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第3章 カリスマ王の猛進
ノアVSディアラント
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普段のおふざけモードを取り下げたディアラントは、怖いほどに真剣な表情でノアと対峙する。
「断言しますよ。仮にオレが何人かをあなたに譲ったとしても、彼らはここ以上の力を、ルルアでは出さないと思います。」
断言すると、片方の眉を上げたノアが〝何故そう思う?〟と態度で問うてくる。
「今ここにいる人たちは、この部隊を志願してきたわけじゃない。ここに来ることが危険だと分かっていて、それでも〝オレ〟を選んでここに来てくれたんです。それが分からないほどオレも馬鹿じゃないし、それを分かっていて、みんなの信頼を裏切るほど愚かでもないです。」
自分の部隊のことは、自分が一番理解しているつもりだ。
皆から寄せられている、絶対的な信頼。
危険な戦いと賭けを知っていてなお、自分に背を預けてくれたその覚悟。
それらの価値を、踏みにじることだけはしない。
「あなたも、それは分かっているんでしょう?」
黙ったノアに畳み掛けるディアラント。
「オレの時もそうでしたけど、あなたは、最初から自分の素性を明かすことだけは絶対にしませんよね? 相手と対等な立場に立って、相手にも対等な立場に立ってもらって、それから人となりを吟味する。自分の方に引き込む時も、権力と待遇に訴えず、気持ち一本で相手と向き合ってきたでしょう? それが、あなたのやり方です。」
ノアに引き留められて、なんだかんだとルルアには四ヶ月ほど滞在した。
その中で、ノアの志向性はそれなりに熟知している。
次なるディアラントの指摘にも、ノアは反論しなかった。
ディアラントはさらに続ける。
「そんな回りくどいやり方をするあなたなら、分かるはずですよ。オレの部隊から誰かを引き抜いたところで、自分の役には立たないと。いつまでオレのことを試すんです?」
来る者拒まず、去る者追わずの自分。
価値を見出だした人間は、絶対に逃さないノア。
他人に対する姿勢は反対だが、自分もノアも、その根幹に横たわる信念は同じ。
その人のあり方を決めるのは、その人の心だけ。
だから、相手に自分を押しつけるのではなく、相手に望まれる自分であるように。
自分も相手も、本当の意味で信頼し合えるように。
つまりは、そういうこと。
その想いを知っているノアが、こんな直情的な物言いをするわけがないのだ。
本気で自分から隊員を奪っていきたいなら、彼女はこうして自分に交渉を持ちかけない。
面と向かって、一対一で隊員を落としにかかっただろう。
「―――本当に、面白くない奴だな。」
ぽつりと、ノアが呟いた。
「ああもう!!」
一瞬でまとう雰囲気を一変させたノアが、来客用のソファーへと身を投げる。
「ちょっとくらい狼狽えて、私を失望させてくれてもいいじゃないか。諦めるに諦められんだろうが。」
とうとう、彼女の口から本音が零れた。
「まさか、今日はそのためにずっと…?」
「そうだ。こう見えて、私はかなり往生際が悪いのだ。」
「いや、誰の目から見ても分かりますよ。」
「黙らんか。」
ノアは拗ねたように膨れっ面をする。
「とにかく、お前を諦められるように、徹底的にお前の落ち度を探そうとしたのだ。」
「その結果、見事に理想とは真逆の展開だったと。」
「認めるのは癪だが、そのとおりだ。」
深々と吐息をつくノア。
「不測の事態を作ったつもりではあったが、さもそれが当然であるかのような人員配備と、隊員に無理のないスケジュール管理。こちらの話に付き合いつつも、機密事項は漏らさない器量のよさ。ちょっとやそっとじゃ打破できないセキュリティ。どれを取っても、文句のつけようがなくてな。少しばかり、お前が憎たらしいぞ。」
「……はい?」
ノアの言葉の中に引っかかる単語を聞き咎め、ディアラントは思わず席から立ち上がってしまった。
「ちょっと待ってください。セキュリティって……昨日の今日で、そんな犯罪すれすれレベルのとこまで手を出したんですか?」
「私としてはそのセキュリティを突破したかったが、ウルドがそれはやめろと言うから諦めた。」
「英断です。それだけはやっちゃいけません。後悔するのはあなたですよ。」
ディアラントは冷や汗をかく。
「どういう意味だ?」
ノアは、目だけをディアラントへと向けた。
「あー…その……」
ディアラントは言い澱む。
果たして、これを正直に言っていいものかどうか。
だが、下手に動揺してしまった手前、適当に流してごまかせる雰囲気でもない。
しばらく唸っていたディアラントは、やがて観念したように肩を落とした。
「一応、あなたのためを思って先に言っておきますね? 別に隊員を自慢したいとか、そういうわけじゃないですからね?」
「?」
何度も念を押すディアラントに、少しも話の輪郭を掴めていないノアは、やはり首を捻るだけだ。
本当に、色々と手遅れになる前でよかった。
ディアラントは眉間を押さえる。
