。それ以来由衣は諒の実力にかなり疑問を持っているようだった。
確かに激震竜の討伐は由衣と行動を共にする前の話だし、一緒に依頼にいかないと実力を測るのも難しい。
彼女にとっては「れんに怪我をさせた」という負の実績だけが諒の評価基準だった。
「・・・受けましょう。諒さん。この依頼」
「本当にいいのか?」
「はい、私のせいで諒さんがいつまでもEランクのままなんて嫌です。それに、怖がっていてもばかりいても・・・何も得られませんから」
れんは由衣の頭を撫でて落ち着かせ、諒に参加の意思を示した。
その表情は少し無理をしているようにも感じたが、諒はその決意を尊重することにした。
至らないならその分諒が何とかすればいい。もうれんをあんな危険な目には合わせない。
改めて諒も決意を固める。
「お姉ちゃんがそういうなら。でも、絶対無事に帰ってきてね」
「うん、約束する」
「・・・諒さん、絶対にお姉ちゃんを守ってね。次また怪我なんてさせたら、絶対許さないから」
「ああ、もちろんだ」
由衣もこの依頼に行かせるのは反対だったようだが、最後は頷いてくれた。
無事に帰ることを約束し、二人は依頼に向けて準備を始めた。
「・・・そろそろか」
準備を終えた後、二人はマロウの森に向かっていた。以前は奥に入らなかったので激震竜以外のモンスターとは遭遇しなかったが、今回は危険域に入ることになる。
「今回の相手はオーガだ。少し前に戦ったゴブリンの上位種のような奴だと思えばいい。今回は単体での依頼だが、実力はゴブリンを大きくしのぐ。常に距離を保って立ち回ることを意識しろ。絶対無暗に近づいたりするなよ」
「わかりました」
オーガは人型のモンスターだ。深緑の体躯と人間よりも巨大なこん棒が大きな特徴となる。
体もそれに比例してでかい。下位種のゴブリンは人間とそう変わらないが、こいつはその倍以上の巨躯を誇る。
こん棒と相まってあふれる威圧感は中々のもので、諒も最初遭遇した時は本当にこのランク帯のモンスターか疑ったくらいだ。
由衣からも釘を刺されたし、油断は禁物だ。
基本的にはれんは距離を離して立ち回ることになるが、それでも危険な時はすぐに諒が助けに入れるようお互いの立ち位置位置は常に気にしておかなければならない。
森に入ってしばらく歩くと、ふとした瞬間に森の雰囲気が一変したのを感じる。
安全域を抜けた証拠だ。先ほどまで感じていた心地良い植物の匂いは消え失せ、なんとも不気味な空気が二人の周囲を包んでいる。
れんもそれを感じ取ったようだ。さきほど以上に表情に緊張感が増しており、しきりに周りを確認していた。
「・・・近いな。れん、もう少しこっちにこい。急に襲ってきても守れるようにな」
「わかりました」
戦闘になれば距離を取ることになるが、それまでは二人は近い距離で周囲を警戒する。
おそらくそう遠くはない。かすかであるが足音も聞こえる。
「・・・諒さん、こっちの方向から何か感じます」
「そうか?・・・なら一発こっちから仕掛けてみるか」
方向を探っていると、後ろのれんが先に特定したようだ。茂みを指さし諒に判断を求める。
向こうがこちらに気づいているかは微妙なところではあるが、視野がきかないこと状況ならこちらの攻撃をすぐには察知できないだろう。
諒はれんに指示を送り、彼女は緊張の面持ちで弓を構えると先ほどの方向に矢を放つ。
グオオオ!!
視界には映らないが、茂みの奥に消えた矢は確かに何かに命中したようだ。
わずかな音と一緒にモンスターの雄たけびが森に響く。それを聞いた瞬間諒はれんを抱えて横に移動した。
ズガアアアン!!
二人がさっきまでいた場所に突如茂みから伸びてきたこん棒が振り下ろされる。
一撃で地をえぐる威力にれんは目を丸くしていた。
そしてこん棒がゆっくり引き上げられると同時にオーガも姿を現した。
「ようやくおでましだな。ちゃんと作戦は覚えてるな?」
「はい、大丈夫です」
オーガはすぐに諒達の存在に気付いたようだ。二人も武器を抜いて臨戦態勢を取る。
れんは派手に動かずじりじりと諒から離れて矢に手をかける。
「さてと、どう攻めたものか」
Dランクと言えども正面から突っ込むのは危険だ。力は向こうの方が圧倒的に上だし、一撃でも食らえば致命傷になりかねない。
下手に攻め込むのは避け、諒はカウンターを狙うことにした。
ガアアア!
先に動いたのはオーガの方だ。しかし意外にも前衛に立つ諒ではなく距離を取っていたれんに狙いを定めて突進する。
よく見ると左肩に先ほどれんが撃った矢が刺さっている。どうやらあれが怒りを買ったのだろう。
諒よりも弓を持つ彼女の方を先に排除すべきと判断したらしい。
「だが、それだと知恵が足らないな」
諒から注意が逸れたことでカウンターを狙う必要などなくなった。
スピードなら諒の方がオーガより上だ。すぐさま追いつくと刀を矢のように引き絞り、オーガの横腹に向けて一気に突き込む。
「竜剣技・穿腕『光刻』!」
竜の腕は鉄さえ穿つ。その強烈な一撃で諒の数倍の巨躯をほこるオーガを吹き飛ばした。
「まったく、か弱い女の子から狙うなんて。無粋な奴だな」
「か弱いは余計です」
オーガが立てなおす間に諒はれんに視線を向ける。
彼女は先ほどの言葉に不服があるのか少し頬を膨らませていたが、その視線は油断なくオーガの方に向いていた。
いい集中力だ。諒もそれ以上は口を開かずオーガに視線を戻す。
オーガは貫かれた脇腹を抑えながら怒りの形相を諒に向ける。
想像以上の剣撃にすぐその敵意は彼の方に向けられたらしい。こん棒を振り上げるとわき目も振らず諒に向かって振り下ろす。
「えい!」
先ほどは回避しようとしていてその暇はなかったが、今度はれんの方が動く。
オーガがこん棒を振り下ろす直前にそれを持つ右腕に矢を放つ。
それだけでは有効な一撃にはならないが、こん棒の勢いを緩めることには成功した。
その隙に諒は飛び上がって攻撃を回避し、カウンターの一撃を叩き込む。
「竜剣技・剛脚『雷槌』!」
こん棒は一撃こそ強力だが隙は大きい。
攻撃のすぐあとに放たれたカウンターにオーガはなすすべはなかった。
隙だらけのその体に諒の強烈な一撃が吸い込まれていく。
ギャアアアアァァ
オーガは最後にか細い悲鳴をあげると地面に倒れた。ズシンと小さな地響きを立てた後、その体は光となって消滅した。
「よし、依頼完了だ。よく頑張ったな、れん」
「ありがとうございます。諒さんもやっぱりすごかったです」
「期待に添えられたなら何よりだ」
無事依頼は完了した。最後のれんの一撃は狙いも技術もどれも彼女の成長を感じるものだった。
まだまだと思っていたが、こんなに早く成長していたとは。おちおちしていたら抜かれかねない。しかし今は素直にその成長を喜ぶことにした。
ねぎらいの印にれんの頭を撫でる。
「さて、いつまでもこんなところにいないで帰るとするか」
「はい、そうしましょう」
れんの頭から手を離すと彼女は笑顔を見せる。それは戦いの中で時折みせる頼もしさは微塵も感じない純粋で幼いものだった。
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