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第拾録 やっぱり王都へ
しおりを挟む夕食を食べ終わり、風呂を済ませた僕は自室のベットの上で布団でぬくぬくしながら、明日からのことを考えていた。
一体何が待っているのか。 何を指針に魔王のところまで行けばいいのか……謎は絶えない。
「太我裏……」
「おかえりソフィア」
風呂を終えたソフィアが部屋に入ってくる。
そっけない返事をすると、ソフィアが布団に入ってきた。
またもや双丘が僕を刺激する。
「ソフィアは凛花と寝るんじゃなかったのか? こんなところにいたら……」
「凛花はもう寝ておる。 妾が風呂をいただいておる間に寝てしまったようじゃ」
「そうか」
冷静を装うも、若干声が震えている自分が恥ずかしい。
「じゃから、妾もここで寝ても良いか?」
その質問に僕の心が揺れる。
頭に浮かんだ煩悩を振り払うように布団をめくり、ソフィアに正対する。
泣いていた。
ソフィアはその真紅色の瞳から一筋の涙をつたわせていた。
「ソフィア……」
窓から吹き込む風に揺られた濡れ髪が月明かりを反射し、とても艶めかしく輝く。
その光景は、脆く、儚いように思えた。
僕は何も言えず、ソフィアに抱きつく。
抱えた腕からソフィアの肩が小さく震えているのが伝わってくる。
「いっつも1人で寝てるって聞いたけど、今日はどうしたんだ?」
「妾は1人が嫌いじゃ……嫌なことばかり思い出してしまう……」
ソフィアが震えた声で続ける。
「でも仕方がないのじゃ、妾は一国の主人になってしまった……本当はこんなことになる予定ではなかったのじゃ。 でも、なってしまったからには家来に弱みは見せれないんじゃ、無理なんじゃよ……、慕ってくれている家来は家族も同然じゃと思っておったけれど、妾の弱気な姿は見せられぬ。 家来も国民。 妾という指針が揺らぐ姿は絶対に見せられぬ……」
ポロポロと大粒の涙を流しながらソフィアが言葉を紡ぐ。
「そうか。 もっと楽になれよ」
「妾は一国の……」
「ソフィア、おまえは一国の主人である前に1人の少女だ。 まだ年端のいかない少女が嬢王陛下をやってるんだ、そりゃ国民にあるべき姿を見せるのが国を背負う者の宿命だ。 だけどお前はもっと国民に、家来に甘えてもいいんだよ。 いくら正しい姿を見せたってただしすぎれば逆に人は離れていくし、完璧にこなしたところで国民はついてこない。 人の心を動かすのは共感だ。 弱みの一つや二つ見せた方が国民から見りゃ親近感のあるいい陛下だ。 だからソフィアも少し家来に甘えてみたらどうだ?」
ソフィアの手がぎゅっと僕のふくを掴む。
相当無理をしていたのだろう。 一国を背負う者の辛さは背負ったものにしかわからないと思うが、それでも少しくらい想像はできる。
泣きじゃくるソフィアを抱きしめながら僕は静かに頭を撫でた。
互いに抱きしめあったまま僕たちは深い眠りに落ちていった。
ーーチュンチュンチューン
元気な小鳥の囀りで眼を覚ます。
「……すぴー……すぴー…………」
気持ちよさそうにソフィアが僕の隣で眠っている。
「あー、なんかすごい疲れた……」
結局あの後ソフィアに起こされ、結局3時間ほどしかねれなかった……まあいいけど。
「おいクソ兄貴! ソフィアねぇちゃんをどこに……ちょっと!」
愚妹が顔を真っ赤にして部屋から出ていく。 全く朝から騒々しいやつだ。
「んっ……ん~」
愚妹の叫び声で眼を覚ましたのか、ソフィアがゆっくりと体を起こす。
「おはようソフィア……」
時が止まる。 物理的にではなく、僕の中の時が止まった。
ソフィアが……全裸⁈
やっぱりあれは夢じゃなっかたのか……いやでも僕は無実だ。 僕は確かにやったかもしれないが、限りなく現実に近い夢だと思っている、つまりあれは夢だ……もう何が言いたいのかさっぱり分からん。
「おはよ~……あ、夢じゃなかったのじゃな……」
ソフィアが嬉しそうに頬を紅く染める。
どうやらあれは現実だったらしい。
「とにかく、着替えて早く王都に戻ろう」
早口に言ってしまう。
「そうじゃな……って、その荷物を全て持っていくつもりか? 太我裏……」
ソフィアが少し口角を引きつらせて言う。
「当たり前だろ? これくらい持って行くのが定石だ」
胸を張って言える。
「いや、……多分じゃが、全部いらないと思うのじゃが……」
「なに! 僕の完璧すぎて火の打ち所のないこの装備をいらないだと……」
ソフィアが荷物の荷ほどきを始める。
「これと……後は……」
僕の荷物はみるみる減っていき、やがてパンツとランタンだけになってしまった。
とても悲しく寂しいカバンになってしまった……。
「こんなもんじゃろ」
うんうん、とソフィアが頷く。
「僕の外でもウキウキ引きこもりセットが……」
「何をしておるのじゃ? 早く行こうではないか」
うなだれている僕をソフィアがまくし立てる。
仕方なく着替えをすませ、両親の寝ている横を通り家を後にする。
「両親にあいさつはいらないのか?」
「ああ。 昨晩はそれなりに楽しかったけれど、やっぱり僕は両親を許せないし……挨拶なんてしてやらないさ」
「そうか、太我裏がそれでいいのならそれでいいのじゃが……」
ソフィアが少し残念そうな顔で家を見る。
「陛下、お迎えにあがりました」
先日の執事が馬車を引いて家の前に止まる。
「では、行こうか」
ソフィアとともに馬車に乗り込みユウジキ村を後にする。
しばらく馬車に揺られていると、ふと行きに見た看板が目に入った。
「そういえばあの看板、ソフィア自身で文字を書いたわけじゃないよな?」
ちょっとした疑問を投げかける。
「あの看板は妾は触れてもおらん。 ちなみに書いたのはそこにいる執事のミラじゃ」
さらっと言う。
「あの書き方だと色々誤解を生むような……」
それにしても、あの落ち着いた様子の執事があんなにはっちゃけた文章を書くとはな……人は見かけによらないものだな。
一つ疑問が晴れたところで、おもいだす。
「あれ、この指輪使えば王都まで速攻いけるんじゃね?」
「あ……その指はの存在を忘れておった……」
行きのように手順を踏み、念じる。
ーー王都へ
またもや僕は青白い光に包まれ王都へたどり着いた。 ソフィアも執事も馬車も全部引き連れて。
指輪有能すぎ……。
こうして僕らはふたたび王都の土を踏んだのだった。
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