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第1章 温度差
実を結んでいた自分の行動
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自分の正面には、一人の少年が。
「おおっ、びっくりした…。カミル、久しぶりだね。」
暗くなりかけた表情を瞬時に微笑みで塗り替えたキリハは、カミルのふわふわとした髪をなでる。
「お兄ちゃん、悲しいの?」
開口一番にずばり核心を突かれ、とっさに強がりを口にすることもできなかった。
まったく。
子供の洞察力は、本当に侮れないというか。
いつも無邪気に痛いところをつついてくるもんだから、根が正直な自分は返答に困ることが多くて大変なのだ。
「なんでもないよ。」
再度笑みを繕い、キリハはカミルにそう答えた。
「そうなの?」
「うん。」
「ふーん。」
カミルは特に疑うような素振りは見せず、ただ不思議そうに首を傾げるだけだった。
こんな小さな子を心配させるとは情けない。
頼れる明るいお兄ちゃんで通っていたレイミヤ時代の自分が泣くぞ。
とはいえ、レイミヤで過ごしていた時は悩み事とはまるで縁がなかったので、こういう時にどう立ち回ればいいのかさっぱり分からない。
正直な心境と言うと、悩んでいる自分に自分自身が一番戸惑っているという状態だ。
(だめだな、俺……)
そんな風に自己嫌悪しそうになって、慌ててその思考を振り払う。
「ねーねー。」
その時、カミルが服の袖を引っ張ってきた。
また内心を見抜かれたのかと思ってドキリとしたけど、次にカミルが問いかけてきたことは、こちらが危惧するようなものではなかった。
「お兄ちゃん。メイア君やレイ君って、今度いつ来るの?」
「へ? あ、ああ……いつかなぁ?」
これまた想像していなかった質問だったので、普通に流されたキリハは腕を組んで考える。
メイアとレイは、レイミヤの孤児院にいる子供だ。
中央区の子供たちの認識だけでも変えようという作戦は今も継続中で、月に何度かは孤児院の子供たちを呼んで中央区の子供たちと交流させている。
その中で、カミルはメイアやレイと仲良くなったようだ。
「ごめん。まだ決まってないや。」
最近は自分のことで頭がいっぱいで、すっかりレイミヤの人々と連絡を取ることを忘れていた。
カミルはこちらの回答を聞くなり、しゅんとうなだれる。
「そっか…。早く会いたいなあ……」
「えっと……その……メイアやレイと遊ぶの、楽しい?」
あまりにもカミルが落ち込むので、キリハはそう問いかけてみる。
すると―――
「うん!!」
カミルは表情を一転させ、満面の笑みを浮かべた。
「二人ともね、チャンバラすっごく強いんだよ! それに、サッカーとかも上手いの。ぼく、メイア君とレイ君と遊んでる時が一番楽しいんだ!! 他の子たちは、ゲームばっかりなんだもん。」
活き活きとしたカミルの言葉。
それは、今の自分にとって何よりも嬉しい言葉だった。
だって……この言葉は、今までの自分の行動が確実に意味をなしている証拠なんだもの。
カミルの世界や価値観が、少しずつ変化してきているということに他ならないのだ。
せめて子供たちにだけでも世界が変わるきっかけを与えられればいいと思っていたけど、こんなに早く直接的な変化を見ることができるとは。
「ごめんね! すぐに連絡して、早く連れてくるから!」
悩みなんか嬉しさで吹っ飛んでしまい、キリハは思い切りカミルの頭を掻き回した。
「よし! 今日は、メイアたちの代わりに俺が遊んであげる。」
「ほんと!?」
「ほんと、ほんと。」
期待がこもったカミルと目を合わせ、キリハはにかっと笑う。
「よっし、遊ぼう!」
大声を張ると、遠目にこちらを見ていた他の子供もピクリと反応した。
「ほら、みんなも。」
「ええーっ!」
巻き添えをくらった中学生たちは、露骨に面倒そうな顔をする。
「たまにはいいじゃん。ここにいるってことは、どうせ暇なんでしょ?」
とは言うものの、別に強制するつもりはないので、キリハは今か今かと待っている子供たちの元へと駆けていった。
自分が有名であろうがなかろうが、こういう幼い子供たちの態度はそう変わらないものだ。
周囲の態度の変化に参っている今は、そのことが何よりも嬉しくて癒しにもなった。
幼い子供を心配させるべきではないと思っておきながら、結局は子供たちに救われている状況なのだが、彼らも楽しそうだし、今はおあいこということで納得しよう。
