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第玖録 さらばひきこもりライフ
しおりを挟む家の前に立ち、大きく深呼吸をする。
「ってかなんでソフィアまでいるの?」
「太我裏の両親に挨拶しないとだから」
勇者になる決心がついたあと、僕とソフィアはユウジキ村来ていた。
ユウジキ村の一番奥にある大きな平屋が僕の家。
なんでこんなにでかいのかは分からないが、村一番の大きさを誇っている。 まじで、無駄だと思う。
「じゃあ入るか……」
家の戸に手をかけ ると、急に気が重くなり、決心が揺らぎそうになる。
自分がした決心に後悔しているわけではない。 ただ不安があるだけ。 逆に不安しかない。
自分で本当にいいのか、ちゃんと歩けるか、体力は大丈夫か、ネットはちゃんと繋がるのか……不安しかない。
「どうしたのじゃ太我裏? 早く入ろ?」
ソフィアが促してくる。
「あぁそうだな……」
促されるままに戸を開けるとそこにはとても和やかなの光景があった。
母さんと父さん、妹が一緒になって昼食をとっていて、たわいない話をしている。
「…………。」
僕は無言で自分の部屋へ足を運ぶ。
「あら太我裏。 帰って来てたの? お昼食べる?」
僕の存在に気がついた母さんが話しかけてくる。
断ろうと口を開く。
「いらな……」
「ぜひ! おばさまの手料理を!」
僕の言葉を遮り、ソフィアが元気よく答える。
「なに? なんでこんな前代未聞超弩級クソ兄貴に、こんな可愛い彼女がいるの? ねぇ。 おかしくない? 何したんだよ、犯罪の匂いしかしないんだけど」
「太我裏……ついにお前にも彼女が……。 お父さん嬉しくて眼球が熱いよ……」
妹が僕を罵り、父さんが大号泣している。
「いや待て愚妹。 これは僕の彼女でもなければ、僕が犯罪を犯したわけでもない。 だいたいちゃんと見ろよ愚妹。 この顔どこかで見たことあるとか思わないのか? 父さんも母さんも……」
「え、あんなことまでしておいて、妾彼女じゃないの?」
ソフィアが目に涙を浮かべながら言う。
「あれは未遂だし、そもそも不可抗力だ!」
家族にはなった言葉がなぜか横にいるソフィアに刺さるとは思わなかった……なんかごめん。
「ん? 言われてみればどこかで……」
家族全員が首を傾げる。
「じゃあわかったらまた声かけてくれ、部屋にいるから」
僕はその場を離れ自室へと向かう。
「えっ、ちょっとおいてくのはなしじゃよ太我裏~」
ソフィアが追いかけてくるが、そんなの御構い無しで僕は部屋に向かう。
「ついたぞ」
部屋の前に着き、南京錠が何重にも掛かり厳重に閉ざされていた戸を開ける。
「え、やば」
後ろに立っていたソフィアが僕の部屋の中をのぞき真顔で硬直する。
「まあ入ってくれよ。 あんまりいいもんはないし、散らかってるけど……」
ソフィアを部屋へと招き入れる。
「え、やばいしかっ出てこないんじゃが、この部屋」
ソフィアの語彙力のなさが垣間見えた気がする……それでいいのか女王陛下、国民を代表して心配になってくる。
でも、王宮暮らしのソフィアには少しばかり刺激が強かったかもしれない。
僕の部屋は扉を開けると目の前に15台のPC用ディスプレイが並んでいるし、その横にあるベットだってなぜかはわからないがキングサイズくらいはゆうにある。 しかも周りの本棚はほとんどが埋まっており満員御礼状態。 一応部屋の中の清掃は、王都へ行く前にしたばかりなので中自体はピカピカだ。
「なんでこんなにベットが小さいんじゃ? これでは妾との愛の営みがゆったりとできないであろうに……」
脳内御花畑かよこいつ。 このベットが小さいだと? しかもベットを見ていきなり下ネタとは笑わせてくれる……。
「まぁ、普通の民家にしてはでかいぞ、そのベット……」
白く透き通った雪のように白い肌が目に飛び込んでくる。
見ているだけで重量感があり、張りのいい綺麗な胸。 細すぎず、かといって太すぎない腕。 細さの中に膨よかさを持った絶妙な太もも……そしてくびれの先にある引き締まったお腹。
美しすぎて一枚の絵として完成されそうなその姿は、エロよりも芸術性が勝り、つい見とれてしまいそうになる。
「って、何勝手に全裸になろうとしてんだよ! 早く服と脱ぎかけたパンツを履け! 淫乱陛下!」
