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7,髪飾り
しおりを挟む「見て見て! この髪飾り、とっても良いでしょ!」
急いで着替え、家から出た俺達は、近くの商店街に来た。所狭しと屋台が並んでいる。収穫祭ということもあり、商店街は大賑わいだ。どこもかしこも笑顔で溢れている。
で、フェイウが商店街のアクセサリー屋にふらっと吸い込まれた。あいつ、金あるのか? 年中金欠金欠って言ってるくせに。
そんなフェイウが選んだものは、クリラサの花を模した、黒色の髪飾りだった。
「キレー……」
うっとりした目で髪飾りを見つめるフェイウ。
「ああ、結構いいんじゃないか」
銀色の髪に、黒色の髪飾りを挿して笑うフェイウ。こーしておとなしくしてりゃ可愛いのに。はぁ、もったいねぇ。残念美少女など比ではないぐらい残念なのだ。超絶残念美少女なのである。
「でしょでしょ? 買っちゃおうかなー?」
そう言って、財布を開くフェイウ。俺が覗き込むと――
「さ、三百銅貨……」
俺はあまりの少なさに思わず声を漏らしてしまった。
少なっ! 財布必要ないじゃん!
ちなみに飯を食うには五百銅貨ぐらい必要になる。コイツの財布は、子供よりも少ない。近所の子のお小遣い、二千銅貨だからな?
「いやいや、流石にもうちょっと持ってきてるよ。ほら」
フェイウはポケットから別の財布を取り出した。その財布は、パンパンに膨らんでいる。きっと大金が入っているのだろう。
ああ、なるほどね。スリ対策ってことか。しかし三百銅貨だけ分けても、意味なくないか?
「やっぱりリリゼンの花の花もいいなー」
フェイウは隣の店に置いてあった、赤い花の髪飾りをちろりと見る。
「んー、でも、こっちの色のほうがお前に合っているんじゃないか?」
俺は似た形の紫色の花の髪飾りをフェイウに渡した。 多分カザランの花だろう。
「わかった、つけてみるね」
フェイウは黒い髪飾りを外し、紫色の髪飾りを付けた。
「うん、やっぱりこっちの色のほうがいいぜ」
銀色に輝く髪には思った通り、紫色の髪飾りがよく似合う。黒は少し雰囲気が暗く、明るいフェイウに似合っていない。落ち着いた感じの紫が、フェイウの明るさをより強調してくれる。
「確かにそうかも。でも、お金無いし……やっぱりいいや」
名残惜しそうに髪飾りを棚に戻し、フェイウは店から出てしまった。
「おじさん、これっていくら?」
俺は一応値段を確認してみようと、店のおじさんに聞いてみた。安かったらまあ、買ってやるか。予算は五千銅貨ぐらいなら検討する。
「千銅貨だ」
いかにも職人って感じのおじさんがぼそっと答えてくれた。すごく眼光が鋭くて、ちょっと怖い。
「あー、じゃあ買います」
髪飾りが思ったより安かったので、買うことにした。っていうか、千銅貨も払えないって一体、どれだけ金欠なんだ……? あの財布の中身、たくさん入ってそうだったけど、実は全部銅貨なのか……?
「まいど」
おじさんは慣れた手つきで髪飾りを紙袋に入れて、なんとリボンまでかけてくれた。
「ほれ、早く彼女さんに渡してやんなさい」
「か、彼女じゃないです!」
それはどう見ても違うでしょう! 俺に失礼ですよ俺に!
「まあ、頑張れ若人よ。じっくり攻めるが吉だぞ」
にやにやと、途端に厳しい表情を崩した。
前言撤回。職人気質って言ったの嘘。ただのおじさんだった。
「……まあ、頑張ります」
結果聞かせてくれよー、という声を聞きながら店を出た。二度と来るか!
「もう、おそーい!」
店の前で待っていたらしいフェイウの手には、屋台で買ったと思しき食べ物がいっぱいある。一体どれだけ食うんだ? って言うかおい、金、あんじゃねーか。確実に千銅貨を超えてんだろ。
「まあまあ、 ほれ」
俺はフェイウに髪飾りの入った紙袋を渡した。
「え? これって?」
フェイウは輝いた目で俺を見てくる。
い、意外と目、大きいんだな……。
「欲しかったんだろ? プレゼントだ」
「い、いいの!?」
驚いたフェイウは近くの柱に手を思いっきりぶつけた。 うわっ、痛そう……。
「痛ったー!」
そしてしばらくそこら中を走り回ったあと、息を切らせながら戻ってきた。 おいおい、周囲の人間の目がやべぇよ。ほんとにやべぇから。頼む、もうちょい落ち着いて……。
「ほ、ほんとにいいの?」
少しして落ち着いたフェイウは、改めて俺に聞いてきた。
珍しい。もらえるものはもらうのがこいつの信条なのに。
「ああ、今日俺を誘ってくれたお礼だ」
なんてかっこつけて言ってみた。コイツのおかげで俺は多少なりとも救われた……のかもしれないしな。
「あああ、あ、あり、ありがとう……」
フェイウの頭から湯気が出ている。おいおい、大丈夫か?
「た、大切にするねっ!」
フェイウは、今渡した髪飾りを挿して笑った。 その笑顔は俺が見たことがある中でもピカイチだった。
「おう、大切にしてくれよ」
なんだかこっちまで嬉しくなるような笑顔だ。
しかし……
「ぐぬぬぬ、羨ましい」
「ネリアの野郎……殺す」
「誰か鈍器持ってないか鈍器」
何故かもの凄い殺気を感じる。 背筋が寒い。
「さ、次行くよ次!」
「うおっ! いきなり引っ張んなよ!」
ったく、次行くか次!
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