最弱騎士だけど、最強の王女の騎士に選ばれました

黒田さん信者

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「くっそ暑い……」
 長湯しすぎたようで、顔が真っ赤なルベル。ライオットは涼しい顔で、飲み物を飲んでいる。

「飲むかい?」
 スッ、と自分の水筒を差し出すあたり流石だと言える。

「あ、すいません。いただきます」
 せっかくの厚意、無下にするのも惜しいので、ルベルはその水筒を受け取った。揺らすと、ちゃぷんといい音がした。

「中身は果汁と砂糖と塩を混ぜたものだよ。クセが少ないから、飲みやすいと思うよ」
 ニッコリと笑うライオットに押されて、一口飲む。

「お、うまい」
 中身は言われた通り、果汁で、さっぱりとした飲み口であった。酸味の強い果実のため、砂糖を加えてあるのでかなり飲みやすい。さらに、少しではあるが塩が入れているため、味に深みが加わって、飽きが来ない。

「気に入ってもらえてうれしいよ」
 ルベルがごくごく飲む様子を嬉しそうに眺めるライオット。

「いやー、ありがとうございます。生き返りました」
 ルベルはライオットに水筒を返す。

「いいんだ、今日は作りすぎたからちょうど良かった」
 やはりにこやかに返答を返す。

「さて、僕はそろそろおいとまするけど、君はどこに帰るんだい?」

「うっ……城です……」
 ひんしゅくを買いそうだなぁ……とルベルは恐々言う。

「ああ、そうだったのか! 謎が解けたよ。本来、十番目の君に割り当てられるはずの部屋が空っぽで、家具も何もなくなっていたからどこで寝ているのかと近衛たちで話題になっていたんだ」

「い、いやぁあはは……」
 ルベルはそんなことになっていたのか! と冷や汗を流す。

「で、結局王女の部屋で寝ているのかい?」

「ファッ⁉」

(な、なんでそんなことに⁉)

「あれ、その反応、もしかして違った?」

「違いますよ! 王女の隣の部屋です! 決して! 部屋で寝てたりなんてしな――」
 そこでルベルの言葉が途切れる。

(……部屋に勝手に入ってきてるんだよなぁ、スカーレット)
 思い当たる節がない! と言い切れなかったルベルは苦笑い。

「……なるほど」

「その間は何ですか⁉ いかがわしいこととか、変なことなんて俺は何もしてないですよ⁉」

「俺は、ね」

「あああ! マズい! 良くないループに入った気がするぞこれは!」
 頭を抱えるルベル。

「はははっ! すまないね、君はどうにもからかいがいがあってね」
 ライオットが愉快そうに笑う。

「まあ、それだけ仲が良ければ大丈夫だ。彼女は確かに強い。でも、ルベル、君が守るんだ。それが近衛の仕事であり、君の責務だ」
 
「……ええ、言われなくても。今はまだ、俺の力じゃ守るなんてたいそうなことはできない。でも、絶対に守り抜いて見せる」
 ルベルは決意を口にする。昨日と今日で揺らぎかけていたその気持ちを確かめるように。

「うん、その意気だ。では、僕は失礼するよ」

「うっす! お疲れ様でした!」

「ああ、お疲れ」
 ライオットが脱衣所から出ていき、残るはルベルだけとなった。


「……ふぃー、緊張したぜ」
 KOAとサシで話す。その緊張と、今日一日の疲れがどっとルベルを襲う。

「眠ぃ……」
 湯冷めする前に早く帰って寝よう……とルベルはササッと身支度を済ませ、脱衣所から出た。



 


 

「……んぁ……」
 窓から刺す朝日がルベルの意識を覚醒させる。

「うぉ……」
 ぼんやりとした頭を振り、伸びをする。

「良く寝れたなぁ……」
 久しぶりの気持ちの良い目覚め。スッキリとした頭、若干筋肉痛などはあるが、少し伸びをしただけでもわかるほどの調子のよい体。文句のない朝だ。だが――


「おはようルベル!」
 ベッドの横にニコニコと快活に笑うスカーレットが座っていた。

「……おはようスカーレット」
 あえて何も言うまい……とニッコリ笑い返しルベルはベッドから出る。

「む、スルースキルが高くなって来たな」

「い、いやぁ、流石に上がるだろ……で、いつからいた? 数分前? 十数分前?」

「二時間前だ」

「ウソだろ⁉」
 予想外の返答に、思わずツッコミを入れてしまったルベル。

「いや、本当だとも。今日は早く目が覚めてしまってな。それで、寝顔を見に来たというわけだ」

「それでの使い方が若干おかしい気がするが……」

「可愛い寝顔だったぞ」
 ふふん、と嬉しそうにスカーレットは笑う。

「そうですか、じゃあ今度は俺が寝顔を拝みに行きますよ」
 やられっぱなしは癪だからとルベルは言い返す。

「なっ……! そ、それはつまり、わ、私の寝室に来て、その……私の寝顔を見るということか?」

「はえ? まあ、そうなるかもな」

「ば、ば、ば……ばかものっ! わ、私の寝室には入れないからな! ぜったい! ぜーったいだぞ!」
 珍しく取り乱し、がーっとまくしたてる。

「ふ、ふん! 満足したから私は先に行っている! もう道は覚えただろう?」

「ああ、覚えたよ。じゃあまた後で」

「うむ。待っているぞ」
 軍服を華麗に翻し、カツカツとブーツの底を鳴らして帰っていった。
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