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過去編
エルザ国が変わる時
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いつまでもアガレス王国が攻めて来ないとも限らない。王子達や貴族達はそれがわかっていないのだ。
宰相のサイモンは国の行く末を憂いていた。
アガレス王国はいつも自衛をするだけで、攻めてきた事は1度もない。貴族達は腰抜けと侮っていたが、それは違う。
ここ十数年は内政に力を入れており、民の豊かさや、国の文明レベル、国力はどんどん差がでてきているのだ。
「はぁ~愚王が居なくなって、少しは良くなるかと思ったのですが、国のトップが腐ると末端まで腐るのですか」
サイモンは何度目かのため息をついた。
愚王ヨダズクに苦言を申せる数少ない忠臣であり、あの愚王ですらサイモンの手腕を認めており、多少の無礼を言ってもクビに出来ない人材だったのだ。
意を決意したサイモンは皆が寝静まった深夜動いた。
配下の者数名を連れて地下牢に向かった。
「来たか」
地下牢には連行されたマーチス将軍がいた。
「…………貴方こそ何をやっているのですか?」
「見てわからんのか?筋トレをしている」
腕立て伏せをしているマーチス将軍にサイモンは頭が痛くなった。
「じっとしていては筋力が衰えるのでな。幸いに、食事は十分な量を持ってきてくれるので、毎日やっていたのだ」
「そうですか。貴方の脳筋ぷりっを甘く見ていましたよ。それより早く出て下さい。城を出て我々の【主君】の下に向かいますよ」
鍵を開けて2人は城を抜け出し、【国境砦】に向かった。
馬で飛ばして国境砦に着くと意外な人物が待っていた。
「まさか、すでに貴方がここにいるとは思いませんでした。…………カイル皇王陛下」
待っていたのはカイル皇王だった。
すでにエルザ側の国境砦が陥ちて…………いた訳ではない。エルザ国、王女イザツイが交渉の申入れの為に『秘密裏』に呼んだのだ。
「ああ、こうして会うのは初めてだな。宰相サイモン殿、マーチス将軍。王女とはすでにじっくりと話し合った。そちらの要望に応えられそうだ」
宰相が少し驚いた顔をして王女イザツイに視線を送った。
「サイモン宰相、カイル皇王陛下は、今までの我々の国の無礼を許してくれました。そして、これからは国同士で、手を取り合ってより豊かにしていく事を約束してくれました。無論、先の侵攻に伴う賠償金はお支払いしますが」
「なんと!本当に宜しいのですか!?貴国にはメリットが少ないと思いますが…………」
宰相は条約の契約内容をじっくりと読んで、驚きの声をあげた。
「確かに今のエルザ国なら攻め落として自国の領土にする事はできるだろうな。だが、国を治めると言うのは大変に難しい。宰相殿なら理解できるだろう?それに、莫大な賠償金を請求して民が困窮しては本末転倒だ。ならば、お互いに利益のある取引をしてお互いに国を発展させていった方が効率が良いと判断した」
!?
