上 下
45 / 109

ストレス発散ですよ?

しおりを挟む
ふぅ~~~

シオンは仁王立ちして、目を閉じ両手を腰に当てて深呼吸をして、集中力を高めていた。

はぁぁぁぁ!!!!!

小さく気合いを入れつつ両手に力を込めた。

カッ!!!!

目を開き、瞬間的に力を爆発させた。

「アッタタタタタタタタタタタタタッ!!!アチョウ!!!!!!!!!!!」

訓練室に吊るしてあったサンドバックに、目にも止まらない速さで、拳の連打を繰り出していた。一呼吸で数え切れないほどの連打をした後、最後は廻し蹴りを決めると、サンドバッグは真ん中から切れて、中から砂がこぼれ落ちた。

「フシューーーーーー」

大きく息を吐くとまた、先ほどの構えに戻った。

パチパチッ
パチパチッ

静かな訓練室に拍手が鳴った。

「…………なんの御用ですか?」

シオンは普通の令嬢では絶対に着ることのない、『胴着』姿であった。空手とか柔道とかで着る服ね。

「素晴らしい攻撃だったぞ」

拍手をしたのは紅さんだった。いったいいつからいたのやら。

「それはどうも」
「しかし、シオンが絵だけではなく、格闘も出来るとは知らなかった!素晴らしい武術だったぞ!」

大絶賛する紅さんに、シオンは首を傾げた。

「いいえ?別に武術は出来ないですよ?」
「うん?武術だろ?今のは???」

シオンは壊れたサンドバッグを指差して言った。

「あれは、ストレス発散の道具に過ぎませんよ?」

「えっ?」
「ええっ!?」

お互いに別の意味での戸惑いが生じた。

「絵を集中して描くと、肩が凝ったりイライラしてきたりするので、定期的にこうやってストレスを発散しているのです」

ドヤァ~と、腰に手を当ててドヤァ顔で言うシオンに、紅は思った。バカと天才は紙一重だと言う言葉が脳裏を駆け巡った。

ストレス発散って言っている割に、また集中していたような?まぁ、物を殴ることは発散にはいいだろうが…………なんだかなー?

「ああ、ポンコツ姫がどんどん規格外の怪物になっていくわ………」

ちょうどフィーネもやってきて、ハラハラと涙を流しながら遠い目をした。

「失礼ね!私は至って普通の令嬢よ!規格外な令嬢って言うのはメリッサちゃん達の事を言うのよ!」

シオンは真面目に答えたつもりだが、失礼な事を言っている自覚がなかった。

「確かに、あれからメリッサの伸びしろは素晴らしいな。剣術だけなら大人顔負けぐらいの技量を数ヶ月で身に付けた。後は実戦経験を積めばルークと互角に渡り合えるだろう」

剣聖のスキル持ちのお兄様と互角だと!?

「ほら見たことか!私は至って普通でしょう?」

フィーネも驚いている状態だった。

「それ本当に?」
「アタイが嘘を言うはずがないだろう?贔屓目もしてないぞ?」

フィーネは信じられず、中庭の方へ飛んでいった。

「あっ、待ちなさいよ~」

シオンも後に続いた。
中庭に着くとメリッサにフィーネが詰め寄っていた。

「本当に剣聖のスキルを持つルークと互角になったの!?」
「えっ、あっ……まだ10本勝負で2本しか………」

!?

いやいや!?
それでも十分に凄いよ!?

「なんだお前達、メリッサの実力を聞いたのか?そんなに驚くものでもないだろう?メリッサも剣聖のスキルを持っているんだから?」


……………なんだと?








しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

母獣列島

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:35

どっち行く? 続。。もう愛は要らない

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:225

俺は彼女に逆らえない

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

女給志乃の謎解き奇譚

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

とんでもなく悪い奴

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:14

耳の聞こえない僕があなたの声を聞くまでの物語

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:43

最強猫科のベヒーモス ~モフりたいのに、モフられる~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1,713

(仮)仮のカレシと仮カノジョ

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

年下の幼馴染♂が好みの美女になりすぎて辛い。

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:44

処理中です...