131 / 257
第14歩目 ぶつかり合う感情
フィオリア、膨れっ面。
しおりを挟む
朝食を取った後、部屋に訪ねてきたエヴィーに傷の手当てをしてもらう。
(胸くそ悪いな、まったく……)
エヴィーにばれないように無表情を徹底しながら、シュルクは内心でそう毒づく。
ヒンスときたら、自分にあれだけのことを言わせておいて、朝食時に会った時には何事もなかったかのような態度だった。
かといって、ミシェリアとの交流を試みるわけでもない。
結局、朝食の間は基本的に女子二人が和やかに話すだけで終わった。
霊子が寄ってくるから感情を乱したくないのに、旅に出てからというもの、平静という言葉が遠い。
少しでも目をつむることを覚えろという話なのだが、自分の心とはそう上手く御しきれないものだ。
故郷であるウェースティーンにいた時は簡単にできたように思えることが、今はこんなにも難しく感じる。
それは、故郷が平和すぎただけなのか。
もしくは、故郷にいた時の自分が色々と諦めていたからなのか。
(両方、かもな……)
そんなことを思いながら、エヴィーが部屋を出ていくまでは気合いで表情に不機嫌さを出さないようにした。
「シュルク、訊いていい?」
エヴィーが去った直後、当然のように隣にいたフィオリアが口を開く。
「なんだよ。」
「朝から気になってたんだけど、なんでそんなに機嫌悪いの?」
「ああ。ちょっと、ここの旦那様と喧嘩してきた。」
特に隠す理由もなかったし、自分としても吐き出してしまいたいことだったので、シュルクは不機嫌の理由を簡潔に告げた。
すると、フィオリアは一瞬虚を突かれたように固まり、その次に焦りと驚愕がない交ぜになったような顔をした。
「えっ……ええっ!? ちょっと待って! いつのこと!?」
「今朝だよ、今朝。あの野郎、俺を追っかけて外に出てくるくらいなら、中にいるミシェリアさんのとこに行けっての。」
「もう! シュルク!!」
フィオリアはシュルクの正面に回って、その両肩を掴んで揺さぶる。
「ルーウェルさんの時もそうだったけど、なんでそうやってすぐに突っかかっていっちゃうの!? 怪我でもしたら危ないじゃない!」
「あいつが手を上げてくるような奴なら、まだよかったんだけどな。気に入らないもんを気に入らないって言って、何が悪いんだよ。仕事相手じゃあるまいし。」
「今はお世話になってる身だよね!?」
「はっ。そんなん、今朝のことでチャラだ。面倒に巻き込まれていらん嫉妬を買ってるのに、わざわざこっちが空気読む必要ない。」
「いらん嫉妬って……どういうこと?」
「ようは、ひねくれ曲がってても結局は両思いってことだよ。」
そう結論だけを述べたところで、フィオリアにはこちらが置かれている立場の複雑さは伝わらないのだろうが。
案の定理解に苦しむような顔をしたフィオリアに、仕方なくこれまでの経緯を説明してやる。
その結果―――
「………」
フィオリアは、怒りオーラを滲ませて頬を膨らませた。
「なんで怒ってんだよ。」
彼女の怒りの矛先が自分に向いていることを感じ取り、シュルクは眉を寄せた。
「シュルク、一人であそこに行ったの?」
「…………ああ。そこ?」
何がフィオリアの怒りに触れたのかと思えば、そんなことだったのか。
「悪いか?」
特に動じることもなく認めたシュルクに、フィオリアは膨らませた頬をさらに大きくした。
「なんでそんな危ない所に、一人で行っちゃったの!? 昨日の今日だよ!? まだ怪我も治ってないのに!」
「危ないって分かってるから一人で行ったんだよ。お前を連れていけるわけないだろ。」
「何よ。どうせ、私がいたら足手まといだって言うんでしょ。確かに頼りないかもしれないけど、霊神召喚でサポートすることはできるもん。少しは、私を信用してくれてもいいじゃないの!」
「そういう意味で置いていったんじゃねぇよ。ちょっと落ち着け。」
シュルクは軽く息をつき、フィオリアの頭に手を置く。
そして―――
「お前に怪我されるのは、俺が困るんだよ。」
そう、自分の素直な心境を伝えた。
(胸くそ悪いな、まったく……)
エヴィーにばれないように無表情を徹底しながら、シュルクは内心でそう毒づく。
ヒンスときたら、自分にあれだけのことを言わせておいて、朝食時に会った時には何事もなかったかのような態度だった。
かといって、ミシェリアとの交流を試みるわけでもない。
結局、朝食の間は基本的に女子二人が和やかに話すだけで終わった。
霊子が寄ってくるから感情を乱したくないのに、旅に出てからというもの、平静という言葉が遠い。
少しでも目をつむることを覚えろという話なのだが、自分の心とはそう上手く御しきれないものだ。
故郷であるウェースティーンにいた時は簡単にできたように思えることが、今はこんなにも難しく感じる。
それは、故郷が平和すぎただけなのか。
