115 / 714
第4章 転落
グランの告白
しおりを挟む
グランに呼び止められ、彼に背を向けていた実が顔だけをそちらに向ける。
「何?」
冷たい表情と刺々しい口調で、たった一言。
その声にはこちらの意地など木っ端微塵に砕くだけの威力がこめられていたが、グランは必死に実に食らいついた。
「この際、全部白状する。」
ともすれば、震えて上ずりそうになる声。
実は相変わらず、冷酷だと印象づける表情でこちらを見ている。
それが、たまらなく怖い。
「俺は、初めて会った時からずっと、お前は力のない奴なんだと思ってた。だから、お前を相手にしようとは思わなかった。」
「へぇ…。それはまた、ひどい差別だね。」
無表情で返してくる実。
反論はない。
ついさっき、それで痛い目を見たばかりだ。
グランはそこには触れず、先を続ける。
「でも、それじゃあ俺の中に矛盾が起こるんだ。」
「矛盾?」
「ああ、そうだ。」
グランは一つ深呼吸をして、これまでずっと抱えてきた気持ちを打ち明けた。
「俺は……お前が怖くて仕方ない。」
それを聞くや否や、実は意外そうな表情でこちらを見直した。
数拍の間固まったかと思うと、実はハエルの背から降りて体ごと向き合ってくる。
真正面から向けられる、薄茶色の双眸。
その目に囚われるだけで、この場から逃げ出したくなってしまった。
実は無言で続きを促している。
その見えない力に押されて、グランは口を開いた。
「俺は、お前に関わるのが嫌だった。最初は、お前が力のない奴だからだと思ったんだ。でも違った。お前の前に立つと、俺は怖くて頭が真っ白になりそうになる。全部を見透かされてそうで、とにかく怖くて腰が抜けそうになるんだよ。今だって、本当は怖くてたまらない。でも、そのことに関して俺はなんの疑問も違和感もないんだ。心のどこかで、お前が怖いのは仕方のないことだって思っちまってる。」
「で?」
腕を組んで続きを待つ実には、明らかに年齢不相応の威圧感が漂っている。
そんな圧に屈しそうになる心を叱咤しながら、グランは全身に力を入れて覚悟を決めた。
「実、お前は知ってるんだろ? 俺がお前に対してこう思っちまう理由が。それに、ここまでのものを見せられたんだ。お前が今まで力のないふりをしてきたんだって、嫌でも分かる。お前は……一体、何者なんだ?」
問いを受けた実は、しばらく反応らしい反応を見せなかった。
実はしばらく何かを見定めるようにグランを見つめ、ふとした拍子に溜め息を吐き出す。
「俺が一体何者なのか……か。悪いけど、それは言えない。」
「なっ…!? おい!」
「正体を隠すのは、それを知られたくないから。別に知られても構わないなら、最初から偽る必要なんてない。違う?」
「それは……」
正論を突きつけられ、グランは反論できずに言い澱む。
すると、実が「でも…」と微笑んだ。
それは、グランが初めて見る穏やかな微笑み。
予期していなかったその笑みに、グランは思わず恐怖も忘れて見入ってしまった。
「俺に対してそう思うってことは、あんたの魔力に対する感受性は一流ってことだね。あんたの今までの努力は、無駄じゃないって証拠だよ。……でもまあ、それは俺と接する上では限りない不幸……とでも言うべきかな。」
言い終えると同時に、実は再びハエルの背に乗った。
「行って、ハエル。」
「あ……ちょっと、待―――」
グランが呼び止めるも、実はもう振り向かない。
三人をそこに残し、純白の狼はあっという間に空を駆け上がっていった。
「何?」
冷たい表情と刺々しい口調で、たった一言。
その声にはこちらの意地など木っ端微塵に砕くだけの威力がこめられていたが、グランは必死に実に食らいついた。
「この際、全部白状する。」
ともすれば、震えて上ずりそうになる声。
実は相変わらず、冷酷だと印象づける表情でこちらを見ている。
それが、たまらなく怖い。
「俺は、初めて会った時からずっと、お前は力のない奴なんだと思ってた。だから、お前を相手にしようとは思わなかった。」
「へぇ…。それはまた、ひどい差別だね。」
無表情で返してくる実。
反論はない。
ついさっき、それで痛い目を見たばかりだ。
グランはそこには触れず、先を続ける。
「でも、それじゃあ俺の中に矛盾が起こるんだ。」
「矛盾?」
「ああ、そうだ。」
グランは一つ深呼吸をして、これまでずっと抱えてきた気持ちを打ち明けた。
「俺は……お前が怖くて仕方ない。」
それを聞くや否や、実は意外そうな表情でこちらを見直した。
数拍の間固まったかと思うと、実はハエルの背から降りて体ごと向き合ってくる。
真正面から向けられる、薄茶色の双眸。
その目に囚われるだけで、この場から逃げ出したくなってしまった。
実は無言で続きを促している。
その見えない力に押されて、グランは口を開いた。
「俺は、お前に関わるのが嫌だった。最初は、お前が力のない奴だからだと思ったんだ。でも違った。お前の前に立つと、俺は怖くて頭が真っ白になりそうになる。全部を見透かされてそうで、とにかく怖くて腰が抜けそうになるんだよ。今だって、本当は怖くてたまらない。でも、そのことに関して俺はなんの疑問も違和感もないんだ。心のどこかで、お前が怖いのは仕方のないことだって思っちまってる。」
「で?」
腕を組んで続きを待つ実には、明らかに年齢不相応の威圧感が漂っている。
そんな圧に屈しそうになる心を叱咤しながら、グランは全身に力を入れて覚悟を決めた。
「実、お前は知ってるんだろ? 俺がお前に対してこう思っちまう理由が。それに、ここまでのものを見せられたんだ。お前が今まで力のないふりをしてきたんだって、嫌でも分かる。お前は……一体、何者なんだ?」
問いを受けた実は、しばらく反応らしい反応を見せなかった。
実はしばらく何かを見定めるようにグランを見つめ、ふとした拍子に溜め息を吐き出す。
「俺が一体何者なのか……か。悪いけど、それは言えない。」
「なっ…!? おい!」
「正体を隠すのは、それを知られたくないから。別に知られても構わないなら、最初から偽る必要なんてない。違う?」
「それは……」
正論を突きつけられ、グランは反論できずに言い澱む。
すると、実が「でも…」と微笑んだ。
それは、グランが初めて見る穏やかな微笑み。
予期していなかったその笑みに、グランは思わず恐怖も忘れて見入ってしまった。
「俺に対してそう思うってことは、あんたの魔力に対する感受性は一流ってことだね。あんたの今までの努力は、無駄じゃないって証拠だよ。……でもまあ、それは俺と接する上では限りない不幸……とでも言うべきかな。」
言い終えると同時に、実は再びハエルの背に乗った。
「行って、ハエル。」
「あ……ちょっと、待―――」
グランが呼び止めるも、実はもう振り向かない。
三人をそこに残し、純白の狼はあっという間に空を駆け上がっていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!!
2巻2月9日電子版解禁です!!
紙は9日に配送開始、12日発売!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる