世界の十字路

時雨青葉

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第2章 諍い

再びの対峙

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「―――っ!?」


 突如耳元で響いた声に、死神が驚いて首を巡らす。


 ちらりとかい見えた深いすい色の瞳は、驚愕に見開かれていた。
 そんな彼を見るのは気分がよくて、間近からにやりと笑ってやる。


 すると、死神の表情から驚愕が消える。
 大振りの鎌が繰り出されるのは、刹那的な出来事だった。


「わわ…っ」


 寸でのところで、それをける。


「危なー…。おいおい、そんなことしたって無意味だぞ?」


 くうに浮かびながら、鎌を構える死神を呆れ半分で見据みすえる。
 死神の表情は、依然として険しいままだ。


「お主……舐めた真似を。」
「何? それって、力の核を切り離したこと?」


 こちらを苛烈な殺気に満ちた目で睨み上げてくる死神に、実はなんでもないことのようにそう告げた。


「言っただろ? そう簡単に渡すかよって。」


 口の端を吊り上げて挑むように死神を見やると、死神の眉が悔しげに寄るのが雰囲気で分かった。


「あんたって、案外詰めが甘いのな。こんなに上手くいくとは思わなかったよ。」


 くすりと笑いながら、実は死神の前に降り立つ。
 皮肉めいた実の視線を受ける死神の手は、怒りからか激しく震えていた。


「これは……私への侮辱だ。」
「侮辱?」


 その瞬間、実の声が温度を大きく下げた。
 死神を射る視線に宿ったのは、冷ややかな光だ。


「違うね。俺は、自分の身を守るために精一杯だっただけだよ。それを侮辱だと思うってことは、あんたがそれだけ自分の力を過信していた証拠なんじゃないの? そもそも、俺を今まで狩ってきた人間と一緒にしてもらってもねぇ…。属する世界が違う。たったそれだけで色んな可能性が出てくるって、あんたは考えなかったのか? だから詰めが甘いって言ったんだよ。」


 事実を明け透けなく述べてやると、死神はぐっと言葉につまった様子だった。
 実はそれを無感動に見つめ、ふいに肩をすくめる。


「ま、今回は俺も助けられて生き延びてるわけだし、あまり強いことを言えた立場じゃないんだけど。」


 自嘲めいた笑みを浮かべる実。


「何?」


 それを聞いた死神が片眉を上げる。


 誰だ、と。
 彼の視線がそう訊ねてきていたが、実はそこで唇に人差し指を当てた。


「まさか、全部を教えてもらえるなんて、そんな都合のいいことは思ってないよな?」


 悪戯いたずらっぽく放った言葉に、死神は答えない。
 フードの下に隠れた瞳にはらませた怒りを激しくするだけだ。


 そのまなしを受けてなお、実は挑戦的に笑って彼を真正面から見据みすえてみせる。
 そこにはやはり、神に引けを取らない不思議な雰囲気と余裕があった。


「………っ」


 死神は鎌を握った手に、肌が白くなるほど力を込めた。


 曲がりなりにも神である自分が、たかが一人の人間にここまでの余裕を与えている事実。


 自分が生きてきた中で初めての出来事に、胸の中から湧き上がってくるのはそこはかとない怒りだった。


 どうせこちらが何を言ったところで、実は涼しい顔で切り返してくるのだろう。
 目の前に笑顔を浮かべてたたずむそれは、自分にとって侮辱の象徴でしかない。


 これ以上ないほどに気に入った魂だったが、壊してしまおうか。


 そんな考えが脳裏をよぎる。


 無意識に取り上げた鳥かご。
 それに目を落として―――


「………っ!!」


 とんでもなく驚愕してしまった。

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