引きこもり勇者!

白神灼優鈴

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第捌録 真実と決心

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食堂を後にした僕らは着替えを済ませて、昨日の王座の間に来ていた。
「では太我裏。 本題に移ろう。 本来なら、昨日あの場で言うつもりだったのじゃが……」
「その節は申し訳ありませんでした」
 反射的に謝ってしまう。
「まぁ気にしないで……さて本題じゃ」
 ソフィアが胸ポケットにしまってあった紙を取り出す。
「太我裏、送った手紙は持って来てるか?」
 「ああ。 後、普段通りのしゃべりで頼む」
「もう少し後からじゃな」
 言われた手紙を取り出す。
「ちょっと妾に貸してくれぬか?」
 手紙をソフィアに渡す。
「間違いは……なさそうじゃな」
 言うとソフィアを中心に半径5メートルほどの薄青く光る魔法陣が床に浮かび上がる。
「え、ソフィアって魔法使えたんだっけ? 僕の記憶では、僕の方が上だったと思うのだけれど……」
「頑張った」
「あ、お疲れ様です。」
 魔法陣は回転しだし、徐々に大きさが小さくなっていき、最後は手紙に刻印として残った。
 すると今まで横にいたソフィアがコツッコツッと高いヒールを鳴らし、目の前に対峙してくる。
 ソフィアの真剣な目がことの重大さを伝えているようだった。
「太我裏。 “勇者“と呼ばれる存在に興味、もしくは思い入れはないか? 勇者とは仲間とともに故郷を離れ、己が守りたいもののために戦い、魔王と呼ばれる強大な敵と戦う……。 そんな存在に興味はないか?」
「いやだ」
 即答だ。
「なんで? なんでなの?」
「理由は簡単。 僕が引きこもりだからだ。 僕は自分が引きこもりとしていきていることを誇りに思っているし、何より勇者になってしまったら引きこもれなくなるじゃないか……そんなのはごめんだ。 僕は引きこもりたいし、勇者なんて無謀なものになりたくない。 自分が志願していくならまだしも、僕は志願なんてしていないし、なんで僕にその話が回って来たのかも知らない。 そんな状態でいきなり勇者になってくれないか? って、それって僕に外で死んでくれっていってるようなものだよね? 理由がはっきりしない限り、僕は悩むことすらしないよ? 」
 正直、びっくりした。
 勇者、僕とは真反対の存在。 他がために己の命を削り、戦っていく者。 勇敢な者。
 僕はそんな大層なものにはなれない、いや、ならない。
 僕は引きこもりたいし、何もしたくない。
ソフィアの頬を一筋の涙が伝う。
 「妾だって……妾だって愛する人を危険な旅に出すことは反対だよ……でもしょうがないじゃない! 決まっちゃったんだから! みんなが太我裏を選んだの、投票で。 妾は太我裏にそばにいて欲しい! 本当は6年前からずっと、ずっと!」
「ちょっと待って」
 僕は熱くなるソフィアを制止する。
 6年前から両想いだったのはこの際どうでも良くはないが置いておこう。
 それより大事なのは……
「今勇者が決まった方法を"投票"って言ったか?」
「うん……。 投票の獲得数も八割超えてて、だから、妾の力じゃどうにも出来なくて……。 本当は今年か来年、太我裏にちゃんと女の子として会いに行きたかったんだけど、こんな形になっちゃって……」
 ソフィアは涙を拭いながら答える。
「投票って言うのは、ユウジキ村内での投票か? それとも城下町も含めた、この王国すべての住人の投票か? どっちだ?」

「ユウジキ村内だけの投票だよ……」

「そうか」
 腹の底から怒りがこみ上げてくる。
 村の人間はみんなして僕を村から追い出したかったのだろう。 
 他に方法ならいくらでもあったはずなのに、こんな方法を取ったのがどうしようもなく許せない。 
 「そういうことか……どれだけ僕を傷つけたいんだよ……」
「太我裏? 大丈夫?」
 ソフィアが心配そうにのぞき込む。
「僕の中での決心がついたよ」
 ソフィアにちゃんと向き合い言葉を続ける。
「俺は、僕はそんなやり方をする村が大嫌いだ。 その大嫌いな村人を僕は恨むことはしない。 けれど、復讐はする。 奴らを見返してやる。 だからソフィア、1回村に帰らせてくれ」
「え、じゃあ……」
 口にしたらそれが現実になってしまうが、口にしなかったら、今この胸で渦巻く葛藤や怒りは収まらない。 なら僕は口にするしかない。 

「やってやるよ、勇者」











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