そして、執務室の奥にあるドアに向かって声を放った。
「……ジョー先輩、ミゲル先輩。出てきてくださいよ。どうせ、残業ついでに話は聞いてますよね?」
「断言しますよ。仮にオレが何人かをあなたに譲ったとしても、彼らはここ以上の力を、ルルアでは出さないと思います。」
断言すると、片方の眉を上げたノアが〝何故そう思う?〟と態度で問うてくる。
「今ここにいる人たちは、この部隊を志願してきたわけじゃない。ここに来ることが危険だと分かっていて、それでも〝オレ〟を選んでここに来てくれたんです。それが分からないほどオレも馬鹿じゃないし、それを分かっていて、みんなの信頼を裏切るほど愚かでもないです。」
自分の部隊のことは、自分が一番理解しているつもりだ。
皆から寄せられている、絶対的な信頼。
危険な戦いと賭けを知っていてなお、自分に背を預けてくれたその覚悟。
それらの価値を、踏みにじることだけはしない。
「あなたも、それは分かっているんでしょう?」
黙ったノアに畳み掛けるディアラント。
「オレの時もそうでしたけど、あなたは、最初から自分の素性を明かすことだけは絶対にしませんよね? 相手と対等な立場に立って、相手にも対等な立場に立ってもらって、それから人となりを吟味する。自分の方に引き込む時も、権力と待遇に訴えず、気持ち一本で相手と向き合ってきたでしょう? それが、あなたのやり方です。」
ノアに引き留められて、なんだかんだとルルアには四ヶ月ほど滞在した。
その中で、ノアの志向性はそれなりに熟知している。
次なるディアラントの指摘にも、ノアは反論しなかった。
ディアラントはさらに続ける。
「そんな回りくどいやり方をするあなたなら、分かるはずですよ。オレの部隊から誰かを引き抜いたところで、自分の役には立たないと。いつまでオレのことを試すんです?」
来る者拒まず、去る者追わずの自分。
価値を見出だした人間は、絶対に逃さないノア。
他人に対する姿勢は反対だが、自分もノアも、その根幹に横たわる信念は同じ。
その人のあり方を決めるのは、その人の心だけ。
だから、相手に自分を押しつけるのではなく、相手に望まれる自分であるように。
自分も相手も、本当の意味で信頼し合えるように。
つまりは、そういうこと。
その想いを知っているノアが、こんな直情的な物言いをするわけがないのだ。
本気で自分から隊員を奪っていきたいなら、彼女はこうして自分に交渉を持ちかけない。
面と向かって、一対一で隊員を落としにかかっただろう。
「―――本当に、面白くない奴だな。」
ぽつりと、ノアが呟いた。
「ああもう!!」
一瞬でまとう雰囲気を一変させたノアが、来客用のソファーへと身を投げる。
「ちょっとくらい狼狽えて、私を失望させてくれてもいいじゃないか。諦めるに諦められんだろうが。」
とうとう、彼女の口から本音が零れた。
「まさか、今日はそのためにずっと…?」
「そうだ。こう見えて、私はかなり往生際が悪いのだ。」
「いや、誰の目から見ても分かりますよ。」
「黙らんか。」
ノアは拗ねたように膨れっ面をする。
「とにかく、お前を諦められるように、徹底的にお前の落ち度を探そうとしたのだ。」
「その結果、見事に理想とは真逆の展開だったと。」
「認めるのは癪だが、そのとおりだ。」
深々と吐息をつくノア。
「不測の事態を作ったつもりではあったが、さもそれが当然であるかのような人員配備と、隊員に無理のないスケジュール管理。こちらの話に付き合いつつも、機密事項は漏らさない器量のよさ。ちょっとやそっとじゃ打破できないセキュリティ。どれを取っても、文句のつけようがなくてな。少しばかり、お前が憎たらしいぞ。」
「……はい?」
ノアの言葉の中に引っかかる単語を聞き咎め、ディアラントは思わず席から立ち上がってしまった。
「ちょっと待ってください。セキュリティって……昨日の今日で、そんな犯罪すれすれレベルのとこまで手を出したんですか?」
「私としてはそのセキュリティを突破したかったが、ウルドがそれはやめろと言うから諦めた。」
「英断です。それだけはやっちゃいけません。後悔するのはあなたですよ。」
ディアラントは冷や汗をかく。
「どういう意味だ?」
ノアは、目だけをディアラントへと向けた。
「あー…その……」
ディアラントは言い澱む。
果たして、これを正直に言っていいものかどうか。
だが、下手に動揺してしまった手前、適当に流してごまかせる雰囲気でもない。
しばらく唸っていたディアラントは、やがて観念したように肩を落とした。
「一応、あなたのためを思って先に言っておきますね? 別に隊員を自慢したいとか、そういうわけじゃないですからね?」
「?」
何度も念を押すディアラントに、少しも話の輪郭を掴めていないノアは、やはり首を捻るだけだ。
本当に、色々と手遅れになる前でよかった。
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そして、執務室の奥にあるドアに向かって声を放った。
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