最後の涙

水雲 寿々

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落ち着かない自宅

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「…………広い。でかい」

「素晴らしいでしょう!?あなたのために特別に最高のお家を用意いたしました!サティア姫のお城と同じ大きさですよ!」

目の前にドーンと建つお城。
これが私の家……。

「確かに素敵だけど、これじゃ落ち着けませんよ。無駄に広いですし、ひとりで住むには寂しすぎません?」

目を丸くしながらも、城を見上げて冷静に突っ込む。
するとジルは名案というふうに言った。

「だったら私が一緒に住みましょう!」

それだったら寂しくはない。
寂しくはない………けど。

「男女が一つ屋根の下で暮らすというのは……」

私は昔から自分でも飽きれるくらいに真面目なのだ。
やっぱり、不順異性交遊などの不祥事があったら……ねぇ?

「あ、それは大丈夫ですよぉ。これだけ広いんですから私は離れた部屋にいれば問題ないでしょう?それに三食きちんと手作り致しますよ?」

ニコニコと人のいい笑顔を浮かべてそんなことを言うけど、その案は譲らないらしい。

「んー、まぁそれならいい……のかなぁ」

「決まりですね!今日からよろしくお願いします」

ジルの笑みが一層深まって、さらに手を握られて、ぶんぶん振られて。
何をそんなに喜ぶんだろう。
もしかして寂しいのだろうか。


兎にも角にも、まず家の中くらい把握しておかないと。
玄関の扉を開けると広いスペースに大きな……靴箱?
扉くらい大きい。日常生活でよく見る靴箱とはかけ離れている。

目を丸くしながら靴を脱いで……

「おや?なにをされているのです、そのままどうぞ?」

どうやら西洋式らしい。
ならこの靴箱は新しい靴をしまうの?
そんなことしなくても玄関のスペースに並べておけば事足りるような気がするけれど……。

「ここリビング…?」

マンションかアパートの一室まるまる入ってしまいそうな部屋。
そこにやっぱり大きなテレビ。
というか、ガラス。おそらく映像がここに映るんだろう。

バラエティとかに出てくる海外のホテルみたいだなぁ……。

「寝室は?」

「こっちですよー」

奥の扉のそばに移動してひらひらと手招き。
私がまだたどり着かないうちにその扉を開けて中に入っていった。

ぼふんっ

「おおっ!来てください!このベッド柔らかいですよーっ」

子供かこの人は。

「子供じゃないんだからもっとちゃんとしてください!」

呆れて少し乱暴に起こすと、逆に引っ張られてベッドにダイブしてしまった。

「……ほんとだ。柔らかい…」

「でしょう?」

満足げに笑いながらゴロゴロゴロゴロ、広いベッドを転がり回る。

「あ、そういえばあなた、名前はなんというんです?」

聞かれて、そう言えば自己紹介をしてなかったと思い出す。

「………紫苑」

「シオン。いい響きですねぇ。素敵ですよ♪」


少し区別のつくようになった笑顔を向けられると、本心だなぁって、わかる。

「…ありがとう……」

この名前も、好きかもしれない。

ちょっとだけね。
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