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第5章 亡霊の正体
想像以上に長い繋がり
しおりを挟む「キリハ!!」
車から降りると、今か今かと待ちわびていたメイとナスカが大慌てで駆け寄ってきた。
「ああ…っ。無事でよかった。本当に…っ」
有無を言わさずに自分の頭を胸に抱え込んで、メイは涙を流しながら震えた。
「ばあちゃん……ごめん。」
「謝らなくていいんだよ。何も言わなくていい。とにかく今は、ゆっくりと休みな。」
「うん……」
懐かしい匂いと優しい体温に気が抜けて、キリハはメイの胸の中で目を閉じる。
あまりにも弱々しくなってしまったキリハの様子に、ナスカも目尻いっぱいに涙を浮かべる。
しかし彼女は零れそうな涙を袖で拭うと、サーシャへと微笑みを向けた。
「サーシャちゃん、一緒に来てくれてありがとう。宮殿でのキリハを知っているサーシャちゃんがいてくれると、私たちも心強いわ。」
「いえ。なんでもお手伝いするので、バンバン言ってください!」
「何から何までありがとう。それと……」
ナスカの視線が、次へと移る。
「あなたがジョーさんですね。」
「ええ。直接お会いするのは、初めてですね。」
ナスカから好意的な表情を向けられ、ジョーも柔らかい笑みで対応する。
「いつかはディアに連れてこさせて、お会いしようと思ってたんです。ディアのことといい、キリハのことといい、あなたには五年以上も前から助けていただいて……」
「え…?」
ナスカの言葉に、キリハは思わずメイの胸から顔を上げた。
「そんなに前から、知り合いなの…?」
時おりナスカたちの口からジョーの名前を聞いていたので、彼らが知り合いであることは分かっていたが、まさか自分が宮殿に招集される前からの付き合いだったなんて。
「そっか。もう言ってもいいわね。」
ぽんと手を叩いて、ナスカは意味ありげな視線でジョーを見る。
「ジョーさんはずっと、私たちが宮殿からキリハを隠す手伝いをしてくれてたのよ。」
「え…?」
完全に初耳。
自分だけじゃなくて、サーシャも目をまんまるにしている。
「何かおかしなことでも?」
ジョー本人は、不思議そうに首を傾げるだけだ。
「義務教育中の子供を宮殿から隠すなんて、現実的に無理でしょ。学校に行かせなかったら、児童相談所が動いちゃうもん。それにディアが〝レイミヤに可愛い弟子がいるー〟なんて自慢するから、色んな人がその弟子を弱みに使おうと、手下を派遣しまくってたんだ。そこで君を見られたら、一発でアウトでしょ?」
「な、なるほど……」
「とまあ、そういうわけで…。変な足枷は作りたくなかったから、君のプロフィールをごまかすと同時に、宮殿関係者のレイミヤへの動きを、ナスカさんたちにリークしてたのさ。フール様が一人でふよふよとレイミヤに行っちゃったのだけは、想定外だったけどね。ディアがルルアに出張に行ってたせいもあって、あの時は僕が真っ先にターニャ様からお叱りを受けたさ。」
「ええぇー…。じゃあなんで、初めて会った時に他人のふりなんかしたの?」
「ふりも何も、データと写真で知ってただけで、実際には面識のない他人だったからね。」
理屈は分かるけど、納得いかない。
少し不満げなキリハを空気のように無視して、ジョーはナスカに向き直った。
「別に、礼には及ばないですよ。部隊の防衛と契約の遂行において、あなた方に協力する方が効率的だったというだけのことです。」
「でも、キリハが宮殿に行ってからも定期的に連絡をくださったじゃないですか。」
「それも、民間人であるキリハ君と共に任務を遂行する軍人として、当然の義務を果たしたまでです。」
きっぱりと言い切ったジョーは、そこで頼りなげに眉を下げる。
「申し訳ないです。キリハ君の護衛が僕一人で、心許ないとは思いますが……」
「いやいや、ご謙遜を。」
ジョーの言葉を遮り、ナスカは顔の前でぶんぶんと手を振る。
「今年の大会は、町の全員で見ましたよ。ジョーさん、三位だったじゃないですか。最強クラスの護衛じゃないですか。心許ないなんて、とんでもないですよ。」
「あー……」
「ジョーさん。」
少し居心地が悪そうに視線を逸らしたジョーに、今度はメイが語りかける。
「あなたにどんな意図があったにしろ、私たちと町の皆があなたに感謝していることは変わりません。この気持ちだけは、受け取っていただけるとありがたいです。あなたは、私たちの恩人ですよ。」
「………」
メイにそう言われ、ジョーはなんともいえない渋い顔。
「恐縮です。」
最終的に、彼は小さく頭を下げてそう告げた。
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