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187,繋げ心を

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187,繋げ心を


「もう始まっちまったか……!」
 俺は山道を走りながら戦闘音を聞く。
「しかし数が多いな……」
 俺は後ろについてくる数体をヴィーオの炎で牽制し、上へ。
「待たせた! 状況は――」
 ……良くないみたいだな。リーヴァの方はそこそこの数と戦って、消耗してるし、マルバスは……かなり厳しいそうだ。傷だらけで梨沙を守っている。敵はかなり強者みたいだ。
「ご主人様! 梨沙を頼みます!」
 俺の方を振り向かず、ボロ雑巾みたいな野良神に裏拳を食らわせながらも叫ぶ!
「わかった!」
 そして、肩で息をしているマルバスの元へ走る。
「助太刀に来たぜ」
「……すまぬ。いいタイミングに来てくれた。だが……我はもう無理だ。もう、現界するのが厳しい」
 よく見ると、マルバスの体が揺らいでいる。
「だから、汝に残りの全てを託そう」
 そっと俺の背中にマルバスの手が置かれる。
「……これは」
「我の全魔力だ。梨沙を……頼んだぞ」
 と言い残し、フッと消えてしまった。残ったのは、膨大な魔力のみ。
「……任せとけ」
 俺はリーヴァに向かって叫ぶ。
「一掃するぞ! クロスユニゾンだ!」
「……くだらンな」
 目の前の敵に俺は絶対に勝てない。だから、ここはクロスユニゾンに頼るしか無い!
「はい! ご主人様なら、絶対にできます!」
 バサリ! とワンストロークで俺の元へ羽ばたいてくる。
「行くぜ!」
「はい!」
 俺は呼吸を整える。
「……俺たちの道は、絆でできている。苦難を乗り越え、今に至る」
「……いつまでも繋がる永遠の道」
 ……厳しいな。俺が同調できてない。言葉を唱えど、リーヴァも揺らぐ心を押さえきれてない。失敗できない、そのことがリーヴァにプレッシャーを与えているのだろう。
「……リーヴァ」
 だから俺は、リーヴァを落ち着かせるために優しくリーヴァの手をつなぐ。
「ご、ご主人様?」
「リーヴァ、一緒にやろう。一人でやる必要はないさ」
「……ご主人様……ありがとうございます」
 リーヴァの魔力の震えが止まった。そして、落ち着いた魔力の鼓動が手のひらを伝って来る。

「「繋がるのは心! クロスユニゾンッ!」」  
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