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「なっ、なん……」
(魔法か⁉)
あまりの威力、そして何が起こったか理解できないルベルはスカーレットの顔と剣と砕け散ったカカシを交互に見る。
「ふふん、成功したぞ! これなら問題あるまい」
そのスカーレットはというと、今回の結果にご満悦のようで、嬉しそうに剣を眺める。
「な、なあ、今のは魔法か? 詠唱は無かったはずだが……」
魔法はどんなに初歩魔法でも、詠唱抜きに発動は不可能である。短文詠唱などという高等テクニックは存在するが、発動するにしても、技名ぐらいは言わねばならない。
「ふふ、これはお前のための剣だ。そんな剣に魔法を搭載するか? よって先程の答えは否だ。これは、我が国ではほぼ採用されていない武器、『銃』を組み込んである」
「銃……?」
その単語に聞き覚えがあり、ルベルは必死に記憶をたどる――
「……ああ、思い出した。ロイト国が開発した、鋼鉄の玉を魔法を使わずに飛ばす道具か」
「そうだ。実際、我が軍でも手痛い損失を被ることとなった」
そう言い、スカーレットは何を思ったのか、軍服のボタンを取り始めた。
「え?」
パチンパチンと軍服を脱ぎ、ワイシャツ姿になる。そしてそのワイシャツの襟のボタンも取り始める。
「ちょっ⁉」
ルベルは慌てて目を塞ぐ。
(こんなところ見られたら、絶対俺クビ! 近衛クビ! てか死刑!)
「こら、女性が脱いでいるのに目を塞ぐとは何事か! ……と、まあ、冗談はさておき。大丈夫だ、ストリップショーではないから目を開けろ」
「ほ、本当か……?」
こわごわと目を開ける。すると、ワイシャツを肩のほうまで下ろしたスカーレットが見えた。
「大丈夫じゃないじゃん⁉」
もう一度目をつぶる。
(見てない! 俺は見てない! 白くてスベスベで玉のような肌とか、全然見てない!)
「馬鹿者! いいから見ろ。これだ」
そう言われ、もう一度目を開け、王女を見る――
「こ、これは……」
スカーレットが親指で指しているところを見ると、大きな穴のような痕が肩に残っていた。
「銃創、というらしいな。私も一度、銃に貫かれている。もう完治したが、あの威力は凄まじかった」
クリムゾンプリンスに傷をつけた。その意味の凄さはルベルも理解している。
「ロイトは魔法が得意な兵士が少ないからな。そこで開発されたのが、銃というわけだ。本当によくできている」
スカーレットはふぅ、とため息をつく。
「私は銃で撃たれて、空を舞ったとき思ったよ――――ああ、なんて素晴らしい兵器だろうと」
その言葉を聞き、ルベルはゾッとした。自分が死に近いとき、死を意識するのではなく、まして痛みを意識するのではなく、賛辞を送っていたことに。
「残念ながらまだ我が国ではこの兵器を再現し、大量生産することは不可能だ。だが――おや、丁度いい、来たか」
「ん? 来たってだれが――」
「来ましたよお姉さま! 先程の音、成功したのですね⁉」
誰かが走ってきた。その人は桃色の瞳をしていて――
「だ、第8王女、ガーベラ様⁉」
ルベルは仰天し、目をむく。
「あら、こんにちは! ルベル・ライヴァー近衛騎士! そしてスカーレットお姉、さ……ま……」
ピシッ、とスカーレットを見て石化したようになる。
「あっ……!」
ルベルは思わず口元を押さえた。そう彼女は――まだワイシャツをはだけたままにさせていたからだ。
「あっ、そのっ、えっとっ! が、ガーベラ様! これはですね……」
ルベルが必死の弁明をしようと試みるが――
「なんだ? 私の可愛い近衛に肌を見せるのはだめなのか?」
きょとん、と事の重要さを全く理解していない第7王女は首を傾げた。
「……は」
「は?」
「破廉恥過ぎますぅー! ステップを飛ばしすぎですぅ!」
「いや、待て、これはだな……」
慌てたスカーレットの弁明により、事なきを得た。
