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第3章 カリスマ王の猛進
魔王様、ご満悦。
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とある苦い確信を胸に、幹部二人を呼んだディアラント。
その呼びかけから数秒後、すぐにドアが開いた。
「ディア……頼むから、呼ぶならもう少し早くしてくれ。ジョーが活き活きしすぎて、マジで怖かったじゃねぇか。」
ドアの向こうから顔を覗かせたミゲルは、気疲れした息をつく。
さらにその奥から。
「えー。怖いだなんて失礼な。僕は、自分の仕事をしてただけなのに。」
ちょっぴり不満そうな、そしてその不満を遥かに上回る上機嫌さを滲ませたジョーの声が聞こえてくる。
「盗み聞きさせるとは、無粋だな。」
「いきなり押しかけてきておいて、無茶言わないでくださいよ。出入口はそこにしかないんですから。それに、奥の部屋に誰かがいることくらい、気付いてたでしょうが。」
「まあな。」
ノアは当然だと言わんばかりに頷いた。
それに対して、ディアラントは肩を落とすしかない。
ノアが執務室に飛び込んできた時は、すっかり帰りが遅くなってしまった自分を待ってくれていたミゲルたちと、明日以降のスケジュール調整を行っていたところだったのだ。
さっさとノアに自室へ帰ってほしかったのは、この二人を一刻も早く休ませたかったという理由が大きい。
結局話が長引いてしまって、二人には申し訳ないことをした。
しかしノアの発言を受けた後では、やはり待機していてもらってよかったと思わないでもない。
「ノア様。あくまでも、親切心で言っときますからね? 下手にうちのセキュリティに手を出すと、そこにいる魔王様に情報を全部搾り取られますよ。」
「何?」
ノアはピクリと片眉を上げて、ソファーから身を起こす。
「魔王って……ディア、普段から僕のことをそんな風に思ってたの?」
部屋から出てミゲルの隣に並んだジョーは、冗談めかした口調でディアラントに問う。
それに、ディアラントは大きく頷いた。
「思ってますよ。むしろ魔王という言葉ですら、先輩の脅威を表すには足りないと思ってるくらいです。」
「そら違いねえ。」
「もう。二人揃って、お客様の前であんまり本音を零さないでくれる?」
ディアラントだけではなくミゲルにもしみじみと言われ、ジョーはその顔に苦笑を浮かべた。
「どうせウルドさんに色々と調べさせてるでしょうから、オレからは手短に紹介します。うちで副隊長を務めてるミゲル先輩と、参謀代表を務めてるジョー先輩です。」
ディアラントの言葉に合わせ、ミゲルとジョーはノアに丁寧に頭を下げた。
「ちなみに、ノア様が褒めていたスケジュール管理と隊員の教育指導はミゲル先輩が、セキュリティ管理はジョー先輩がほとんど一人でやっています。」
「なんと…!!」
さすがに驚いたらしいノアが、口をあんぐりと開ける。
さて、本題はここから。
「ジョー先輩。」
ディアラントは、ミゲルの隣でやたらとにこにこしているジョーを見やる。
「どこまで掴んだんです?」
そこまでご機嫌なのだから、収穫ゼロというわけではあるまい。
「それが、期待してたよりはって感じかな。」
わざとらしく肩をすくめるジョー。
「もう少し粘ってくれれば、いい感じにウイルスを忍び込ませられたのに、ちょっと残念。せっかく、頑張れば第一層には辿り着けるくらいに甘くしておいたのになぁ。」
やはりいつものように、攻撃を逆手に取る策を講じていたか。
過去にも彼はこうして、セキュリティを破ろうとした人間の情報をかすめ取り、多くの人々を未然に黙らせている。
本当に、ウルドが止めてくれて助かった。
溜め息をつくディアラントに、ジョーがさらに続けた。
「あ、そうそう。キリハ君がよく行ってるライザ海岸近くに、今は使ってない空軍施設跡地があるよね?」
「え、ええ…。ありましたけど。」
答えながらも、ディアラントは今一つピンとこない顔。
しかしその顔も、次のジョーの発言で一変する。
「あそこ、ターニャ様の許可を取ってノア様に貸してあげて。いくらそれ専用に造ってあるとはいえ、ずっと貨物機の中じゃ、ルーノって子が窮屈すぎて可哀想なんじゃないかな? ついでにその間だけ、レティシアとロイリアもそこに放してあげれば? 元々軍事基地ってことで周辺に人も住んでないから、ドラコンの管理場所として目はつけてたんだ。監視システムも、ちょうど復旧が終わったところだしね。」
「なっ、何故それを!?」
「ストーップ! ノア様、ルーノ連れてきてるの!?」
「今はそれどころでは―――」
「そう言うってことは、連れてきてるのね!?」
明らかに狼狽えるノアに、ディアラントはまた頭を抱えた。
セレニアに来るつもりがあるなら、ドラゴン関連の話題には気をつけろと、あれほど言っておいたのに。
自重するどころか、大爆弾を連れてくるとは。
ミゲルは明後日の方向を見つめて、部外者を装っている。
おそらくは奥で、先に話を聞いていたのだろう。
この話題に関しては、一切突っ込む気はないようだ。
「分かりました。すぐに手配します。」
