竜焔の騎士

時雨青葉

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第3章 崩れ始める平穏

ひっくり返る認識

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 その後はいつもどおりの時間を過ごし、皆で夕食を取ってから部屋に戻った。


 ドアを閉めて、忘れないうちに鍵をかける。
 そうして、ほっと一息ついたところで―――


「シアノの目を通して見ていても思ったが、ルカは随分と頭の回転が早いな。」


 ふと、脳内にレクトの声が響いた。


「うっわ!?」


 唐突な出来事に、キリハはその場で思わず飛び上がる。


「ん? どうした? それだけの血を飲めば、離れていても会話ができるようになると、昨日ちゃんと言わなかったか?」


「い、言ったけど……急だったから、びっくりしちゃった……」


「安心しろ。あの量では会話ができるのと、視覚と聴覚が分かる程度だ。お前が知らない間に、お前の体で好き勝手できるほどではないよ。」


「そっか……」


「やはり、怖くなったか?」


「そんなことない。」


 最後の言葉には即で言い返し、キリハは微笑みを浮かべた。


「ルカって、本当に頭いいんだよねー。なんか、将来は弁護士を目指してるんだってカレンが言ってた。」


「なるほど……だからあの観察眼なのか。食事の間、お前のことを注意深く観察していたぞ? お前がまた無茶をやらかさないか、心配していたのではないか?」


「え、ほんと? ……もう、ルカったら。相変わらず気遣いが分かりにくいんだから。」


「弁護士というと、表情や態度に思っていることを出したら、交渉に負けるからな。そうなるのも仕方あるまい。」


「単純に褒められるのが苦手だから、気遣いに気付かれたくないだけって気もするけど。」


「ははは。私には、そこまでは分からんよ。」


 他愛もない話をしながら、リビングへと向かう。
 そしていつもそうするように、郵便受けに届いていたプリントなどに目を通していると。


「またか……」


 淡い紫色の封筒が視界に飛び込んできて、気分が一気に滅入ってしまった。


「ん? なんだ、それは?」


 声からこちらの心境を察したのか、レクトがそう訊ねてくる。


 さすがに気味が悪くなってきたので、誰かに吐き出したかったのかもしれない。
 問われた瞬間、意識するよりも先に口が動いていた。


「二~三ヶ月前くらいから、変な手紙が届くんだよね。」


 言いながら、中身を抜き出す。


「これは……」
「ね? なんか、気持ち悪いでしょ?」


 うめくレクトに同意を求めながら、溜め息をつくキリハ。


「差出人は?」
「それが分かったら苦労しないよ。そろそろ、ディア兄ちゃんたちに相談した方がいいかなぁ…?」


「ふむ……別に止めはしないが、すすめもしないな。」
「どうして?」


「お前……もし取ってあるなら、これまでの写真を全部見せてみろ。」
「へ? う、うん……」


 レクトの声に呆れた雰囲気が混じったのが気になったが、ひとまずは言われたとおりに、これまで送られてきた写真の数々を見せる。


「やはりな……」


 写真を全て見たレクトは、深刻そうな吐息を一つ。
 それに対し、キリハはいまひとつ要領を得ていない表情でうなる。


「うーん…?」
「やれやれ……」


 レクトはまた息を吐きながら、この写真から述べられることを話し始めた。


「この写真をよく見てみろ。お前がいたという孤児院や、エリクの家まで写っていないか?」


「うん。それが?」
「お前……危機感がなさすぎるぞ。」


 レクトが苦々しく、そう言った。


「分かりやすく言うと、これはお前のプライベートを知り尽くしているというメッセージだ。見方を変えれば―――〝妙な真似をするなら、お前の大事な人間に手を出すぞ〟という脅しとも取れる。」


「―――っ!?」


 ただの嫌がらせかと思っていた写真に込められた、とんでもないメッセージ。
 レクトの言葉が脳裏で木霊こだまして、途端に背筋が凍りついた。

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