時々取れそうになるフードを気にしつつも、キリハはレイミヤでの日々を思い起こさせる時間に没頭していくのであった。
「おおっ、びっくりした…。カミル、久しぶりだね。」
暗くなりかけた表情を瞬時に微笑みで塗り替えたキリハは、カミルのふわふわとした髪をなでる。
「お兄ちゃん、悲しいの?」
開口一番にずばり核心を突かれ、とっさに強がりを口にすることもできなかった。
まったく。
子供の洞察力は、本当に侮れないというか。
いつも無邪気に痛いところをつついてくるもんだから、根が正直な自分は返答に困ることが多くて大変なのだ。
「なんでもないよ。」
再度笑みを繕い、キリハはカミルにそう答えた。
「そうなの?」
「うん。」
「ふーん。」
カミルは特に疑うような素振りは見せず、ただ不思議そうに首を傾げるだけだった。
こんな小さな子を心配させるとは情けない。
頼れる明るいお兄ちゃんで通っていたレイミヤ時代の自分が泣くぞ。
とはいえ、レイミヤで過ごしていた時は悩み事とはまるで縁がなかったので、こういう時にどう立ち回ればいいのかさっぱり分からない。
正直な心境と言うと、悩んでいる自分に自分自身が一番戸惑っているという状態だ。
(だめだな、俺……)
そんな風に自己嫌悪しそうになって、慌ててその思考を振り払う。
「ねーねー。」
その時、カミルが服の袖を引っ張ってきた。
また内心を見抜かれたのかと思ってドキリとしたけど、次にカミルが問いかけてきたことは、こちらが危惧するようなものではなかった。
「お兄ちゃん。メイア君やレイ君って、今度いつ来るの?」
「へ? あ、ああ……いつかなぁ?」
これまた想像していなかった質問だったので、普通に流されたキリハは腕を組んで考える。
メイアとレイは、レイミヤの孤児院にいる子供だ。
中央区の子供たちの認識だけでも変えようという作戦は今も継続中で、月に何度かは孤児院の子供たちを呼んで中央区の子供たちと交流させている。
その中で、カミルはメイアやレイと仲良くなったようだ。
「ごめん。まだ決まってないや。」
最近は自分のことで頭がいっぱいで、すっかりレイミヤの人々と連絡を取ることを忘れていた。
カミルはこちらの回答を聞くなり、しゅんとうなだれる。
「そっか…。早く会いたいなあ……」
「えっと……その……メイアやレイと遊ぶの、楽しい?」
あまりにもカミルが落ち込むので、キリハはそう問いかけてみる。
すると―――
「うん!!」
カミルは表情を一転させ、満面の笑みを浮かべた。
「二人ともね、チャンバラすっごく強いんだよ! それに、サッカーとかも上手いの。ぼく、メイア君とレイ君と遊んでる時が一番楽しいんだ!! 他の子たちは、ゲームばっかりなんだもん。」
活き活きとしたカミルの言葉。
それは、今の自分にとって何よりも嬉しい言葉だった。
だって……この言葉は、今までの自分の行動が確実に意味をなしている証拠なんだもの。
カミルの世界や価値観が、少しずつ変化してきているということに他ならないのだ。
せめて子供たちにだけでも世界が変わるきっかけを与えられればいいと思っていたけど、こんなに早く直接的な変化を見ることができるとは。
「ごめんね! すぐに連絡して、早く連れてくるから!」
悩みなんか嬉しさで吹っ飛んでしまい、キリハは思い切りカミルの頭を掻き回した。
「よし! 今日は、メイアたちの代わりに俺が遊んであげる。」
「ほんと!?」
「ほんと、ほんと。」
期待がこもったカミルと目を合わせ、キリハはにかっと笑う。
「よっし、遊ぼう!」
大声を張ると、遠目にこちらを見ていた他の子供もピクリと反応した。
「ほら、みんなも。」
「ええーっ!」
巻き添えをくらった中学生たちは、露骨に面倒そうな顔をする。
「たまにはいいじゃん。ここにいるってことは、どうせ暇なんでしょ?」
とは言うものの、別に強制するつもりはないので、キリハは今か今かと待っている子供たちの元へと駆けていった。
自分が有名であろうがなかろうが、こういう幼い子供たちの態度はそう変わらないものだ。
周囲の態度の変化に参っている今は、そのことが何よりも嬉しくて癒しにもなった。
幼い子供を心配させるべきではないと思っておきながら、結局は子供たちに救われている状況なのだが、彼らも楽しそうだし、今はおあいこということで納得しよう。
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