世界の十字路

時雨青葉

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第1章 悔恨

的中してしまった嫌な予感

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 客は応接間として使っている奥の和室に通したと言うので、蓮は着替えもせずにそこへ急いだ。


 母が客と口にしてから、胸の中に猛烈な密度で広がっている嫌な予感。
 それが自分をき立て、無意識にその歩みを速めさせた。


 誰が訪ねてきたのか。
 それは、確認するまでもなく分かる。


 和室までの短い道のりが、急ぐ気持ちのせいでかなり長く感じられた。


 閉じられたふすまが近付く。
 襖の引手板に手をかけると同時に、流れるような動きで襖を開いた。


 思った以上に力が入っていたのか、襖は溝を勢いよく滑り、大きな音を立てて壁にぶつかった。


「これは…っ」


 蓮はうめく。


 和室の中央にえられた机には、尚希と見知らぬ少年がそれぞれに固い表情で座っていた。


 二人の目の前に出されたお茶には手をつけられた様子がなく、湯気はもう消えている。


 とても飲める気分ではないのだろう。
 それは、二人の深刻な雰囲気から嫌というほど察せられた。


 ―――そして、さらにその奥。


 連なって置かれた座布団の上に、もう一人の少年が横たわっていた。


 彼の体には暖かそうな毛布がかけられているが、その目は固く閉じられ、血色が消え失せた顔は紙のように白い。


 明らかに生気を欠いていた。


(そんな……)


 自分の予感が的中していたことを思い知る。


 尚希たちの前を通り過ぎ、横たわる実の傍に膝を立てる。
 祈るような気持ちで、その首筋に手を当てた。


 体温は微かにあるものの、脈はほとんど感じられない。
 口と鼻の前に手をかざしても、正常な呼吸は確認できなかった。


「……どういうことですか?」


 ぽつりと漏れたのは、自分でもぞっとするほど冷たい声音。


「……のせいだ。」


 震える声が耳朶じだを打ったので、蓮はそちらを振り返る。
 そこでは、黒髪の少年が拳を握り締めて深くうつむいていた。


「おれのせいだ!!」


 彼の苦渋に満ちた独白。
 それに、蓮は眉をひそめる。


「拓也。」


 尚希は少年をたしなめるように言い、少年の肩を抱きながら視線だけをこちらに向けた。


「悪い。こいつはまだ混乱してるんだ。勘弁してやってくれ。君たちの厚意を無にしたような結果になってしまって、すまないと思ってる。だけど、この前ここを出た後に事態が一気に動いた。正直な話、オレもついていけないところなんだ。」


 そう言ってばつが悪そうに目をらす尚希の目には、後悔が色濃くにじみ出ている。


「何が起こったのか、説明してもらっていいですか?」


 訊ねると、尚希は悄然しょうぜんとした様子だったがしっかりと頷いた。
 そして、彼の口から語られた一連の出来事を、蓮は険しい表情で聞くのだった。

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