(魔法か⁉)
あまりの威力、そして何が起こったか理解できないルベルはスカーレットの顔と剣と砕け散ったカカシを交互に見る。
「ふふん、成功したぞ! これなら問題あるまい」
そのスカーレットはというと、今回の結果にご満悦のようで、嬉しそうに剣を眺める。
「な、なあ、今のは魔法か? 詠唱は無かったはずだが……」
魔法はどんなに初歩魔法でも、詠唱抜きに発動は不可能である。短文詠唱などという高等テクニックは存在するが、発動するにしても、技名ぐらいは言わねばならない。
「ふふ、これはお前のための剣だ。そんな剣に魔法を搭載するか? よって先程の答えは否だ。これは、我が国ではほぼ採用されていない武器、『銃』を組み込んである」
「銃……?」
その単語に聞き覚えがあり、ルベルは必死に記憶をたどる――
「……ああ、思い出した。ロイト国が開発した、鋼鉄の玉を魔法を使わずに飛ばす道具か」
「そうだ。実際、我が軍でも手痛い損失を被ることとなった」
そう言い、スカーレットは何を思ったのか、軍服のボタンを取り始めた。
「え?」
パチンパチンと軍服を脱ぎ、ワイシャツ姿になる。そしてそのワイシャツの襟のボタンも取り始める。
「ちょっ⁉」
ルベルは慌てて目を塞ぐ。
(こんなところ見られたら、絶対俺クビ! 近衛クビ! てか死刑!)
「こら、女性が脱いでいるのに目を塞ぐとは何事か! ……と、まあ、冗談はさておき。大丈夫だ、ストリップショーではないから目を開けろ」
「ほ、本当か……?」
こわごわと目を開ける。すると、ワイシャツを肩のほうまで下ろしたスカーレットが見えた。
「大丈夫じゃないじゃん⁉」
もう一度目をつぶる。
(見てない! 俺は見てない! 白くてスベスベで玉のような肌とか、全然見てない!)
「馬鹿者! いいから見ろ。これだ」
そう言われ、もう一度目を開け、王女を見る――
「こ、これは……」
スカーレットが親指で指しているところを見ると、大きな穴のような痕が肩に残っていた。
「銃創、というらしいな。私も一度、銃に貫かれている。もう完治したが、あの威力は凄まじかった」
クリムゾンプリンスに傷をつけた。その意味の凄さはルベルも理解している。
「ロイトは魔法が得意な兵士が少ないからな。そこで開発されたのが、銃というわけだ。本当によくできている」
スカーレットはふぅ、とため息をつく。
「私は銃で撃たれて、空を舞ったとき思ったよ――――ああ、なんて素晴らしい兵器だろうと」
その言葉を聞き、ルベルはゾッとした。自分が死に近いとき、死を意識するのではなく、まして痛みを意識するのではなく、賛辞を送っていたことに。
「残念ながらまだ我が国ではこの兵器を再現し、大量生産することは不可能だ。だが――おや、丁度いい、来たか」
「ん? 来たってだれが――」
「来ましたよお姉さま! 先程の音、成功したのですね⁉」
誰かが走ってきた。その人は桃色の瞳をしていて――
「だ、第8王女、ガーベラ様⁉」
ルベルは仰天し、目をむく。
「あら、こんにちは! ルベル・ライヴァー近衛騎士! そしてスカーレットお姉、さ……ま……」
ピシッ、とスカーレットを見て石化したようになる。
「あっ……!」
ルベルは思わず口元を押さえた。そう彼女は――まだワイシャツをはだけたままにさせていたからだ。
「あっ、そのっ、えっとっ! が、ガーベラ様! これはですね……」
ルベルが必死の弁明をしようと試みるが――
「なんだ? 私の可愛い近衛に肌を見せるのはだめなのか?」
きょとん、と事の重要さを全く理解していない第7王女は首を傾げた。
「……は」
「は?」
「破廉恥過ぎますぅー! ステップを飛ばしすぎですぅ!」
「いや、待て、これはだな……」
慌てたスカーレットの弁明により、事なきを得た。
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