確かに侵略して手に入れた土地の統治は難しい。属国になっても、貴族や民の不満は溜まり、いずれは反乱を起こすかも知れない。
ならばお互いに友好関係を結んで利益をだした方が良いとは………
サイモン宰相は目の前のカイル皇王が自国の王であったなら、どれほど支え合いがあったかと悔しがった。
「それで、こちらアガレス側からは一切、兵は出さないのでいいな?」
「ええ、構いません。アガレス側の兵を借りると侵略行為になりますし、それにエルザ国を正常にさせるのに兵を借りると、後から恩に着せられて不利な条約とか強制されかねませんからね」
ここでマーチス将軍が口を挟んだ。
「私は地下牢に捕らえられていて、今の情勢がわからないのだが、この砦には数百の兵力しかないのだろう?どうやって王都に攻め入り、権力争いをしている王子と貴族達を止めるのだ?」
カイルとイザツイは顔を見合わせ笑った。
「貴国の捕虜にしている兵をお返しする。1万もの兵力があればマーチス将軍の指揮の下、王都の制圧は可能だろう」
あっと、気付かされたマーチス将軍はすぐに頭の中で進軍の計算を始めるのだった。
宰相のサイモンは国の行く末を憂いていた。
アガレス王国はいつも自衛をするだけで、攻めてきた事は1度もない。貴族達は腰抜けと侮っていたが、それは違う。
ここ十数年は内政に力を入れており、民の豊かさや、国の文明レベル、国力はどんどん差がでてきているのだ。
「はぁ~愚王が居なくなって、少しは良くなるかと思ったのですが、国のトップが腐ると末端まで腐るのですか」
サイモンは何度目かのため息をついた。
愚王ヨダズクに苦言を申せる数少ない忠臣であり、あの愚王ですらサイモンの手腕を認めており、多少の無礼を言ってもクビに出来ない人材だったのだ。
意を決意したサイモンは皆が寝静まった深夜動いた。
配下の者数名を連れて地下牢に向かった。
「来たか」
地下牢には連行されたマーチス将軍がいた。
「…………貴方こそ何をやっているのですか?」
「見てわからんのか?筋トレをしている」
腕立て伏せをしているマーチス将軍にサイモンは頭が痛くなった。
「じっとしていては筋力が衰えるのでな。幸いに、食事は十分な量を持ってきてくれるので、毎日やっていたのだ」
「そうですか。貴方の脳筋ぷりっを甘く見ていましたよ。それより早く出て下さい。城を出て我々の【主君】の下に向かいますよ」
鍵を開けて2人は城を抜け出し、【国境砦】に向かった。
馬で飛ばして国境砦に着くと意外な人物が待っていた。
「まさか、すでに貴方がここにいるとは思いませんでした。…………カイル皇王陛下」
待っていたのはカイル皇王だった。
すでにエルザ側の国境砦が陥ちて…………いた訳ではない。エルザ国、王女イザツイが交渉の申入れの為に『秘密裏』に呼んだのだ。
「ああ、こうして会うのは初めてだな。宰相サイモン殿、マーチス将軍。王女とはすでにじっくりと話し合った。そちらの要望に応えられそうだ」
宰相が少し驚いた顔をして王女イザツイに視線を送った。
「サイモン宰相、カイル皇王陛下は、今までの我々の国の無礼を許してくれました。そして、これからは国同士で、手を取り合ってより豊かにしていく事を約束してくれました。無論、先の侵攻に伴う賠償金はお支払いしますが」
「なんと!本当に宜しいのですか!?貴国にはメリットが少ないと思いますが…………」
宰相は条約の契約内容をじっくりと読んで、驚きの声をあげた。
「確かに今のエルザ国なら攻め落として自国の領土にする事はできるだろうな。だが、国を治めると言うのは大変に難しい。宰相殿なら理解できるだろう?それに、莫大な賠償金を請求して民が困窮しては本末転倒だ。ならば、お互いに利益のある取引をしてお互いに国を発展させていった方が効率が良いと判断した」
!?
確かに侵略して手に入れた土地の統治は難しい。属国になっても、貴族や民の不満は溜まり、いずれは反乱を起こすかも知れない。
ならばお互いに友好関係を結んで利益をだした方が良いとは………
サイモン宰相は目の前のカイル皇王が自国の王であったなら、どれほど支え合いがあったかと悔しがった。
「それで、こちらアガレス側からは一切、兵は出さないのでいいな?」
「ええ、構いません。アガレス側の兵を借りると侵略行為になりますし、それにエルザ国を正常にさせるのに兵を借りると、後から恩に着せられて不利な条約とか強制されかねませんからね」
ここでマーチス将軍が口を挟んだ。
「私は地下牢に捕らえられていて、今の情勢がわからないのだが、この砦には数百の兵力しかないのだろう?どうやって王都に攻め入り、権力争いをしている王子と貴族達を止めるのだ?」
カイルとイザツイは顔を見合わせ笑った。
「貴国の捕虜にしている兵をお返しする。1万もの兵力があればマーチス将軍の指揮の下、王都の制圧は可能だろう」
あっと、気付かされたマーチス将軍はすぐに頭の中で進軍の計算を始めるのだった。
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