ともかく、変に騒がれる前に、確実に管理できる場所へルーノを移動させた方がいい。
ディアラントはパソコンの画面を立ち上げ、朝一で話ができるようにターニャへと報告のメールを打ち始めた。
その呼びかけから数秒後、すぐにドアが開いた。
「ディア……頼むから、呼ぶならもう少し早くしてくれ。ジョーが活き活きしすぎて、マジで怖かったじゃねぇか。」
ドアの向こうから顔を覗かせたミゲルは、気疲れした息をつく。
さらにその奥から。
「えー。怖いだなんて失礼な。僕は、自分の仕事をしてただけなのに。」
ちょっぴり不満そうな、そしてその不満を遥かに上回る上機嫌さを滲ませたジョーの声が聞こえてくる。
「盗み聞きさせるとは、無粋だな。」
「いきなり押しかけてきておいて、無茶言わないでくださいよ。出入口はそこにしかないんですから。それに、奥の部屋に誰かがいることくらい、気付いてたでしょうが。」
「まあな。」
ノアは当然だと言わんばかりに頷いた。
それに対して、ディアラントは肩を落とすしかない。
ノアが執務室に飛び込んできた時は、すっかり帰りが遅くなってしまった自分を待ってくれていたミゲルたちと、明日以降のスケジュール調整を行っていたところだったのだ。
さっさとノアに自室へ帰ってほしかったのは、この二人を一刻も早く休ませたかったという理由が大きい。
結局話が長引いてしまって、二人には申し訳ないことをした。
しかしノアの発言を受けた後では、やはり待機していてもらってよかったと思わないでもない。
「ノア様。あくまでも、親切心で言っときますからね? 下手にうちのセキュリティに手を出すと、そこにいる魔王様に情報を全部搾り取られますよ。」
「何?」
ノアはピクリと片眉を上げて、ソファーから身を起こす。
「魔王って……ディア、普段から僕のことをそんな風に思ってたの?」
部屋から出てミゲルの隣に並んだジョーは、冗談めかした口調でディアラントに問う。
それに、ディアラントは大きく頷いた。
「思ってますよ。むしろ魔王という言葉ですら、先輩の脅威を表すには足りないと思ってるくらいです。」
「そら違いねえ。」
「もう。二人揃って、お客様の前であんまり本音を零さないでくれる?」
ディアラントだけではなくミゲルにもしみじみと言われ、ジョーはその顔に苦笑を浮かべた。
「どうせウルドさんに色々と調べさせてるでしょうから、オレからは手短に紹介します。うちで副隊長を務めてるミゲル先輩と、参謀代表を務めてるジョー先輩です。」
ディアラントの言葉に合わせ、ミゲルとジョーはノアに丁寧に頭を下げた。
「ちなみに、ノア様が褒めていたスケジュール管理と隊員の教育指導はミゲル先輩が、セキュリティ管理はジョー先輩がほとんど一人でやっています。」
「なんと…!!」
さすがに驚いたらしいノアが、口をあんぐりと開ける。
さて、本題はここから。
「ジョー先輩。」
ディアラントは、ミゲルの隣でやたらとにこにこしているジョーを見やる。
「どこまで掴んだんです?」
そこまでご機嫌なのだから、収穫ゼロというわけではあるまい。
「それが、期待してたよりはって感じかな。」
わざとらしく肩をすくめるジョー。
「もう少し粘ってくれれば、いい感じにウイルスを忍び込ませられたのに、ちょっと残念。せっかく、頑張れば第一層には辿り着けるくらいに甘くしておいたのになぁ。」
やはりいつものように、攻撃を逆手に取る策を講じていたか。
過去にも彼はこうして、セキュリティを破ろうとした人間の情報をかすめ取り、多くの人々を未然に黙らせている。
本当に、ウルドが止めてくれて助かった。
溜め息をつくディアラントに、ジョーがさらに続けた。
「あ、そうそう。キリハ君がよく行ってるライザ海岸近くに、今は使ってない空軍施設跡地があるよね?」
「え、ええ…。ありましたけど。」
答えながらも、ディアラントは今一つピンとこない顔。
しかしその顔も、次のジョーの発言で一変する。
「あそこ、ターニャ様の許可を取ってノア様に貸してあげて。いくらそれ専用に造ってあるとはいえ、ずっと貨物機の中じゃ、ルーノって子が窮屈すぎて可哀想なんじゃないかな? ついでにその間だけ、レティシアとロイリアもそこに放してあげれば? 元々軍事基地ってことで周辺に人も住んでないから、ドラコンの管理場所として目はつけてたんだ。監視システムも、ちょうど復旧が終わったところだしね。」
「なっ、何故それを!?」
「ストーップ! ノア様、ルーノ連れてきてるの!?」
「今はそれどころでは―――」
「そう言うってことは、連れてきてるのね!?」
明らかに狼狽えるノアに、ディアラントはまた頭を抱えた。
セレニアに来るつもりがあるなら、ドラゴン関連の話題には気をつけろと、あれほど言っておいたのに。
自重するどころか、大爆弾を連れてくるとは。
ミゲルは明後日の方向を見つめて、部外者を装っている。
おそらくは奥で、先に話を聞いていたのだろう。
この話題に関しては、一切突っ込む気はないようだ。
「分かりました。すぐに手配します。」
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