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第4章 どんな姿でも
連れられた先
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ノルンの命令によって連れていかれたのは、普段自分たちがいる方の向かい側にある上層部だった。
(ねぇ、ここどこ…?)
辺りを見回しながら、実は心の声で問う。
これだけの上層階だ。
クルオルから聞いた話によれば、そこそこ偉い者が使っている場所であるはず。
いくら自分が客人とはいえ、クルオルの同伴もなしにこんな所まで足を踏み入れていいとは思えない。
それに加えて、先ほどからすれ違う人々に不思議そうな視線を向けられるのも、居心地の悪さを煽ってくる要因となっていた。
「いいから、黙ってついてこればいいのだ。」
ノルンは、頑として何も語らない。
先ほどからどんなことを訊いても、この言葉の一点張りだ。
実は肩を落とし、周囲から向けられる視線に耐えながら歩みを進める。
そうすることしばし。
「あそこだ。」
ノルンが示したのは、一つの部屋だった。
入り口にかけられた布は風にそよそよと揺れていて、その隙間からは柔らかな光が漏れている。
中からは楽しげな声が聞こえてきて、風とその声に乗って、微かにミルクのような香りが漂ってきた。
どう見ても、誰かが住んでいる部屋ではないか。
(ノルン……まさか、俺にあそこに入れって言うんじゃないよね…?)
「そのまさかだが?」
当然のように言われ、実はぶんぶんと首を振った。
(無理だって! 他人の家に勝手に入るとか、立派な不審者だから!)
「私の集落の者たちは、そんなことで怒ったりしない。」
(そういう問題じゃなーい!!)
なんとかその叫びを声に出さずに押し殺した実は、その場でくるりと踵を返す。
(帰る。)
そのまま、元来た道を全力で引き返す―――はずだった。
「だーれだ!」
「うわっ!?」
腰辺りに重い衝撃が襲い、実は数歩よろける。
後ろを振り返ると、自分の腰に小さな女の子が抱きついていた。
緩やかにうねる柔らかな金色の髪に、ガラス玉のように輝く茶色の瞳がとても印象的な少女だ。
少女はそのつぶらな瞳を丸くしてこちらを見上げて……しばらくすると、何故かものすごく嬉しそうに笑ってこちらの腕を両手で抱き締めた。
「………?」
少女の反応に疑問を持ちながら、己の表情が引きつるのを感じる。
「リーネ? どうしたの?」
おっとりとした女性の声が聞こえたのは、件の部屋からだ。
リーネと呼ばれた少女は、その声にパッと表情を輝かせると部屋に向かって駆けていく。
―――実の腕を掴んだまま。
(やっぱりかーっ!?)
なんとなく、こうなる予感はしていましたとも!
逃げたいけど、こんな幼い少女の手を強引に振り払うのは良心が痛む。
そんな中途半端な気持ちでいるものだから、結局体はずるずると少女に引きずられていく一方だった。
「ママー、おきゃくさーん!!」
「違う違う、ちがーう!!」
半端な抵抗が功を奏するわけもなく、実は少女と共に部屋へと入ることになってしまった。
広い部屋だ。
ベッドやテーブルにソファーといった基本的な家具は同じだが、この部屋はそれらの家具を入れてもスペースにかなり余裕があった。
それがこの少女のための空間だというのは、床に散らばったおもちゃの数々が物語っている。
「あらあら、素敵なお客様ね。」
綺麗な声が耳朶を打って顔を上げると、ベッドに座る女性の姿があった。
絹のように柔らかそうな亜麻色の髪を腰まで垂らし、リーネと同じ茶色の瞳を微かに細め、彼女は和やかな表情でこちらを見つめている。
「すっ……すみません! 勝手に入るつもりはなくて……すぐに出ていくので!」
「ええー、やだー!!」
宣言どおり出ていこうとするも、リーネはこちらの腕を掴む手に力を込めて離そうとしない。
それに焦っていると、女性は軽やかな笑い声をあげた。
「いいんですよ。あなた方のお話は、クルオルから聞いていましたから。本当は会いに行きたかったのですけど、今は動くのもやっとで…。よければ、私たちの話し相手になってくれませんか?」
にこりと笑いかけられ、もはや逃げ道がないことを知る実であった。
(ねぇ、ここどこ…?)
