Fairy Song

時雨青葉

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第21歩目 何を一番にするべきか

知られてしまった秘密

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 シュルクを追い詰めたのはあなただ、と。


 その指摘は、今まさにその可能性に思い至っていた自分にはダメージが大きすぎた。


 言葉のナイフが容赦なく胸をえぐってくるようで、息すらもままならなくなってしまう。


「さすがに、昨日のあれには呆れたわ。この子は他でもないあなたを守るために、自分の感情を犠牲にして論理的に行動してたっていうのに…。本当、護衛のかがみみたいな子よ? そんな子にご主人様が言うことがあれなんだもの。この程度の世のきたなさでキャンキャン喚くくらいなら、安全なお家に一生引きこもっていなさいな。」


「………っ」


 痛烈にそう告げるラミアの口調は、幼子おさなごを諭すように穏やかなもの。


 まるで、暗に〝あなたには呆れる価値もない〟と言われたようで、情けなさと悔しさが涙として込み上げてくる。


「で、これがあんたたちに話を聞きに来た本題なんだけど……―――そこの坊やがめぐとしての能力を持ってるって、本当?」


「―――っ!?」


 耳朶じだを打ったまさかの言葉に、フィオリアは反射的に顔を跳ね上げていた。
 そして、その反応から答えを確信したラミアがにやりと笑う。


「ふーん…。いいことを知ったわ。ただの希少種じゃなくて、幻の絶滅種だったなんて……ますます手放せなくなっちゃったわねぇ。この子も、このことだけは知られないように細心の注意を払ってたでしょうに……追い詰められていたせいで、うっかりと口を滑らせちゃったみたいね。そこのところは、あんたの潔癖さを褒めてあげる。」


「シュルクを……どうするつもり?」


 どうしよう。
 自分のせいで、シュルクが持つ最大の秘密が知られてしまった。


 ともすれば吐きそうになるほどを動揺を気合いで抑え込み、極力平坦な声で訊ねる。


「別に、その子が恵み子の能力を持ってるって知ったからって、方向性は変わらないわよ。どうにかして、あたしたちの世界に引きずり込むわ。ただ……」


 なんでもないことのように自身の考えを述べるラミアの唇が、そこでゆったりと笑みの形を作る。


「同業者としてあたしたちと手を組むか、それとも奴隷としてあたしたちに飼われるか……そこは、この子の判断と行動次第ってところね。」


 そこにあるのは、獲物を仕留めんとする狩人かりゅうどの目。


「―――っ!! シュルクに何かしたら、許さないんだからね!?」


 たまらず椅子から立ち上がったフィオリアは、激しい怒気をはらませて叫ぶ。


 しかし―――


「あんたの場合、あたしを牽制することよりも、この子のご機嫌を取ることを優先した方がいいんじゃない?」


 何故か、余裕そうな態度を崩さないラミア。
 その理由は、すぐに彼女自身の口から語られる。


「限界まで追い詰められてる時ほど、甘い言葉ってよーく効くのよ? この子の場合、散々自信をなくしてた時に、一番大事に守っているご主人様に否定されまくったんだもの。精神的にはたまらないわね。あれで相当弱っちゃったのか、今朝は私の勧誘に少し考える素振りを見せてたわ。」


「なっ…!?」


「あとひと押しってところね。今朝の様子だと、まずはお試しでいいって言えばあっさりと落ちそうだし、正当以上の報酬と自分が全肯定されるぬるま湯の環境を提供してあげれば、お試しで終わらせようなんて思わなくなるでしょうね。」


「嘘……嘘よ……」


 口だけでは現実を否定しつつも、心臓は危機感にかされて早鐘を打ち始める。


 シュルクが、そんな提案に乗るわけがない。


 そう信じたいのに、自分がシュルクにつらく当たっていた事実と、今朝見た崩れ落ちてしまいそうなシュルクの姿が、信じたい気持ちをもろくしてしまう。


「あらやだ。ここまで丁寧にお膳立てしてあげて、ようやく焦り始めたの?」


 落ち着かない様子でシュルクを見つめるフィオリアに、ラミアはどこか楽しげだ。


「まあ、もう何もかもが今さらよ。だって……―――ご機嫌を取る時間なんてあげないもの。」




 笑みを含んだ声がそんな言葉をつむいだ瞬間―――馬車が大きく揺れた。



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