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第5章 2日目
尚希と紫苑の帰宅
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尚希が戻ってきたのは、その日の夜遅くのことだった。
普通に玄関から帰ってきた尚希を出迎えた蓮は、その姿に目を剥いた。
「あ、どうも。」
蓮に気付き、尚希は足で引き戸を閉めながら軽く頭を下げる。
その背には―――
「し、紫苑!?」
思わず声を荒げてしまう蓮。
その理由は言わずもがな。
尚希は、その背に紫苑をおぶっていたのだ。
紫苑は尚希に全身を預けて気を失っている。
その様子に、血の気が引いて肝が冷えるのを感じた。
蓮の叫び声を聞きつけて隆文も玄関に姿を現し、蓮と同じように顔を青くする。
「紫苑に何があったんですか!?」
まさか、死神に襲われたのだろうか。
脳裏によぎる最悪の〝もしも〟。
しかし……
「蓮君、落ち着いて。大丈夫、疲れて眠ってるだけだよ。」
大慌ての蓮に、尚希は対照的に穏やかな様子で答えた。
彼は蓮の手を取ると、紫苑の口元にその手を持っていく。
「ほら。ちゃんと息してるでしょ?」
尚希が言うとおり、手に感じるのは規則正しいリズムの温かい吐息。
「よかった……」
安堵のあまり、その場にへたり込みそうになった。
そんな蓮の手を離して、尚希はずり落ちかけた紫苑の体を背負い直す。
「何があったんですか?」
紫苑がこんな状態になって帰ってくる状況が分からない。
そもそも、尚希と紫苑が一緒に帰ってくる理由が謎だ。
「紫苑君は、蓮君たちに協力することにしたんだって。それで、オレが指導したんだよ。」
靴を脱いで廊下に上がりながら、尚希はざっくり経緯を話す。
「ただ、かなりのスパルタだったから、力を使い切っちゃったみたいだな。でもま、よく頑張ったよ。」
紫苑とのやり取りを思い出し、尚希はくすくすと笑った。
実際、あの指導によくついてきたと感心しているところだ。
あまりにも時間がなかったので、休憩も大して取らずの強行スケジュールだったのだが、紫苑はそれに音を上げることなく、魔法をマスターしようと必死に食らいついてきた。
さすが、実を殴ると大口を叩いただけのことはある。
「紫苑が…?」
蓮は半信半疑といった様子。
無理もない反応だ。
あんな風に喧嘩別れをした後では、紫苑が協力するとは考えにくいだろう。
「うーんと…。とりあえず、どこか寝かせられる部屋はある? 早いとこ、ちゃんと休ませてあげたいんだけど。」
「それなら、二階に紫苑の部屋があるよ。」
こっちだと手招きする隆文に頷き、尚希はその後についていく。
さらにその後に蓮が続いた。
一度はほっとしながらも、やはり心配でたまらないのだろう。
蓮の目は、不安げに揺れる心情をはっきりと映し出していた。
「紫苑君は、いい子だね。」
「え…?」
こちらを怪訝そうに見上げてきた蓮に、尚希は続ける。
「紫苑君と色々話して、そう思ったんだ。根がまっすぐで、自分にも他人にも正直。ちょっと感情的なところがあるけど、言ってることは理不尽じゃない。誰にでも正々堂々と直球勝負を挑める度胸も申し分ない。紫苑君は、そういういいところをたくさん持ってる子だよ。」
紫苑は訓練の最中、自分にとって蓮がどんな存在であるか、それはもう熱心に語っていた。
それで思った。
できることなら、この二人にいつまでもギクシャクとしてほしくないと。
蓮は驚いたのか、目を丸くしている。
そして、次に頬を緩めると―――
「はい、知ってます。」
そう言って、照れくさそうに笑った。
普通に玄関から帰ってきた尚希を出迎えた蓮は、その姿に目を剥いた。
「あ、どうも。」
蓮に気付き、尚希は足で引き戸を閉めながら軽く頭を下げる。
その背には―――
「し、紫苑!?」
思わず声を荒げてしまう蓮。
その理由は言わずもがな。
尚希は、その背に紫苑をおぶっていたのだ。
紫苑は尚希に全身を預けて気を失っている。
その様子に、血の気が引いて肝が冷えるのを感じた。
蓮の叫び声を聞きつけて隆文も玄関に姿を現し、蓮と同じように顔を青くする。
「紫苑に何があったんですか!?」
まさか、死神に襲われたのだろうか。
脳裏によぎる最悪の〝もしも〟。
しかし……
「蓮君、落ち着いて。大丈夫、疲れて眠ってるだけだよ。」
大慌ての蓮に、尚希は対照的に穏やかな様子で答えた。
彼は蓮の手を取ると、紫苑の口元にその手を持っていく。
「ほら。ちゃんと息してるでしょ?」
尚希が言うとおり、手に感じるのは規則正しいリズムの温かい吐息。
「よかった……」
安堵のあまり、その場にへたり込みそうになった。
そんな蓮の手を離して、尚希はずり落ちかけた紫苑の体を背負い直す。
「何があったんですか?」
紫苑がこんな状態になって帰ってくる状況が分からない。
そもそも、尚希と紫苑が一緒に帰ってくる理由が謎だ。
「紫苑君は、蓮君たちに協力することにしたんだって。それで、オレが指導したんだよ。」
靴を脱いで廊下に上がりながら、尚希はざっくり経緯を話す。
「ただ、かなりのスパルタだったから、力を使い切っちゃったみたいだな。でもま、よく頑張ったよ。」
紫苑とのやり取りを思い出し、尚希はくすくすと笑った。
実際、あの指導によくついてきたと感心しているところだ。
あまりにも時間がなかったので、休憩も大して取らずの強行スケジュールだったのだが、紫苑はそれに音を上げることなく、魔法をマスターしようと必死に食らいついてきた。
さすが、実を殴ると大口を叩いただけのことはある。
「紫苑が…?」
蓮は半信半疑といった様子。
無理もない反応だ。
あんな風に喧嘩別れをした後では、紫苑が協力するとは考えにくいだろう。
「うーんと…。とりあえず、どこか寝かせられる部屋はある? 早いとこ、ちゃんと休ませてあげたいんだけど。」
「それなら、二階に紫苑の部屋があるよ。」
こっちだと手招きする隆文に頷き、尚希はその後についていく。
さらにその後に蓮が続いた。
一度はほっとしながらも、やはり心配でたまらないのだろう。
蓮の目は、不安げに揺れる心情をはっきりと映し出していた。
「紫苑君は、いい子だね。」
「え…?」
こちらを怪訝そうに見上げてきた蓮に、尚希は続ける。
「紫苑君と色々話して、そう思ったんだ。根がまっすぐで、自分にも他人にも正直。ちょっと感情的なところがあるけど、言ってることは理不尽じゃない。誰にでも正々堂々と直球勝負を挑める度胸も申し分ない。紫苑君は、そういういいところをたくさん持ってる子だよ。」
紫苑は訓練の最中、自分にとって蓮がどんな存在であるか、それはもう熱心に語っていた。
それで思った。
できることなら、この二人にいつまでもギクシャクとしてほしくないと。
蓮は驚いたのか、目を丸くしている。
そして、次に頬を緩めると―――
「はい、知ってます。」
そう言って、照れくさそうに笑った。
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