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【番外編3】伝説が生まれるまで
カウント20 監禁
しおりを挟む『あなたと剣を学んだこの三ヶ月……自分でも驚くくらい楽しかった。幸せだったんです。』
彼女の声が、遠い―――
「―――っ!?」
意識が浮上した瞬間、オレはほとんど無意識で跳ね起きていた。
「あっ……ててて…っ」
頭が割れるかと思うくらいの痛みが全身にまで響く。
「くっそー、あのじじい…。思いっきり殴らせやがって……」
ご丁寧にも頭に巻かれた包帯を握り締め、オレは眉根を寄せた。
殴られて気絶するまでの、むかつくやり取り。
それは、起きたばかりの頭でも鮮やかに思い出せた。
「ちくしょう、ここどこだよ……」
オレは辺りを見回す。
見たところ、なんの変哲もない部屋だ。
本来は誰のために使うものなのか、随分と広い上に豪華ではあるけど。
(……まあ、鉄格子がはまった牢屋よりは幾分もマシか。)
寝かされていたベッドから降りて歩行を試みると、途端に強い眩暈に襲われた。
下手すれば、この後頭部への一撃で死んでいたんじゃないだろうか。
そんなことを考えながら気合いだけで室内を歩き、カーテンが閉まった窓を目指した。
「これは……」
窓の向こうに広がる景色を見つめ、オレはそう呟くしかなかった。
果たして、ここは何階なのだろう。
地平線の彼方まで広がるフィロアの街並みを一望できる。
周りにある建物から察するに、おそらくここは国防管理部の上層階。
ここまで高い階層には、特権を持ったごく一部の人間しか入ることを許されていない。
……と、この間の説明会で聞いた気がする。
「何がなんでも、オレを逃がす気はないってか。つーかこんな状態じゃ、逃げるに逃げらんねぇよ……」
少なくとも、今日はまともに動ける気がしない。
眩暈を伴って痛む頭を押さえ、オレはたまらず壁に寄りかかった。
この痛みの強さと外の明るさから、捕まってからそんなに時間は経っていないと思う。
だが、捕まった相手が相手だ。
ここで無駄な時間を過ごしているうちに、オレの処遇が一体どうなっていることやら。
(そうは言っても、もうなってしまったもんは仕方ないしな……)
脳裏で愛弟子の口癖をなぞる。
一見して諦めてしまったかのように聞こえるこの言葉が、オレは結構好きだった。
〝仕方ない〟
そのフレーズは、どうしようもない現実を受け入れると同時に、その現実の中で自分が何をできるかを考えようと、気持ちを切り替えるためのものなのだ。
後ろ向きに見えて、実は前向き。
嫌な現実を否定して立ち止まっているよりも、ずっとずっと立派な志だと思う。
キリハにもターニャにも、堂々と笑ってやれる自分でありたい。
だから。
「とりあえず、言われたとおりに大人しくしてやるか。」
オレは重たい体を引きずって、机に置かれた食事と向き合うことにした。
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