世界の十字路

時雨青葉

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第2章 影

―――何かいる。

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 ――――ペトリ




 ふいにそれは、なんの前触れもなく現れた。
 一切の気配も立てず、どろりとうごめいて。


 苦しい……


 ざわり、と。
 身を焦がす思いが、それを突き動かしていた。


 お腹が空いた……
 喉が渇いた……


 ペトリと、壁をう。


 えていた。
 どうしようもないくらい、それは飢えに苦しんでいた。


 ああ……いいにおいがする……


 食指が動く。
 飢えを満たしたいという欲望が、その香りを辿る。


 ペトリと、また進む。
 ざわりと、欲望が揺れる。


 ペトリ……ざわり……




 ―――ザザッ…




「!!」


 急に脳を揺らしたノイズに、実は危うく本を取り落としそうになった。


 ―――ザザザ…ッ


「え…? 何…?」


 激しく存在を訴えるノイズ。
 それと一緒に、脳裏に何かがひらめく。


 実は頭を抱えた。


 何かが見える。


 具体的には分からないが、微かな映像が意味の繋がらない細切れの状態で、ノイズと一緒に頭の中を満たしている。


 だが、これが何を示し、どこを映し出しているのか、重要なところが何も分からない。


「何なんだ……一体……」


 もどかしさと苛立ちに、実は唇を噛み締める。




 ―――――美味うまそう……




「―――っ!?」


 背後を不吉な気配がなでて、実は反射的にその方を振り返った。


 しかし、見えたのは天井のすみだけ。
 他には何もなかった。


 振り返った瞬間に、ノイズも映像も消えてしまっている。


「………っ」


 実はそこを見つめたまま、シャツのそでをくしゃくしゃに握り締める。

 
 ノイズに苛立ったあの瞬間、背後に明らかな気配があった。
 敵意とは違うが、ねっとりと絡みついてくるような気味の悪い気配。


 未だに天井から目を離せない実の表情は、心なしか色を失っているように見えた。


 嫌な予感と危機感が全身を駆け回っている。
 その中で、一つだけ確信できることは―――




(ここ……―――何かいる。)



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