最弱騎士だけど、最強の王女の騎士に選ばれました

黒田さん信者

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「あー、すげー気持ちいい……」
 湯につかっていると、どっと疲れが抜けたからか眠くなってきた。

「そろそろ上がるか……」
 このまま眠るわけにはいかないので、湯船から出ようとした。しかし――

「……誰か来るぞ」
 突然気配を感じ、意識を覚醒させる。

「…………おや、君は」
 ガラガラと扉を引いて現れたのは、最優と名高き近衛騎士、ライオット・リード。序列一位の化け物である。

「うっ」
 思わず言葉に詰まり、フリーズするルベル。

「ルベル・ライヴァ―近衛騎士。初めまして……ではないよね、久しぶりかな」
 ははっ、と笑顔で頬をかく。

「あー、そう……っすね」
 正直学園で何度か顔を合わせた程度であったが、どうやら向こうは覚えてくれていたみたいだ。

「邪魔でしょうから、俺、そろそろ出ますね」
 気まずいので、早く出るかと立ち上がる。

「まあ、待ってくれ。君とは一度語らいたいと思っていたんだ。どうかな?」
 金色の瞳でまっすぐ見つめられ、ルベルは思わず首を縦に振ってしまった。

「よし、ありがとう。じゃあ、少し体を洗ってくるよ」
 そう言い、体を洗い始めた。

(……非常に気まずい。よりにもよって『KOA』とかよ)
 最優であり、騎士の中の騎士、そして、騎士の頂点、Knight Of Apex(ナイツオブエイペックス)である。学園に首席で入学し、その後は順調に序列を上げていき、一年生でありながら序列一位となった。正真正銘の化け物、傑物である。魔法の属性は光。選ばれしものしか扱えないと言われている属性で、世界で十数人しか存在しない。

「お待たせしたね」
 その瞳と同じ、輝く金髪を無造作にかき上げて湯船に浸かる。

「ふう、やはり風呂はいい。……それで、ルベル君」

「あー、その、俺たちタメなんで、君は付けなくていい……っす」
 別に敬語を使う必要はないのだが、ライオットのオーラに押され、無意識に敬語? を使ってしまっている。

「そうかい? じゃあルベル。僕は君に大変興味があるんだ」

「興味、ですか」

「そうさ。まず、君は近衛騎士というシステムをどこまで理解しているんだい?」

「理解というと、そうですね、近衛は姫を守るための騎士である、ということです」
 近衛騎士というシステム。その質問に少々面食らいつつも、一般的に言われていることを話す。

「そうだね、それが普通だ。でも、君は気にならないかい?」

「何がですか?」

「ふふ、しっかり考えてごらんよ」
 ふー、と気持ちよさそうに息を吐き出す。

「……学生上がりの俺たちを、すぐ王女の身近の護衛にすること、ですか?」

「うーん、惜しい。いい着眼点だけども。正解はね」
 じっ、と俺を見つめる。

「どうして近衛騎士は、このタイミングで選ばれたのか、だよ」

「……どういうことですか?」
 ルベルはその言葉の真意が掴めず、首をひねる。

「そのままの意味さ。どうして僕らは近衛騎士というものになれたんだろうね」

「どうしても何も、序列が高かった、から……」
 その時ルベルは何か引っかかったのか、言葉を詰まらせた。

「いや、待てよ……先輩は……でも……」

「そう、君の疑問は正しい。どうして僕らだけが近衛騎士になる資格を求めることができたのか」
 その言葉を聞き、ルベルの目が見開かれる。

「先輩方や後輩達には、たとえ序列が一位であれど、近衛騎士になるという『権利』は存在しない。せいぜい警備の隊長が関の山だろうね。この栄誉ある近衛騎士というものは、どうしてこのタイミングだったのか?」
 そう言われてみれば、確かにそうだ。近衛騎士は、姫が『王』になるまでずっと仕え続ける。王にならずとも、その姫に生涯仕える近衛騎士もいる。

「おかしいんだ。普通、姫を守りたいなら姫が生まれた段階で、近衛騎士を選ぶはず。でも、姫がある程度成長してから、一斉に近衛を選ぶなんて」

「……確かに」
 姫が生まれた年に、学園の序列一位を近衛にしたほうがよほど効率的だ。

「この制度には、何かある。僕らの想像しえない何かが」

「……偶然、ってことはないですかね?」

「……可能性はあるよ。でもね、それにしては『おかしい』んだ。僕のことといい、君のことといい」

「おかしい?」

「うん、そうだ。だが、その捻れは説明できない」
 抽象的な物言いにルベルは質問を重ねる。

「俺がおかしいのは認めますよ。でも、あなたほどの人がおかしいだなんて」

「いや、おかしいんだ。だが…………いや、すまない。この話はここで終わりにしよう。なに、偶然の可能性も高い。僕らはこの栄誉ある近衛騎士になれたことを感謝すればいい」

「……そう、ですね」
 若干何かが腑に落ちないような表情であったが、ライオットが終了と言ったので、無理やり自分を納得させる。

「それよりも僕は第七王女との恋の話が聞きたいな」

「え?」
 思わぬ言葉にルベルが固まった。

「城内はルベルと第七王女の熱い話で持ちきりさ。で、実際どうなんだい?」

「い、いや、そのぉ、そ、そうですね、強いて言うようなことはぁ、無かったですね……うん、無かったです」
 急にしどろもどろになり、冷や汗を浮かべるルベル。今彼の頭の中には、おとといのアレや昨日のコレや今日のアレが思い出されている。

「ふふ、仲がいいようだね。いいことだよ」
 クスリ、と笑ってライオットは立ち上がった。

「長々と付き合わせてしまって済まなかったね、そろそろ出ようか」

「あー、そうっすね」
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