Fairy Song

時雨青葉

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第23歩目 恵み子の里

自分という存在の意味

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 まさか、自分の遠い前世がこの呪いを作り上げた当事者の一人だったとは。


 だが、一度ひらめいてしまえば、こんなにしっくりとくる話もない。


 自分という存在が、ルルーシェかセイラとしての前世を持つ魂ともう一度運命で結ばれることが第一条件。


 そして、霊子がより強く干渉できるめぐの血を引いていることが第二条件。


 その双方を同時に引き当てる確率なんて、途方もなく低いだろう。


 ということは、自分が運悪く恵み子の能力を開花させてしまったのは、ようやく二つの条件を満たす存在が生まれたもんで、眠っていた能力を霊子が無理やり叩き起こしたからだと。


 するするとはかどる状況分析。
 その結果―――


「はあぁー、なんだかねぇ…。つまるところ、痴情のもつれは当人たちで解決しろってことかい。」


 ものすごく一般的な結論に落ち着いてしまい、シュルクはげんなりとして椅子にもたれかかった。


「シュルク…? もしかして、もう受け入れてるの…?」


 隣から、フィオリアがおろおろとしながら訊ねてくる。
 それに、シュルクは一片の動揺も見せずに頷いた。


「ん? そうだけど?」


「は、早くない…? 私、まだ全然飲み込めてないんだけど……」


「だって、あくまでも昔はって話だろ? むしろ、俺は筋が通りすぎてて納得しかできないわ。」


「ええぇ…?」


 フィオリアは未だに混乱中。
 そんな彼女の頭をぽんぽんと叩きながら、シュルクは再び重たげな吐息を一つ。


「ここに来て大収穫だな。呪いそのものに関することはまだ謎な部分が多いけど、俺にこの運命石を集められる理由が分かってスッキリしたわ。二重の意味で当事者だって分かった以上、是が非でも呪いを解かなきゃいけないなって思ったよ。」


「ふーむ…。私には、これ以上のことを語ることはできませんが……あなたなら、私以上の情報を得られるかもしれませんよ。」


「へ? どういう意味です?」


 ガルドがうなりながらそんなことを言うもので、シュルクは興味がおもむくままに続きを待った。


「霊子たちが言ってますよ。もしもあなたが望むなら、三日くらいあれば前世の記憶を呼び覚ましてあげられると。」


「前世の、記憶……」


 きょとんと目をまたたかせて、ガルドの言葉を反芻はんすうするシュルク。
 無言の時間が数秒経過した頃―――


「え、ふっつーに嫌なんですけど。」


 心底嫌そうな顔をして、シュルクはそう言い放った。


「俺まで前世の記憶を思い出すなんて、どんな泥沼展開? 前世の記憶に引きずられてフィオリアやリリアに言い訳なんて、マジで勘弁。そんな情けないことをするくらいなら、自力で真相に辿り着いてやるわ。」


 敬語なんてすっ飛んで、普段のぞんざいな口調で本音爆発のシュルク。
 それを見て数度まぶたを叩いたガルドは、次に小さく噴き出して笑った。


「これはこれは…。随分とたくましい坊やだ。確かにあなたなら、霊子の助けがなくとも真相を暴きそうですね。」


「ええ。そうするんで、霊子たちの申し出には丁重にお断りを伝えてください。たとえ、前世の記憶に重要な真実があるんだとしても……俺は、今を生きている俺のまま、フィオリアを好きでいたいんです。」


 そう。
 自分が前世の記憶を拒むのは、これが大きな理由。


 自分が前世の記憶を引き継いでしまったら、今の純粋な気持ちに曇りが入ってしまうかもしれない。


 フィオリアだって、自分が過去の罪滅ぼしのために呪いを解こうとしているんじゃないかって、余計な不安をいだいてしまうだろう。


 ならば、自分はその記憶を永遠に捨て去る道を選ぶ。


 前世を知らないままフィオリアと出会った自分は、自分の意志だけで呪いを解くと決めたのだ。


 そこに、今さら過去の思い出なんていらない。
 過去の人物はそれらしく、字面だけの記録にでもなってろってんだ。


「おやおや…。ここまで堂々と宣言されると、からかう気も起こらなくなりますね。」
「~~~っ」


 一切装飾なしのドストレートな物言い。


 恥ずかしげなど皆無のシュルクを前に、ガルドは感心したように息をつき、他方のフィオリアは再び羞恥しゅうちに身を震わせることになった。

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