辺りを見回しながら、実は心の声で問う。
これだけの上層階だ。
クルオルから聞いた話によれば、そこそこ偉い者が使っている場所であるはず。
いくら自分が客人とはいえ、クルオルの同伴もなしにこんな所まで足を踏み入れていいとは思えない。
それに加えて、先ほどからすれ違う人々に不思議そうな視線を向けられるのも、居心地の悪さを煽ってくる要因となっていた。
「いいから、黙ってついてこればいいのだ。」
ノルンは、頑として何も語らない。
先ほどからどんなことを訊いても、この言葉の一点張りだ。
実は肩を落とし、周囲から向けられる視線に耐えながら歩みを進める。
そうすることしばし。
「あそこだ。」
ノルンが示したのは、一つの部屋だった。
入り口にかけられた布は風にそよそよと揺れていて、その隙間からは柔らかな光が漏れている。
中からは楽しげな声が聞こえてきて、風とその声に乗って、微かにミルクのような香りが漂ってきた。
どう見ても、誰かが住んでいる部屋ではないか。
(ノルン……まさか、俺にあそこに入れって言うんじゃないよね…?)
「そのまさかだが?」
当然のように言われ、実はぶんぶんと首を振った。
(無理だって! 他人の家に勝手に入るとか、立派な不審者だから!)
「私の集落の者たちは、そんなことで怒ったりしない。」
(そういう問題じゃなーい!!)
なんとかその叫びを声に出さずに押し殺した実は、その場でくるりと踵を返す。
(帰る。)
そのまま、元来た道を全力で引き返す―――はずだった。
「だーれだ!」
「うわっ!?」
腰辺りに重い衝撃が襲い、実は数歩よろける。
後ろを振り返ると、自分の腰に小さな女の子が抱きついていた。
緩やかにうねる柔らかな金色の髪に、ガラス玉のように輝く茶色の瞳がとても印象的な少女だ。
少女はそのつぶらな瞳を丸くしてこちらを見上げて……しばらくすると、何故かものすごく嬉しそうに笑ってこちらの腕を両手で抱き締めた。
「………?」
少女の反応に疑問を持ちながら、己の表情が引きつるのを感じる。
「リーネ? どうしたの?」
おっとりとした女性の声が聞こえたのは、件の部屋からだ。
リーネと呼ばれた少女は、その声にパッと表情を輝かせると部屋に向かって駆けていく。
―――実の腕を掴んだまま。
(やっぱりかーっ!?)
なんとなく、こうなる予感はしていましたとも!
逃げたいけど、こんな幼い少女の手を強引に振り払うのは良心が痛む。
そんな中途半端な気持ちでいるものだから、結局体はずるずると少女に引きずられていく一方だった。
「ママー、おきゃくさーん!!」
「違う違う、ちがーう!!」
半端な抵抗が功を奏するわけもなく、実は少女と共に部屋へと入ることになってしまった。
広い部屋だ。
ベッドやテーブルにソファーといった基本的な家具は同じだが、この部屋はそれらの家具を入れてもスペースにかなり余裕があった。
それがこの少女のための空間だというのは、床に散らばったおもちゃの数々が物語っている。
「あらあら、素敵なお客様ね。」
綺麗な声が耳朶を打って顔を上げると、ベッドに座る女性の姿があった。
絹のように柔らかそうな亜麻色の髪を腰まで垂らし、リーネと同じ茶色の瞳を微かに細め、彼女は和やかな表情でこちらを見つめている。
「すっ……すみません! 勝手に入るつもりはなくて……すぐに出ていくので!」
「ええー、やだー!!」
宣言どおり出ていこうとするも、リーネはこちらの腕を掴む手に力を込めて離そうとしない。
それに焦っていると、女性は軽やかな笑い声をあげた。
「いいんですよ。あなた方のお話は、クルオルから聞いていましたから。本当は会いに行きたかったのですけど、今は動くのもやっとで…。よければ、私たちの話し相手になってくれませんか?」
にこりと笑いかけられ、もはや逃げ道がないことを知る実であった。
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