「妾が素肌を晒すのは太我裏だけじゃよ」
ソフィアが悪戯にウィンクをかましてくる。
「そう言う問題じゃないだろ⁈ それはそれで嬉しいけど! でも今はやめてくれ、また今度な! あ…………」
「やったぁ~!!!!!!!!!」
ソフィアが人生最大級の喜びが如く、ベッドの上をぴょんぴょん跳ね回る。 裸で。
ソフィアが跳ねるたびにぽよぽよと揺れる双丘は、もはや殺傷能力しかない。
「頼むから服を着てくれ……」
その後ソフィアが服を着たのは、30分後のことだった。
「よし、準備万端だ……完璧すぎて自分が怖いくらいだ」
あの後準備を始めた僕は何だかんだこだわってしまい、荷物による立派な山を作り上げていた。
ちなみに部屋にはベッドと机くらいしか残っていない。
言葉にならない達成感を感じ、余韻に浸る。
「てか、今何時だ?」
ふと思い、外に目をやる。
外は夕闇に染まり、時計の針は午後7時を指していた。
「ソフィアごめん、遅くな……まぁそうだよな」
「すぴ~……うにゃ~…………ごめんなさい、もう食べられないんじゃ~」
ソフィアは寝言を言いながらスヤスヤと気持ちよさそうに寝ていた。
夢の内容が気になる……何を食べているのだろうか。
ーぎゅるるる~
部屋にものすごい音が響く。
ソフィアの腹が鳴った。 僕のじゃなくソフィアのだ。 もう一回だけ言っておこう、ソフィアの腹が爆音をまき散らした。
「はッ! 何事じゃ! 何じゃ今の爆音は!」
自分の腹の音でソフィアが飛び起きる。
「飯にしようか……」
何と言ったらいいのか分からず、笑いを噛み締めながら部屋を出る。
「母さん、ご飯まだ……って何やってんの」
晩飯を要求しにリビングへ行くと豪華な食事と正装に着替えた家族の姿があった。
「あら太我裏、珍しいじゃない、何度呼んでもリビングに一度も顔を出さなかったのに……自分から出てくるなんて」
「悪いかよ」
「いや別にそんなことは……」
母さんが俯く。
飯はあったのでよしにしようと思うが、その前に一つ、疑問を解消しておかなければ気が済まない。
「で、その格好は何?」
「は? わかんないの? 脳まで引きこもっちゃった?」
妹が馬鹿なの? とでも言いたげな顔で言う。
「わかんないから聞いてんだよ」
「さっきクソ兄貴と一緒にいたのソフィアちゃんでしょ? 女王陛下じゃんかバカ」
「あ、なるほどね」
なるほどそれで正装に着替えたと言うことですか……。
「た~が~り~!」
ーボキッ
「うっ!」
背中からドロップキックをかまされる。
「元気だなソフィア……僕は危うく天に召される所だったよ……」
背骨が折れるかと思った……。
「陛下、さっきは無礼な口を聞いてしまい申し訳ありませんでした……」
母さんが急に改まった言い方をする。
「え……やっぱりそうなるんじゃな……」
とても悲しそうな顔でソフィアがつぶやく。
「母さん」
「なに?」
「前みたいに接してやってくれ、頼む。 あと、着替えてきてくれ。 陛下がなんだよ、ソフィアはソフィアだろ? 陛下になったからっていきなり他人行儀になるのは失礼だ。 頼む」
「太我裏……」
横でソフィアが、小さくありがとうとつぶやく。
当たり前の事をしただけだ。 小さい頃から知っているのに、身分が変わったからと言ってすぐに態度を変えるのは失礼だと僕は思う。 実際、ソフィア自身も、昔のイメージで両親と相対したい様子だし。
「ごめんなさいねソフィアちゃん。 確かに前みたいに接してあげたほうがいいのよね……ちょっと難しいけれど……」
母さんが苦笑する。
「ソフィアねぇちゃん……って呼んでもいい?」
我が愚妹が気恥ずかしそうにソフィアに尋ねる。
「何を今更言っておるのじゃ?」
「えっ……」
「もちろんじゃよ、凛花(りんか)!」
ソフィアは快諾し、愚妹に抱きつく。
「ソフィアちゃんも立派に……」
父さんが涙を流す。
結果として、以前の、ソフィアと過ごしていた時のように接してくれる家族には頭が上がらない。
「母さん、夕飯食べてもいい?」
言って、全員が席に着き、夕食がスタートする。 久しぶりの家族との食事に違和感バリバリだったが今日だけだ。
たわいのない会話をうちの家族とソフィアがしている光景はとても気持ちのいいものだった。
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