竜焔の騎士

時雨青葉

文字の大きさ
477 / 598
第4章 絶望から希望へ

もう一人の立役者

しおりを挟む

「あのー、お二人さん?」


 お熱い展開から十秒ほど経過したところで、切り込み隊長を買って出たのはジョーだった。


「仲良しなのは結構なんだけどー……僕は、いつまで目隠ししてればいい?」
「!!」


 それで自分たちの行動を自覚したキリハとサーシャは、大慌てで距離を取る。


 キリハに白衣のすそを踏まれているせいで逃げるに逃げられない状態だったジョーは、目を塞いでいた手をどけて溜め息をついた。


「なんだかなぁ…。あっちでもこっちでも、やたらと愛が実っておりますこと。ミゲル、どうするー? この波に乗じて、ミゲルも愛を進展させちゃう?」


 からかうような瑠璃色。


 ミゲルが日々ララと夫婦めおと漫才を繰り広げていることは周知の事実なので、他の面々もにやけて彼を見つめている。


「………」


 一方、キリハの代わりに矢面に立たされたミゲルは、ほんのりと顔を赤らめるだけで何も言わない。
 そんな親友の様子に、訊ねたジョーの方が目をしばたたかせることになった。


「あら…。冗談だったのに、割とガチで考えてたんだ……」
「う、うるせー!!」


 図星を突かれて、ミゲルが今度こそ真っ赤になる。
 そこには触れずに彼から目を逸らしたジョーは、また表情を引き締めた。


「じゃあ、話を本筋に戻すけど……この件にはね、もう一人の立役者がいるんだよ。」
「もう一人…?」


 キリハの呟きに、ジョーはこくりと頷く。
 他の人々も、続きを待つように静かになった。




「―――ルカ君だよ。」




 もったいぶらずに、ジョーは答えを述べる。
 それに驚かなかった人間はいなかった。


「僕がロイリアの治療薬を作れたのは、今までのロイリアの生体データ、ノア様から提供された研究資料に加えて……ルカ君が定期的に持ち込んでいた、レクトの血液サンプルがあったからなんだ。」


 どういうことか、と。
 全員の視線に促されて、ジョーは先を続ける。


「ルカ君はね、自分を実験台にしてレクトの能力を探ってたんだ。その結果、レクトの能力にある二つの穴に気付いた。」


「二つの穴…?」


「そう。レクトは血を仕込んだ人間の視覚、聴覚、嗅覚、味覚には、本人に気付かれることなくリンクできるけど……唯一、触覚だけにはリンクできないんだ。同意の有無はどうであれ、人間の肉体を乗っ取らない限りはね。」


 それを聞くキリハは、その穴がどういう意味に繋がるのか分からない様子。
 ジョーはそれに構わず、解説を続行する。


「そしてもう一つ。肉体を乗っ取らない状態での感覚共有は、あくまでも肉体の持ち主の認識範囲に制限される。この二つを組み合わせれば……自分がきちんと意識を保っている時に、自分の視野外で手を動かす分には、その行為をレクトに感知されないと推測できるわけだ。」


 そこまで話したジョーの双眸に、鋭い光が宿る。


「ルカ君が僕に交渉を持ちかけていた目的は、それを建前にして僕にレクトの血を届けること。だから僕に血を渡す時、ルカ君は絶対に僕の方を―――自分の手元を見なかった。視覚情報を遮断してしまえば、仮に聴覚や嗅覚から異変を悟られたとしても、いくらでも言いのがれができるからね。」


 ジョーと張るほどに計算高い、ルカの行動。
 それに皆が固唾かたずを飲み下す中、キリハが一番に口を開く。


「ルカは……どうして、そんなことを…?」


 ジョーをレクト側に引き込むために、交渉を重ねていたというルカ。


 そんなルカがジョーにレクトの血を渡していたのは、ジョーにも血を飲んでほしかったからなのかもしれない。


 すぐにその推測には至ったものの、どうしても納得がいかない。
 もしそうならば、ジョーがこんなに穏やかな表情をしているはずがないと思う。


「それは……本人から直接聞いてごらん。」


 そう言ったジョーが差し出したのは、自身の携帯電話。
 液晶画面を覗くと、一画面には収まりきらない量のメッセージが映し出されていた。


 差出人は、もちろんルカ。
 送信日は、自分が彼をレクトに会わせてから一週間も経っていない頃だった。


 期待半分、恐怖半分。
 そんな心地で携帯電話を受け取った。




 そして、当時のルカの想いをなぞる―――



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

雷王、大いに懊悩す~ラスボス魔王、使命を果たして元の世界に戻りたくない異世界転移チート勇者によって全力で延命させられるの巻~

朽縄咲良
ファンタジー
 ――「要するに、アンタには死なれちゃ困るんだよ。俺が、この異世界で幸せな一生を送って、天寿を全うするまで、な」  魔族を統べる魔王イラ・ギャレマスは、自身の城へと攻め込んできた“伝説の四勇士”の三人、ジェレミィア・ファミィ・エラルティスを、その圧倒的な力を以て圧倒する。  残るは、黒髪黒目の冴えない男――シュータ・ナカムラのみ。  だが……シュータは、魔法陣で三人の仲間を魔王城の遥か彼方へと吹っ飛ばし、ただひとりで魔王と対峙する。  ――そして、二十分後。  不様に大理石の床に這いつくばっていたのは、魔王ギャレマスの方だった。  シュータの繰り出す圧倒的なチート攻撃の前に為す術もないギャレマスは、自身の敗北と迫りくる死を覚悟するが、そんな彼に対し、シュータは不敵な笑みを浮かべながら、意外な提案を持ちかけるのだった――。 「なぁ、魔王。ここはひとつ、手を組もうぜ……!」  『地上最強の生物』だが、めっぽうお人好しで、バカが付くくらいに娘の事を溺愛している中年オヤj……ナイスミドル(忖度)の魔王が、反則級のチートマシマシ異世界転移勇者をはじめとした周囲の者たちに翻弄されまくるコメディファンタジー、ここに開幕!  哀れな魔王の、明日はどっちだ……? (表紙イラストは、ペケさんから戴きました) *小説家になろう・ノベルアッププラスにも、同作品を掲載しております。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...