もしくは、故郷にいた時の自分が色々と諦めていたからなのか。
(両方、かもな……)
そんなことを思いながら、エヴィーが部屋を出ていくまでは気合いで表情に不機嫌さを出さないようにした。
「シュルク、訊いていい?」
エヴィーが去った直後、当然のように隣にいたフィオリアが口を開く。
「なんだよ。」
「朝から気になってたんだけど、なんでそんなに機嫌悪いの?」
「ああ。ちょっと、ここの旦那様と喧嘩してきた。」
特に隠す理由もなかったし、自分としても吐き出してしまいたいことだったので、シュルクは不機嫌の理由を簡潔に告げた。
すると、フィオリアは一瞬虚を突かれたように固まり、その次に焦りと驚愕がない交ぜになったような顔をした。
「えっ……ええっ!? ちょっと待って! いつのこと!?」
「今朝だよ、今朝。あの野郎、俺を追っかけて外に出てくるくらいなら、中にいるミシェリアさんのとこに行けっての。」
「もう! シュルク!!」
フィオリアはシュルクの正面に回って、その両肩を掴んで揺さぶる。
「ルーウェルさんの時もそうだったけど、なんでそうやってすぐに突っかかっていっちゃうの!? 怪我でもしたら危ないじゃない!」
「あいつが手を上げてくるような奴なら、まだよかったんだけどな。気に入らないもんを気に入らないって言って、何が悪いんだよ。仕事相手じゃあるまいし。」
「今はお世話になってる身だよね!?」
「はっ。そんなん、今朝のことでチャラだ。面倒に巻き込まれていらん嫉妬を買ってるのに、わざわざこっちが空気読む必要ない。」
「いらん嫉妬って……どういうこと?」
「ようは、ひねくれ曲がってても結局は両思いってことだよ。」
そう結論だけを述べたところで、フィオリアにはこちらが置かれている立場の複雑さは伝わらないのだろうが。
案の定理解に苦しむような顔をしたフィオリアに、仕方なくこれまでの経緯を説明してやる。
その結果―――
「………」
フィオリアは、怒りオーラを滲ませて頬を膨らませた。
「なんで怒ってんだよ。」
彼女の怒りの矛先が自分に向いていることを感じ取り、シュルクは眉を寄せた。
「シュルク、一人であそこに行ったの?」
「…………ああ。そこ?」
何がフィオリアの怒りに触れたのかと思えば、そんなことだったのか。
「悪いか?」
特に動じることもなく認めたシュルクに、フィオリアは膨らませた頬をさらに大きくした。
「なんでそんな危ない所に、一人で行っちゃったの!? 昨日の今日だよ!? まだ怪我も治ってないのに!」
「危ないって分かってるから一人で行ったんだよ。お前を連れていけるわけないだろ。」
「何よ。どうせ、私がいたら足手まといだって言うんでしょ。確かに頼りないかもしれないけど、霊神召喚でサポートすることはできるもん。少しは、私を信用してくれてもいいじゃないの!」
「そういう意味で置いていったんじゃねぇよ。ちょっと落ち着け。」
シュルクは軽く息をつき、フィオリアの頭に手を置く。
そして―――
「お前に怪我されるのは、俺が困るんだよ。」
そう、自分の素直な心境を伝えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~
Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。
それでも、組織の理不尽には勝てなかった。
——そして、使い潰されて死んだ。
目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。
強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、
因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。
武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。
だが、邪魔する上司も腐った組織もない。
今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。
石炭と化学による国力強化。
情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。
準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。
これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、
「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、
滅びの未来を書き換えようとする建国譚。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる